2019年10月から幼児教育無償化が始まります。

しかしながら、開始前から様々な課題が指摘されています。その一つが「認可外保育施設」です。

教育無償化は認可外保育施設も対象となっています。

年齢要件無償化される利用料(上限)
3~5歳児保育の必要性の認定月額3.7万円
0~2歳児保育の必要性の認定+住民税非課税世帯月額4.2万円

問題点が指摘されているのは、「安全性に問題がある認可外保育施設も対象となっている」という点です。

死亡事故の半数が認可外で発生

残念ながら、ずっと以前から保育施設で乳幼児が死亡する事故が発生しています。施設毎の内訳を見てみると、圧倒的に多いのは認可外保育施設です。

内閣府の調べによると、平成29年度中に保育施設で8人の乳幼児が死亡した事故等の内、半数の4人が認可外保育施設(事業所内保育施設を含む)で死亡していました。

平成29年教育・保育施設等における事故報告集計
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/pdf/h29-jiko_taisaku.pdf

保育所等(認可保育所・こども園・地域型保育事業等)を利用している乳幼児が約210万人いるのに対し、認可外保育施設・事業所内保育施設を利用しているのは約25万に過ぎません。

半数の死者が、約1割の乳幼児が利用している施設類型で発生しています。異常な割合です。

当ウェブサイトでも、認可外保育施設で発生した死亡事故・事件を何度もお伝えしてきました。

【7/11追記・ニュース】認可外保育「たんぽぽの国」の死亡事故 報告書が公表

【ニュース・9/14有罪判決】1歳園児が食塩中毒死、認可外保育「スマイルキッズ」元経営者を逮捕

【映像あり】認可外保育施設「トイズ」(栃木県宇都宮市)で日常的に紐で縛る等の虐待が行われていた疑い

認可外保育施設で死亡事故が多発しているには、一つの理由があります。

保育所等には厳しい保育士配置・施設基準が設けられており、定期的に自治体が監査を行っています。

一方、認可外保育施設に設けられている基準は保育所等より緩くなっています。監査は都道府県・政令市が行っています。

問題なのは、緩くなっている基準すら守らず、何度も指摘されている施設が少なくない事です。

保育従事者・保育士が不足する認可外は危険

大阪市は認可外保育施設へ行った監査内容等を公表しています。

認可外保育施設最新立入調査結果
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000027886.html

一部の施設は指導した内容が記載されています。特に注意すべきなのは、太字で記載された「特別立入調査の実施」という部分です。

大阪市の特別立入調査は、主に保育従事者(有資格者)が不足している施設に対して行われています。

乳幼児が死亡する事故の多くは、従事する保育士や職員が不足する施設にて、睡眠時無呼吸症候群等を見落として発生しています。

乳幼児の健康等を見守るには、一定数以上の大人の目が不可欠です。これが不足すると、危険な事故が発生する可能性が飛躍的に高まります。

大阪市の調査によると、特別立入調査はミントハウス・メリールーム・都市型保育園ポポラー大阪天六園・都市型保育園ひなたぼっこ・アップルキッズルーム・オールウェイズ心斎橋園・都市型保育園ポポラー大阪新町園・オールウェイズ 四ツ橋園・たんとん保育園・アガペインターナショナルスクール・リトルジェムスインターナショナルスクール・べるでランド保育園(十三園)・みんなのいえ・保育所ひまわり園・すこやか保育園・チャイルドサロンに対して行われていました(2019年7月12日時点)。

多いですね。

しかし、2019年10月から始まる教育無償化は、こうした施設も対象とされています。

無償化にあたっては、認可外保育施設の安全性を向上させる手段も講じられています。具体的には、認可保育所への移行を図る施設への運営費支援や助言・巡回指導員の拡充です。

認可外保育施設の質の確保・向上の充実強化について
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/r010530/pdf/s19.pdf

ただ、自治体に何度も改善項目を指摘されて特別立入調査が行われた施設が、すんなりと質の向上を図るものでしょうか。疑問に感じざるを得ません。

問題がある認可外も無償化

10月からは多くの問題を抱えている認可外保育施設であっても、「(5年間は)無償で利用出来ます」との謳い文句で利用者を募れます。

それに騙される恐れがあるのは、子育てで忙しく、安全が担保された保育所等に入所できず、様々な情報を吟味するのが苦手な、いわば弱い立場にある親です。

秋以降、従事する保育士や職員が不足する認可外保育施設にて死亡事故が多発しないか、非常に危惧しています。

無償化対象に認可外保育施設を含めること自体には賛成しています。

しかし、行政の調査等によって安全性を満たすと判断された施設、すなわち「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書」が交付された施設に限るべきでしょう。

既に一定の要件を満たした幼児・認可外保育施設に対する補助制度を導入している大阪市は、上記証明書の交付を施設要件としています。

○対象児童、対象施設、実施時期・金額等

(1) 利用保留児童(認可保育所等への入所を申し込んでいたが利用保留となり、やむを得ず認可外保育施設を利用している児童)が、認可外保育施設指導監督基準*1を満たす旨の証明書等(以下、「証明書等」とする。)を交付されている認可外保育施設を利用する場合

(2) 利用保留児童以外(保護者が当初から認可外保育施設の利用を希望していた場合等)の児童が、証明書等を交付され、かつ、保育所保育指針等に準拠した一定の教育の質が認められた認可外保育施設*2を利用している場合

https://yodokikaku.net/?p=15593

保育施設を利用する全ての保護者が願っているのは、安全な保育です。

少なくともこれが担保されない施設は、無償化の対象から外すべきでしょう。

認可外保育施設を利用する際は、基準を満たす証明書が交付されているか否かを確認して下さい。未交付、特に特別立入調査が行われた施設は、避けた方が無難です。