大阪市立小中学校は8月25日から2学期が開始されます。

しかし、全国各地で子供が新型コロナウイルス感染症に感染する事例が急増しています。大阪も例外ではありません。

果たしてこのまま2学期を開始しても大丈夫なのでしょうか。開始後に予想される臨時休業を試算してみました。

直近1週間(8/10~8/16)における大阪府内の就学児の感染者は275人でした。大阪府内の感染者割合は大阪市とそれ以外が概ね半々なので、同期間における大阪市内の就学児の感染者は138人、1日あたり約20人と推測できます。

また、8/4~8/10に報告された大阪市立小中学校の教職員の感染者は9人でした。ここに報告されていない事例(私立小中学校の勤務者やいきいき関係者等)もあると考えられますが、一先ずは1日当たり約1人とします。

【コロナ第5波・8/24追記】夏期休業中に約60人の教職員等が感染 大阪市立学校園・保育所

これを合算すると、大阪市立小中学校では1日当たり約21人の感染者が発生すると推測できます(粗い試算ですが)。これは校内感染を除いた数字です。

感染者が確認される殆どの事例では、小中学校を臨時休業して濃厚接触者の特定が行われます。感染者数と臨時休業を行う学校数は相関します。

同一学校で複数の児童生徒の感染が判明したり(家庭内できょうだいが感染した事例等)、休日の間に濃厚接触者等の調査が済んで臨時休業を免れるケースもあります。

確固たる根拠は示せませんが、感染事例の2/3程度は臨時休業せざるを得ないでしょう。

これらから、2学期が再開した後の大阪市立小中学校では毎日14校の臨時休業が発表される恐れがあります。小中学校は計418校、毎日約3%が新たに臨時休業を行う計算です。

濃厚接触者の調査が長引いたり校内感染が広がった場合には、臨時休業を行う期間は更に延びます。

この結果は過大な数字かもしれないと考えました。

第4波において、最も多くの大阪市立小中学校で感染者が判明して臨時休業を行ったのは4月15日の6校でした(下記7校から幼稚園を除いた)。

新型コロナウイルス感染症による学校休業について

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000509375.html

この当時の就学児の感染者数は何人だったのでしょうか。大阪府内の数字は拾えます。

実は4月13日が12人、14日が14人、15日が16人でした。3日間でたったの42人です。1日当たり14人、大阪市内は1日当たり7人となります。

教員の感染者も第5波より少なく、1日当たり1人にも満たない水準です。

当時も数多くの学校が臨時休業したと受け止めていました。が、第5波で予想される規模と比較するとたったの1/3となる計算です。

ここに更に校内感染が加わります。大きなクラスターが発生し、2週間の臨時休業を余儀なくされる学校もあるでしょう。

この感染規模に果たして学校や家庭は耐えられるのでしょうか。

「子供は重症化しないから、学校で授業を行っても問題ない」とする意見もあります。しかし、少なくとも沖縄県では子供が重症化した事例が報告されています。

7月26日からの1週間の感染者を職業別で見たところ、最も多かったのは小学生となっていて、デルタ株が県内で確認されて以降、重症で搬送されたり中等症で入院したりする小児患者も確認され、子どもの重症化の兆しがある可能性が指摘されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ff210e3d384624367bb3aacccb24e52432b57eef

感染力や重症化する度合い等、デルタ株はそれ以前と全く違うものと感じています。第4波と同じ様に受け止めて学校を再開したら、酷い事態が起こりかねません。

かと言って、夏休みの延長やオンライン授業の実施には様々な課題があります。

どちらの方法でも小さな子供が1人で過ごすのは困難なので、保護者の働き方を直撃します。第4波と同じく、学校での預かり保育やいきいきの実施が不可欠でしょう。

こうした内容が早い段階でアナウンスされると勤務先と調整しやすいのですが、この手の発表はいつも直前ですね。

第4波で大きな批判を浴びたのはオンライン授業です。ただ、批判の矛先は市教委と十分に調整を行わずに言い出した松井市長の言動と、「授業」とは到底呼べなかったオンライン授業に向かったと感じています。

臨時休業や校内感染を避けるには、オンライン授業は有力な選択肢です。仮に臨時休業になったとしても、オンライン授業で学びを継続する事が出来ます。

大阪市は予定通りに2学期を開始するつもりなのでしょうか。残念ながら、これ以外の選択肢を検討している話や雰囲気はありません。

今から「2学期はオンライン授業で再開する可能性があります、通信環境や授業内容等の整備を急遽進めています。」とアナウンスして準備を行えば、多くの保護者は「やむを得ない」と納得するでしょう。

多額の費用や手間暇を掛けて導入したオンライン授業、いま使わなかったいつ使うのでしょうか。

仮に2学期を通常通りに開始するとしても、部活は全面的に休止すべきでしょう。高校生となりますが、部活で感染が広がる事例が余りに多いです。北海道でのアイスホッケー大会では、100人以上が感染した大クラスターが発生しました。

【コロナ第5波】高校アイスホッケー大会で128人以上、宮崎商業13人感染で甲子園辞退、部活動は超ハイリスク

運動会も心配ですね。この感染者数で運動会を行うのは「あり得ない」のですが、市教委や学校の判断は往々にして予想を裏切ります。

感染者数が少なかった第4波の東京では、運動会の練習中に発生したと考えられるクラスターが発生しました。

【コロナ・7/3更新】都内で10代の感染が急増…変異ウイルス流行、小学校で47人感染クラスターも

この様な事態が学校に先行して発生しているのが保育所等です。ただ、大阪市は保育所等の休園数をタイムリーに公表していません。大阪市コロナ対策本部会議の資料に掲載される事が多いのですが、会議は4月に行われたきりです。

大阪と同等の都市規模である横浜市では、1週間だけで57施設以上が臨時休園を行ったそうです。現在は更に多くの保育所等が休園していると考えられます。

【コロナ第5波】8月1週間だけで57施設以上(1,146施設中)が休園 横浜市内の保育所等 

大阪市でも似た現象が発生しているでしょう。園児はマスク着用や手指消毒と言った感染予防が難しく、大阪府内でも多くの保育所等でクラスターが発生しています。

子供の感染を抑えるには、周囲の大人が感染しないのが最も重要です。その為には大人がワクチンを接種すると共に、繁華街を中心とした人流を抑制し、リスクが高い行動を控える必要があります。

政府はワクチン接種一本槍ですが、2学期の再開や子供達の活動には間に合いません。デルタ株に対して子供は余りに無防備です。