大阪市の平成29年度予算案が公表されました。子育て支援を重点政策に掲げている吉村市長は、新年度予算でも引き続いて重点投資を行おうとしています。
予算規模が大きくかつ子育て世帯に大きな影響が生じるのは、(1)保育所等の大規模新設、(2)教育費無償化を4歳児に拡大、(3)認可外保育施設に通う4-5歳児も教育費無償化対象とする、という項目でしょう。
今回は「(3)認可外保育施設に通う4-5歳児も教育費無償化対象とする」を取り上げます。
2 認可外保育施設の児童も新たに対象
一定の条件を満たす認可外保育施設を利用している4・5歳児を対象に、平成29年4月分保育料より、保育料の半額(教育費相当額)を補助します(年額上限:308,000円)。○対象児童、対象施設、実施時期・金額等
(1) 利用保留児童(認可保育所等への入所を申し込んでいたが利用保留となり、やむを得ず認可外保育施設を利用している児童)が、認可外保育施設指導監督基準*1を満たす旨の証明書等(以下、「証明書等」とする。)を交付されている認可外保育施設を利用する場合
(2) 利用保留児童以外(保護者が当初から認可外保育施設の利用を希望していた場合等)の児童が、証明書等を交付され、かつ、保育所保育指針等に準拠した一定の教育の質が認められた認可外保育施設*2を利用している場合*1 国通知に基づく保育内容、施設整備等に係る指導監督基準
*2 平成29年10月を目途に大阪市が施設を選定・対象期間 平成29年4月分の保育料から
・金額 保育料の半額(教育費相当額) ただし、年額上限308,000円
・支給方法 保護者からの申請に基づき、年度末頃交付※(1)・(2)の場合以外で、利用保留児童以外が、証明書等を交付され、かつ、保育所保育指針等によらない特色ある教育を行っている認可外保育施設を利用している場合
・平成30年度からの実施に向けて、平成29年度中に対象施設の要件を検討
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000388599.html
補助額は保育料の半額(年間308,000円まで)
補助される保育料は教育費相当額、すなわち保育料の半額とされています。ただし、補助上限額は年間308,000円とされています。私立幼稚園と同じ金額です。
月額に換算すると約25,666円となります。補助額をフルで受給するのを一つの狙いとして、これに相当する保育料額に収斂する可能性があるでしょう。
無償化対象として2つの類型が挙げられています。一つずつ検討していきます。
1.利用保留児童が証明書等を交付されている認可外保育施設を利用
一つ目は保育所等への入所を申し込んだが入所できなかった児童が対象となります。下記の2要件が必要だと考えられます。
対象
(1)認可保育所等への入所を申し込んでいたが利用保留となった
(2)認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書等(以下、「証明書等」とする。)を交付されている認可外保育施設を利用する
(1)は一斉入所・年度途中入所等へ申しこんだにも関わらず、希望する保育所等へ入所できなかった児童が対象とするものです。
一定の事情(育休等)を有する児童を控除した、いわゆる「待機児童」のみが対象となる可能性もありました。しかし、どうも待機児童に限られず、入所できなかった児童を広く対象とすると聞きました。
しかし、全ての認可外保育施設が対象となるわけではありません。(2)で「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書等が交付されている施設」に限られています。
行政の関与が全く無いと思われがちな認可外保育施設ですが、実は「認可外保育施設指導監督基準」に則った指導監督が行われています。これを満たした施設には「証明書等」が交付されています。
大阪市は認可外保育施設最新立入調査結果を公表しています。ここには、各施設毎に証明書の有無・指導項目・立入年月日等が記載されています。
多くの施設に証明書等が交付されている一方、安全管理等が指摘されている一部の施設では証明書が交付されていません。
大阪市の狙いは基準を満たした認可外保育施設へ児童を誘導したい所にあるのでしょう。裏返しに言うと、「指導監督基準を満たしていない施設へは、間接的な形であっても公金を投入しない」という意思が垣間見えます。
2.証明書等を交付され、かつ一定の教育の質を有する認可外保育施設を利用
もう一つの類型はやや方針が異なります。保育所等への入所意思等、児童には制限が設けられていません。反対に、施設に対して一定の基準が設けられています。
対象施設
(1)証明書等を交付されている
(2)保育所保育指針等に準拠した一定の教育の質が認められている
(1)は入所できなかった児童を対象とする物と同一です。特色は(2)です。
保育所保育指針とは、保育の基本原則が定められた物です。子供の発達・保育内容・健康や安全・職員の資質向上等がまとめられています。
これなどに準拠した教育とは、すなわち認可保育所等での教育に相当する内容が実践されているものを指すのでしょう。「保育所と同じ教育が行われているので、教育費相当額を市が負担する」という考え方でしょう。
大阪市では平成29年4月から「大阪市保育・幼児教育センター」を開設します。天王寺小学校の校長が所長に就任します。
同センターで検討を進め、対象となる施設を平成29年10月頃に選定する方針だそうです。
具体的にどういった施設が対象となるかは定かではありません。懸念されるのは、適切で無い教育や偏った教育が行われている施設も選ばれてしまいかねない点です。
仮にこうした施設も選ばれた場合、これはすなわち大阪市が「一定の教育の質がある」と認めたものとされます。「大阪市がおかしな教育に荷担している、推奨している」という批判を受けかねません。
選定に際しては専門家の議論の加え、ごく普通の子育て世帯等からの意見も幅広く募り、バランスを確保するのが重要でしょう。
選ばれるか否かは認可外保育施設の経営問題に直結します。一部施設の経営に資したと邪推されかねない様、透明性・公平性・妥当性を有した選定プロセスが望まれます。
保育料は確かに無償になりましたが、なぜか給食費が3倍近く値上がり徴収されることとなりました。
これなら今まで徴収されていた保育料がほんの少し安くなったくらいです。
もっと行政には、どうして値上げする必要があるのかをきちんと保育園に聞いた上で、必要性のある場合のみ値上げの許可を出していただきたいと思います。
いつも客観的な目で大阪市の保育を分析して頂いておりますので大変参考にさせて頂いております。
ありがとうございます。
いよいよ大阪市は幼児教育の無償化が4歳児まで拡大して来ましたね。
方向性はいいと思うんですけど、保育園と幼稚園の教育の差を金額で表してみたり、
新制度に乗らないような施設の方が補助が大きかったり、中身が今一つだと感じるのは私だけでしょうか?(笑)
さて、今回の話題で取り上げられている内容ですが最下段に、
『※(1)・(2)の場合以外で、利用保留児童以外が、証明書等を交付され、かつ、保育所保育指針等によらない特色ある教育を行っている認可外保育施設を利用している場合』
とあります。
そうすると実際には無認可でも「証明書」さえあればどんな施設でも公金投入扱いになるんじゃないでしょうか?
筆者さんがご心配されているような「特殊な教育」(偏向した教育や利用者の選定など)をしている施設もお墨付きがつきそうですね。