2023年10月22日に実施された行われた埼玉県所沢市長選挙にて4選を目指していた与党系現職候補が落選し、野党系新人候補が初当選しました。
自民党県議団が「虐待禁止条例」改正案を県議会に提出しようとして、県民の猛反発に遭い撤回した埼玉県で22日、所沢市長選が投開票され、自民、公明両党が推薦した現職の藤本正人氏(61)が落選した。藤本氏は4選を目指していた。無所属の新人で民主党の元衆院議員、小野塚勝俊氏(51)が藤本氏ら2人をやぶり、初当選した。
埼玉では、自民党県議団が9月の県議会に、小学生3年生以下の子どもを自宅に残したままの外出を「虐待」とすることなどを定めた「虐待禁止条例」の改正案を提出。今月13日の採決を目指したが、現実離れした内容への批判が相次ぎ、取り下げる事態が起きたばかり。今回の市長選はその直後だけに、有権者の対応に関心が集まっていた。
投票率は38・80%で、前回(31・99%)を6・81ポイント上回り、有権者の関心の高さが示された。
小野塚氏は、市長時代の独自の子育て政策が注目を集める泉房穂・元明石市長と、二人三脚の選挙活動を展開。現職に1万票以上の票差をつけて勝利した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/18bc69002a7b5a6d373a1cdcbfedf5948876853b
当選した小野塚新市長と落選した藤本元市長の得票数は、約16,000票もの大差が付きました。
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/shiminsanka/senkyo/mayor/kaihyo_mayor.html
現職候補が大敗した大きな要因に「子育て支援政策の軽視」があると言われています。所沢市から遠く離れた関西でも、所沢市の子育て支援政策に対する強い反発が聞こえていました。
育休退園
代表的なのは育休退園制度です。8年前に全国で社会問題化しました。
家庭保育が可能な園児を退園させて他の園児を受け入れるのは、確かに待機児童を減らす効果はあります。
が、乳児とイヤイヤ期真っ盛りの上の子を家庭で育児するのは極めて負担が大きいのに加え、慣れ親しんだ保育所から切り離される児童への悪影響は計り知れません。
育休退園制度を運用している自治体は決して多くありません。あれだけ多くの問題が指摘されたにも関わらず、所沢市が未だに継続しているのに驚いてしまいました。
学校のエアコン設置
藤本元市長は初当選した直後に学校へのエアコン設置計画を中止し、住民投票を経て、ようやく7年後に計画を再開させました。
埼玉県所沢市の藤本正人市長は14日の記者会見で、全ての市立小中学校にエアコンなど空調設備を設置すると表明した。同市では付近の入間基地を離着陸する自衛隊機の騒音対策で窓を閉めて授業するため、いったんエアコン設置が決まったが、2011年に就任した藤本市長が計画を中止。15年には異例の住民投票に発展していた。
藤本市長は「快適さを最優先した生き方を転換すべき」との考えは変わらないとした上で「違う考えの人もいる。エアコンは入れるが、自然と寄り添う手法を検討する」と述べた。事実上の方針転換で、18年度当初予算案に調査費350万円を計上した。
この間は全国各地で夏場の気温が上昇し続けた期間とも重なります。夏場にエアコンが無い教室を閉め切って授業を行うのは困難です。暑くて授業に集中できません。
「快適さを最優先した生き方を転換すべき」というのは元市長の思い込みに過ぎません。学校現場に必要なのは「授業に集中できる環境を最優先した学校」です。
虐待禁止条例の改正問題
決め手となったは埼玉県虐待禁止条例の改正問題でしょう。子育て世帯が猛反発しました。
あくまで埼玉県の条例改正問題ですが、子育て支援を軽視する所沢市に飛び火したのは言うまでもありません。
子育て支援問題の焦点化
初当選した小野塚新市長は泉房穂氏(元明石市長)の応援の下、子育て支援問題を選挙の争点に持ち出しました。理念や政策の上位には、子育て支援政策が並んでいます。
18歳までの医療費完全無料化
小・中学校の給食費無料化
保育料第2子以降無料化
遊び場利用料親子とも無料化
おむつ満1歳までの無料化
市内全小・中学校の体育館にエアコン設置
保育園の新設、育休退園制度の廃止、待機児童の解消
所沢市の待機児童数は、現在、埼玉県内で最悪、全国でワースト5
幼稚園・保育園にかかわらず、お子さんの一時預かりを可能とする政策の促進
これら全てを短期間に実施できるとは考えられません。が、こうした問題意識を持ち、取り組んでいきたい姿勢は伝わります。私自身は超過需要を引き起こしやすい無料化は決して好きではありませんが、子育て世帯を経済面で支援する効果は絶大です。
特に大阪市で子育てしていて痛感しているのは「給食費無料化のありがたみ」です。この効果は絶大です。
埼玉県の各市は待機児童問題が深刻だという話も漏れ伝わっています。大阪市も深刻な状態が続いていましたが、地道に保育所等を新設し続けた結果、待機児童数は年を追う毎に減少しました。
所沢市長選挙では12年に及んだ藤本市政に対する評価が行われました。国を挙げて少子化対策や子育て支援対策が叫ばれる中、所沢市民は藤本元市長を落選させると判断しました。