平成28年度一斉入所の結果が出そろい、4月からの入所準備に追われている方が多数おられるでしょう。
しかし、入所は決まったものの、肝心の「保育料」ははっきりしません。いったい幾ら掛かってくるのでしょうか。保育料の計算システム等についてまとめてみました。
子供・子育て支援新制度による、計算システムの変更点
平成27年度(2015年度)から子供・子育て支援新制度が動き出しました。これに伴い、保育料を計算する方法が大きく変更されました。2016年も同じです。
1.算定基準が市町村民税額(所得割)に
これまでは世帯の所得税額を算定基準として保育料が計算されていました。
しかし、平成27年度からは「市町村民税額」が算定基準とされます。具体的には「市町村民税額の所得割額に税額控除等を足し戻した額」です(自治体によって微妙な差異があります)。
2.保育料の切替時期が年度と異なる
平成26年度までの保育料は毎年4~6月頃に確定し、過不足分は4月に遡及して徴収・還付等が行われていました。
しかし、平成27年度以降は毎年4月~8月までの保育料と、9月~翌年3月の保育料が変わる仕組みとなりました。具体的には、年度前半は前年度分の市町村民税(所得割額)、後半は今年度分の市町村民税(所得割額)から算出されます。
3.幼稚園(新制度移行分)・認定こども園・保育所等の保育料算定根拠が同一に
従来は幼稚園と保育所の保育料は全く別物として計算されていました。しかし、新制度では計算方法が共通化されました(例外あり、後述)。
1号認定(幼稚園・認定こども園の幼稚園部門)・2号認定(3歳以上の保育所・認定こども園の保育部門)・3号認定(3歳未満の保育所・地域型保育事業)における保育料の算定根拠は同一となり、それぞれの認定区分・所得に応じて保育料が計算されます(応能負担)。
例外は新制度に移行していない幼稚園です。従来と同じく所得に変わらず一定額の保育料等が発生し、所得に応じた就園奨励金が補助されます。
1号・2号・3号認定における保育料算定スケジュール(一例)
対象期間 | 保育料の通知時期 | 算定基準となる課税額(所得割) (原則として父母の合計) | 市町村民税の算定基準となる所得 |
平成28年4月~8月 | 平成28年4月 | 平成27年度の市町村民税 | 平成26年の所得 |
平成28年9月~平成29年3月 | 平成28年8月頃 | 平成28年度の市町村民税 | 平成27年の所得 |
平成29年4月~8月 | 平成29年4月 | ||
平成29年9月~平成30年3月 | 平成29年8月頃 | 平成29年度の市町村民税 | 平成28年の所得 |
この様に、毎年夏に保育料が切り替わります。市町村民税が5月頃に決定し、それを基にした新保育料へ9月から切り替わります(一部の自治体では8月?)。
甲賀市の保育料に関する説明書きが分かりやすくまとまっています。
http://www.city.koka.lg.jp/secure/13520/2-b-hoikuryou_h27.pdf
なお、大阪市では在園児に対して「子どものための教育・保育給付支給認定通知書」が通知されています。これに具体的な保育料額は記載されていません。
しかし、通知書に記載されている「利用者負担区分」が「保育料表の階層区分」に該当しています。階層区分・お子様の年齢等から保育料が判明します。
保育料を計算するのに必要な書類
1.世帯(父母)の住民税納税通知書(課税明細書)
住んでいる自治体によって「市民税・府民税」「特別区民税」「町民税・県民税」等、様々な表記があります。例年、5月末~6月上旬毎に届けられます。
計算で利用するのは「市町村民税額(所得割)」です(詳細は後述)。ただ、家族構成・所得等によっては、父母以外の市町村民税額を用いる場合があります。詳細は各自治体の保育所等担当部署にお問い合わせ下さい。
また住民税納税通知書がない、もしくは9月以降の保育料を計算したい場合は、前年分の源泉徴収票・所得税確定申告書等をご準備下さい。
2.自治体毎の保育料表
