待機児童の解消へ向け、大阪市は保育所等の新設に積極的に取り組んでいます。

令和7年度(2025年度)一斉入所では申込数が大幅に増加(主たる要因は第2子保育料無償化及び有配偶助成就業者数の大幅増)し、これまでになく大勢の申込者が入所できない見通しとなっています(詳細は第22回大阪市待機児童解消特別チーム会議添付資料を参照、近日中に解説記事を公開予定)。

そこで令和8年度に向け、思い切った規模の新設計画を打ち出しました。2,568人の入所枠整備を目指しています。

令和7年度 保育施設等設置・運営事業者募集の実施について【事前案内】及び第22回待機児童解消特別チーム会議資料より

整備計画量が突出して多いのは東淀川区です。保育所4箇所(320人)・地域型保育事業10箇所(190人)を計画しています。

東淀川区の入所難は極めて深刻です。

【2025保育所等一斉入所申込分析】(10)東淀川区/市内最悪水準の入所難、マンション居住者優先入所は倍率4倍

【大阪市民の声】「東淀川区で保育所等へ入れない」

しかしながら、計画通りに事業者が決定するのは難しいと推測しています。特に第1希望としての申込者が少ない地域型保育事業は大阪市でも減少に転じています。ここ数年は新規応募が殆どありません。10箇所の新設計画は「画に描いた餅」でしょう。

多くの保護者が6年保育を行う保育所等を第1希望としている現状を踏まえると、保育所等の新設等は極力「保育所や認定こども園の整備」として行うのがニーズに合致します。

一方で不安なのは東住吉区や旭区です。

【2025保育所等一斉入所申込分析】(4)東住吉区/市内ワーストの入所倍率、0歳児1.00倍、1-5歳児1.5倍超

【2025保育所等一斉入所申込分析】(5)旭区/市内ワーストの入所倍率1.39倍 0歳児0.97倍、1歳児1.96倍、3歳児1.97倍

令和7年度一斉入所で非常に多くの申込みがありましたが、整備計画では旭区が地域型保育事業3箇所、東住吉区は保育所1箇所・地域型保育事業1箇所に留まっています。これを遙かに上回る保留児童が生じる見通しがあります。整備計画は過少です。

なお、これらはあくまで「計画」です。公募手続や事業者の応募手続はこれから行われます。

事業者の視線はシビアです。現に保育所等が著しく不足している地域であっても、地域の実情や少子化が更に進んだ数年後の募集見通しまで推測した上で、公募に応募するかを検討していると考えられます。

ここ数年の間でも整備計画を大きく下回る応募しかなかった年もありました。特に地域型保育事業の公募は見向きもされていません。

また、応募数が計画を大きく下回ると、大阪市の横山市長が掲げている「第1子保育料無償化」にも赤信号が灯ります。

子育て世帯一般としては経済的負担が減少するのは喜ばしいものですが、入所できなかった児童との均衡、高所得世帯の優遇、保育需要の刺激等を鑑みると、デメリットの方が大きいと捉えています。「何でも無償」は超過需要、ひいてはモラルハザードを生みます。