数日前、行政改革担当の河野大臣がツイッターで「学校の業務の効率化、保護者の負担軽減の視点から文科省が動きます」と呟きました。

早速実現されそうです。

 ランドセルの底から数週間前の学校便りがくしゃくしゃになって見つかった―。文部科学省は20日、子どもを介するためトラブルが起こりやすい学校と保護者の間の連絡について、メール配信システムの活用などデジタル化するよう求める通知を、都道府県教育委員会などに出した。保護者が押印する書類が多いこともデジタル化の障壁になってきたとして、脱はんこの取り組みを促した。

 学校現場では、懇談会への出席や進路希望調査など、さまざまな書類を保護者とやりとりしている。文科省はデジタル化すれば、教員が印刷して配布したり、回収・集計の手間が掛からず、働き方改革にもつながるとみている。

https://this.kiji.is/691105642996761697

多くの学校は、懇談会への参加申し込みや子どものアレルギーの確認、進路調査などの保護者とのやり取りを文書で行っている。通知はこうした慣行について、「保護者に確認を得る目的の押印手続きがあるが故に、デジタル化できなかった現状もある」と指摘。その上で「押印をもって保護者が文書を作成したことを証明することは限界がある」として、内容によっては押印を必要としないメールなどの連絡手段に切り替えるよう促した。

 具体的な取り組みとして、欠席や遅刻の連絡のオンライン化や学校からの「お便り」のメール配信などを想定している。プリントの印刷や提出書類の集計、家庭との電話連絡などの業務を減らし、教員の「働き方改革」につなげる狙いもある。

https://mainichi.jp/articles/20201020/k00/00m/040/066000c

萩生田光一文科相は同日の閣議後の記者会見で「認め印の効力は限定的だ。個人情報の取り扱いやデジタル環境のない家庭への対応をまとめたので、可能なところから順次取り組んでほしい」と述べた。

同省によると、体験学習や懇談会など小学校行事への出欠連絡で、保護者が押印した書類を提出する形式が多い。通知では、慣例や後のトラブルに備え「念のため押印を求めている場合もある」と指摘する一方、他人や子ども自身が印鑑を押す可能性など、押印そのものによる保護者の意思証明には限界があるとした。

押印にこだわらず連絡手段のデジタル化を進めれば、教員が書類を作ったり、保護者が確認して押印したりする手間が省け、双方の負担が軽くなる。回答も自動集計でき、学校の働き方改革にもつながるとした。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65206450Q0A021C2CE0000/

通知は文部科学省ウェブサイトに掲載されています。

学校が保護者等に求める押印の見直し及び学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化の推進について(通知)

https://www.mext.go.jp/content/20201019-mxt_zaimu-100002245-1.pdf

以下、重要な部分を抜粋します。

押印省略・デジタル化の徹底を

押印の省略や学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化を進めることは、迅速な情報共有を実現するとともに、学校・保護者等双方の負担軽減にも大きく寄与するものであるため、教育委員会等においては、学校が円滑にデジタル化等に移行できるよう、殿、学校が保護者等に求める押印の見直し及び学校・保護者等間の連絡手段のデジタル化の推進についての考え方・具体策をお示しするための通知です。各学校や地域の実情を踏まえつつ、可能なところから取組が進むよう、学校まで確実に周知いただくようお願い致します。(中略)

なお、本件は学校運営に影響が大きい事項であるため、確実に各学校まで行き届くよう特段の御配慮をお願いいたします。

各学校への周知徹底を図る様に強く念押ししています。

1.保護者等による押印の効力について

学校・保護者等間において書面で押印を伴うやりとりが多々行われている実態がある。これらは、単に慣例として押印を求めている場合もあれば、後々トラブル等に発展した際に保護者等が文書作成者であることを学校側が主張・証明することを想定し、念のために保護者等に押印を求めている場合もあると考えられる。(中略)

保護者等に多用されているいわゆる「認印」による押印の場合には、その認印が保護者等のものであることを認印自体から立証することは事実上困難であり、押印の効果は限定的であること。