多くの自治体では既にホームページ等に掲載されています。未だ掲載されていない場合は各年度の予算案に紛れているケースが多いです。「○○市 保育料 平成○○年度」「○○市 保育料 予算案」等のキーワードで検索すると出てくる場合があります。
見つからない場合は、担当部署にお問い合わせ下さい。なお、大阪府内の各市の保育料表は1号認定・2-3号認定からリンクを張っています。
計算方法
最も簡単なのは、保育料を計算するのに必要な書類を持参して、自治体の保育課で「保育料を教えて欲しい」と相談する方法です。これなら間違いがありません。
というのは、自分で計算するのは極めて複雑だからです。以下、ご自分で計算する方法を説明します。自治体内部でもコンピュータを利用して同様に計算しています。
1.保育料算定基礎税額を計算する
最も面倒なのがこのプロセスです。自治体によっては納税通知書の画像を用いた解説ページが掲載されています(下記参照)。
納税通知書等に記載されている「所得割額」がそのまま保育料算定の基礎となるわけではありません。所得割額に税額控除を足し戻す必要があります。住宅ローン控除で大きく減少した所得割額が保育料算定の基準となったらおかしくなってしまいます。
足し戻すのは配当控除・住宅借入金等特別税額控除・寄附金等税額控除・外国税額控除の額です。
適用しない控除
利用者負担額(保育料)を計算する際の税額には、次の控除は適用しません。これらの控除のある方の税額は「控除がなかった場合の税額」となります。寄付金控除・住宅借入金等特別控除・配当控除・外国税額控除
注意するのは、足し戻す必要がない「調整控除」が税額控除額等に含まれているケースが多い点です。調整控除を除いて、上記の税額控除を足し戻して下さい。
また、市町村民税所得割額は、所得割源泉徴収票や所得税確定申告書等からも計算できます。「大阪市 個人市・府民税 税額シミュレーション」を利用します(他の自治体の計算でも利用できます)。
源泉徴収票等から必要な項目を入力すると、市民税額が算出されます。ここで表示される「所得割額(市民税)-税額控除額等+調整控除」から保育料算定基礎税額が算出できます。
2.世帯の市町村民税額を計算する
1.で算出した保育料算定基礎税額につき、父母の分を合算して下さい。これで世帯の保育料算定基礎税額が確定します。
3.保育料表へ当てはめる
2.で算出した数字を各自治体の保育料表へ当てはめます。
4.多子軽減等の減算を行う
保育料の多子軽減等、自治体によっては子育て世帯の家計に配慮した保育料の減免措置を行っています。保育料表に併記されている場合が多いので、それに基づいて減算を行います。
注意して頂きたいのは、「第二子だから自動的に半額」となるわけではない点です。
1号認定では「年少から小学校3年生までの範囲内に子供が2人以上いる場合、その中の最年長の子供を第1子、次の子を第2子」と数えます。
また、2号・3号認定では、「小学校就学前の範囲内に子供が2人以上いる場合、その中の最年長の子供を第1子、次の子を第2子」と数えます。
年の離れた兄姉がいても、保育料は下がらない仕組みとなっています。
5.自治体毎の独自算定
自治体によっては独自に算定している項目等があります。
たとえば所得割額から年少扶養控除相当額を控除して、独自に保育料算定基礎税額を引き下げている自治体があります(所沢市等)。また、京都府の様に一定所得以下の世帯における第三子は上の子の年齢に限らず保育料を全て免除している自治体もあります。大阪市では5歳児の教育費相当額を免除する予算案が審議されています。
自治体内部でも相次ぐ計算ミス
この様に保育料の計算は複雑です。あまりに複雑な為か、自治体内部でも計算ミスが生じています。「【ニュース】140人以上の保育料・多子軽減を考慮せずに過徴収 大阪市中央区」は一例に過ぎません。
自分で試算した結果と自治体から通知された金額が大きく異なった場合は、自治体での計算ミスが生じている可能性があります。早めに自治体へお問い合わせ下さい。
※ミスが無いように細心の注意を払って文章を作成していますが、誤りがあった場合はご容赦下さい。