東京書籍「NEW HORIZON」(令和7年度版)より)

旧ツイッター(現:X)にて「来年から使う英語の教科書がヤバい。」と話題になりました。
https://x.com/shinohara_ibuki/status/1843847966060360054

これは三省堂の英語教科書「NEW CROWN」です。中学校では2025年から新しい教科書が使用されます。2021年改訂ほどの激変はありませんが、親世代からすると「難しい」の一言です。

中学校の英語は本当に難しくなっています。小学校での学習を前提として語彙数が増え、高校段階の文法事項の一部が中学校に降りてきました。中学3年生の後期には「仮定法」も取り扱います。

中学校の英語が難しい、親世代より語彙数倍増

大阪市は各地区にバラバラの教科書が使用されています。2025年度から使用する英語教科書につき、第1地区(此花・港・西淀川・淀川・東淀川)は東京書籍、第2地区(北・都島・福島・東成・旭・城東・鶴見)は光村出版、第3地区(中央・西・大正・浪速・住之江・住吉・西成)は開隆堂、第4地区(天王寺・生野・阿倍野・東住吉・平野)は東京書籍を採用しました。

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試しに2つの地区が採用する東京書籍「NEW HORIZON」(令和7年度版)を見てみます。参考ながら、私自身も数十年前に同じ教科書を使用していた記憶があります。

まずは1年生の教科書Part1(12ページ)です。年間指導計画によると4月下旬に授業で行うとされているページです。


https://digibook.tokyo-shoseki.co.jp/sample/nh/contents/booklet/index.html?id=1_12&g=1&isArea=false

早くもbe動詞と一般動詞、命令形、頻度を表す副詞(too)、熟語(be from ~)、複数形、前置詞(to)が使われています。これだけの文法事項を一度に教えるのは大変です。

ただ、こうした言い回しは小学校の英語で多用されています。小学校高学年の子供が英語の授業で発表する練習を自宅で行っていた際、これらの表現を使っていました。

しかし、単語の意味・スペルや文法事項はちんぷんかんぷんでした。表現方法としては習得していましたが、文法の意味は理解しておらず、単語のスペルは全く覚えていませんでした。英語で「犬」や「猫」すら書けない始末です。

数十年前に中学校から英語を学習し始めた一保護者としては、もう少し小学校で英語の書き取り(単語や文章)や文法事項の説明(be動詞と一般動詞の違い、肯定文や疑問文の作り方等)も指導して欲しいと感じています。英語に親しむのを優先するあまり、語学としてのフレームワークが後回しになっている様に見えます(諸説異論はあるでしょうが)。

一方で小学校から英会話教室等に通い、中学校入学までに英検4級等を取得している子供も一定数います。子供の話を聞く限り、クラスの2~3割程度は学校外で英語を学習している様子です。

こうしたバックグラウンドを有する小学生が中が校へ入学し、急激にレベルが上昇した英語の授業やテストを受けたらどういった結果が生じるのでしょうか。「二極化」が答えです。

手元に直近の中間テストにおける点数分布表(10点刻み)があります。最も人数が多いのは60点台、その次は何と10点台、30点台と続きます。最も少ないのは90点台ではなくて50点台でした。

10点台~30点台、及び60点台にピークがあるという、理解し難い分布です。英語を殆ど理解できていないグループ、一定程度は理解しているグループ、学校外教育や英検受験等を通じて先行しているグループに大別されます。

こうした生徒が混在するクラスです。適切な授業を行うのが難しいでしょう。先生へ「習熟度別はできないの?」と訊ねた事がありますが、「難しい」との答えでした。

特に大阪では公立高校入試にて高難易度たる「C問題」を採用し、これをバイパスする手段として「英検2級の取得」が重視されています。

4,261人が英検等を活用→3,622人(85%)が最低保障で救済、令和6年度大阪府立高校入試

高学力層が英語学習に重点を置く結果、中低位学力層との差は開く一方です。それが英語テストの歪な結果へと繋がっています。公立中学校が敬遠される理由の一端が見えました。