学校へ提出する様々な文章へ押印しています。朱肉を利用して押印するのは大変なので、複数のシャチハタ印でひたすら押印しています。

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子供は「スタンプして~」と持ってきます。

ただ、こうした押印は確実に保護者が押印したとは限りません。子供が勝手に押しても分かりません。

子供には「勝手に押さないでね」と伝えていますが、シャチハタはリビングテーブルの上に転がっています。勝手に押せてしまいます。

こうした事情がある事から、押印の効力は限定的なのはその通りです。

簡易な用途(音読カードへの押印等)ならば大きな問題とはなりませんが、重要な用途(アレルギー食の申請や水泳授業の申込等)で勝手に押されてしまうと大変です。

保護者による意思表示を確実に求めたいのであれば、押印よりも「署名(のみ)」を求めるのが適当でしょう。

2.押印の省略、デジタル化への移行について

内容によっては押印手続きを省略し、メール配信システムや学校・保護者等間における双方向の情報伝達が可能な専用ソフトウェア等を活用して必要な情報を得るなど、効率的な情報伝達手段を検討されたいこと。

まずは全児童へ一斉にする内容からメール等へ移行して欲しいですね。

緊急を要する連絡は一斉配信メールや学校日記への掲載で行われています。これを様々な諸連絡にも広げていくのでしょう。

デジタル化しやすく、そして効果が高いのは全世帯を対象とした事務連絡(学校納入金のお知らせ、授業参観のお知らせ等)でしょう。

クラス単位の連絡やイラストをふんだんに利用したお知らせ(保健室便り等)は、追って検討となりそうです。全てを一斉にデジタル化するのは大変です。

配布アカウントや貸与機器の活用も

3.デジタル化した際の保護者等からの意思表示であることの証明について

児童生徒や他人による保護者等へのなりすまし等による回答を防ぐためには、情報伝達サービスへの利用登録(個人ID・パスワード付与等)のプロセスを得るなど、情報と個人の紐づけが確実にできるデジタル環境がより望ましい

押印に変わる本人性を求める物については、個人ID等を利用した認証制度の利用を求めています。

大阪市立学校では各児童生徒にTeamsアカウントを配布しているので、これを利用するのが楽でしょう。

ただ、デジタル化された連絡において保護者からの回答を確実に求めるのはハードルが高いです。連絡漏れ、回答漏れ、回答する方法が分からない等のトラブルは発生します。

押印の省略やデジタル化が軌道に乗ってからでも遅くないと感じました。

4.GIGAスクール構想に基づき整備された端末等に付随する機能の活用について

GIGAスクール構想等に基づく整備に伴って利用可能となる環境の中には、アンケート作成機能が備わっているなど、学校と保護者等がデジタル上で連絡を取り合うことができる機能が含まれている場合もあるため、それらを活用することも十分可能である

大阪市はTeamsアカウントを配布しましたが、端末の貸出等は未だです(一部学校では行われているそうですが)。

全ての関係者がデジタル上でアンケート作成及び回答を行うのは容易ではありません。早急に移行しようとしても、トラブル対応に追われてしまいそうです。

6.デジタル環境への対応が難しい御家庭への配慮について
デジタル環境への対応が難しい御家庭には、書面による手続きの余地を残すなど、特段の配慮をされたいこと。

ほぼ全ての世帯がスマートフォン等を保有していますが、「全世帯」ではありません。完全なデジタル化を行ってしまうと、取り残される家庭が発生してしまいます。

ただ、例外的な対応を行うのは負担となります。自治体が通信費用等を負担してでも、全世帯のデジタル化を図るべきでしょう。

通知の添付文には様々な実例が掲載されています。

学校外からの諸案内の省力化も重要

学校からの諸連絡に加え、学校関係団体(PTAや地域活動協議会等)からの連絡もデジタル化を図って欲しいですね。典型的な内容が多いので、移行は容易でしょう。

ただ、押印の省略やデジタル化によって省略できる物は一部です。

デジタル化できない書類に加え、学校とは全く関係が無い諸団体から配布を依頼される書類が非常に多いのが問題だと感じています。

つい先日も「○○イベントのお知らせ」「○○展覧会のお知らせ」といったプリントや小新聞を子供が持ち帰ってきました。

興味が無いイベントが大半であり、表題だけ目を通して廃品回収ボックスに入れてしまいます。

デジタル化等によって省略可を図るのと同時に、学校とは直接関係がない諸案内の配布事務を学校が担う事の是非も吟味されるべきです。

学校を通して配布する事の効果や利便性が大きいのは認めます。しかし、それらは各団体が行うべき活動を学校に押しつけている事に他なりません。

例えば学校から配信されるメールの末尾に、「○○からのお知らせ」という項目を設けてURLを記載する方法が考えられます。

これらを同じ様に、保育所からの連絡もデジタル化して欲しいですね。事務連絡は簡単にデジタル化できます。

経験上、全てを一斉にデジタル化するのはトラブルの元です。関係者のデジタルリテラシーは大きな開きがあります。

デジタル化が容易、そして効果が大きい分野から移行するのが無難でしょう。