「幼児教育・保育の無償化」が始まってから1週間が経ちました。

多くの家庭で経済的負担が軽減した一方、負担が変わらなかったり増えた家庭もあります。

とりわけ、従来から保育料が大きく軽減されていた低所得世帯・ひとり親世帯が顕著だと報じられています。

多くの人が支持する無償化ですが、実は全ての家庭の負担額が減るわけではありません。ひとり親家庭の支援などを行う団体「一般社団法人ひとり親支援協会」が実施したアンケートによりますと、今回の無償化で「トータルの負担額は減った」と回答したひとり親が半数程度だったのに対し、「負担額が増えた」「変わらなかった」と回答した人は合わせて4割近くもいました。

https://www.mbs.jp/mint/news/2019/10/07/072532.shtml

いったいどういうことでしょうか。

「無償化」の裏側で一体、何が起こっているでしょうのか。大阪市在住の加藤さん(仮名・20代)。4歳の娘を認定こども園に通わせるシングルマザーです。所得が低いため、大阪市の補助で保育料は免除されていましたが、10月から新たに遊具や本などに使われる「施設充実費」が5000円から8000円と3000円値上がりした言います。

「『保育を充実させるため』とは書いてあったんですけど、手紙1枚だけだったので正直びっくりしていますね。ほかの園に通っている友達に聞いても皆そういう形で値上がりしているので、びっくりですね…驚いています。」(加藤さん)

ひとり親家庭のアンケートでも「副食費4500円、2000円増えました」「主食費値上がり、副食費の追加、施設費の見直しで増加」などの回答がみられ、“給食費や施設代の値上げなど負担が増えた”という戸惑いの声が複数上がりました。さらに、加藤さんのもとには園から「制服や物品代も値上げを検討している」と連絡があり、負担が重くのしかかります。

「やっぱり(負担が)大きいですね。もっと服も買えるし、お菓子とか、習い事とかもできるので。正直(負担が)大きいですね。」(加藤さん)

なぜこのような値上がりが起こってしまうのか。保育事情に詳しい今井智洋代表理事は「値上がりの理由が不透明なものが多い」と話します。

「(施設充実費で)何を買うからとか、この施設をきれいにするからとか、そういった説明がされれば保護者も納得がいくと思うが、説明がされていないというのがすごく問題だと思う。国や自治体からグレーな所に対しては指導があるようにしっかりしてもらいたい。」

無償化が始まるまで、大阪市では所得税非課税世帯(みなし寡婦控除適用後)のシングルマザー(ひとり親)は保育料が「0円」とされていました(所得割非課税世帯は2,000円)。

保育所・認定こども園(保育認定)・地域型保育事業の保育料について
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000185265.html

一方、各施設が定める実費負担費用(主食代・副食代・施設充実費・遠足代・制服代等)はそれぞれの保護者が定められた額を負担します。

ひとり親世帯の負担が増えたのは、無償化が始まるタイミングで実費負担費用を引き上げた施設があるのが主な要因です。無償だった保育料は更に軽減されず、反対に実費負担部分が値上がりしてしまいました。

ただ、1-2号認定の副食費の免除対象範囲は「年収360万円未満相当まで」に拡大されました。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h310218/pdf/2_s2-6.pdf

多くのひとり親世帯は、副食費が免除される要件に合致するでしょう。

各施設が見落としている恐れがある(無償化事務に事務担当が追いついていない)ので、該当しそうな方は登園している施設にお問い合わせ下さい。

また、大阪市は生活保護世帯等(利用者負担額表における第1階層)を対象に、実費負担部分を助成する事業を行っています。

実費徴収に係る補足給付事業のご案内

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000348519.html

残念ながら、生活保護等以外のひとり親世帯は対象から外れています。実費負担の引き上げが家計を直撃します。酷い話です。

一方、多くの保育施設等は経営に余裕がないとも聞きます。ここ数年の物価上昇に反して子育て世代の給与は思う様に伸びず、実費負担を据え置かざるを得なかったという話も聞きます(お世話になっている保育所は、園児に配布するお菓子や絵本等を減らしました・・・・)。

無償化によって子育て世帯の経済的負担を軽減する趣旨に照らせば、実費負担の引き上げにより総負担額の増大はこれに反します。こうした世帯への支援が必要でしょう。

そもそも無償化によって最も大きな恩恵を受けるのは、高額の保育料を負担していた高所得世帯です。数年前から指摘され続けてきました。

【ニュース】幼児教育無償化が国会審議入り、高所得世帯への所得移転・入所できない0-2歳児が増加へ

子育て世帯全体への支援額が増えた反面、子育て世帯間での経済的格差の増大を招きました。