(16時半追記)
東京新聞ウェブサイトに質疑詳細が掲載されています。自民党埼玉県議団の田村琢実団長は「議案の内容は瑕疵がなかった」と述べました。
Q 議論の進め方、反省点は
A 議案の内容は私は瑕疵がなかったと思っていますけど、説明に不十分さがあり、それが広く伝わったことで不安を与えたことを猛省しています。
条例全体の構成を説明しきれなくて、改正部分のみが表に突っ走ってしまった。残念ではあるけど、広く、国民、県民のみなさまからご指摘をいただいたので、取り下げをしました。
虐待については、定義付けをしています。今回は、安全配慮義務の説明が不足をしていて、私が不足をしていまして、〇×方式で回答せざるをえないところで回答してしまった私の責任。
安全配慮義務は子ども発育状況で変わる。家庭内で約束事がなされていれば、ご心配いただいているほとんどのオペレーションが虐待にあたらないと考えていますけど、不安を広げてしまった。
多くの方は、改正案全体の構成を見た上で「これはおかしい」と主張しています。改正案には子供発育状況に応じて安全配慮義務が変わるという文言は無く、単純に年齢で区切るのみです。
この会見により、団長や自民党は改正案を理解していない様を露呈しました。更に傷口を広げた格好です。
「日本における子供を放置している状況を再認識し、 ご家庭での子育てオペレーションを一考頂く機会となるとの思い」があるのであれば、年齢で区切ったり罰則を設ける必要はありません。
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(14時半追記)
自民党埼玉県議団は改正案を取り下げると決定しました。
子どもを自宅や車内などに放置することを禁止する埼玉県虐待禁止条例改正案について、提出した自民党県議団は10日、改正案を取り下げることを決めた。同県議団はこれまでに、子どもだけの登下校や短時間の留守番なども「虐待」にあたるとの見解を示し、批判を呼んでいた。
自民県議団は10日午後に記者会見を開き、田村琢実団長の名前で書面を配布。「私の言葉足らずにより、県民の皆様はもとより全国的に不安と心配の声が広がり、多くの県民・団体等より、県議団に対し様々なご意見を頂戴した」と説明。条例運用にあたっては趣旨が十分理解され、社会全体で子供の安全を守る機運につながることが重要だとして「こうした観点から、本議案については取り下げさせて頂きます」とした。
田村琢実団長@tamuratakumi84 の記者会見要約すると
・改正案の内容に不備は無い完璧だ。説明が足りなかっただけ
・説明不足が世論が変な方向にいった
・安全配慮義務があれば虐待じゃない(通報者がそれ分かんの?)振り切れてるわ😇
ところで市民ブロック小久保憲一県議@kokubokenichi の処遇は? https://t.co/ILROpMGbOR
— HORI(2P) (@HORI_2P) October 10, 2023
「言葉足らず」ではありません。言葉は十分でした。足らなかったのは「子育て世帯への理解」です。
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埼玉県自民党県議団が県議会へ提出していた「埼玉県虐待禁止条例」の改正案につき、同県議団は成立を断念しました。読売新聞が報じています。
子どもを自宅や車などに放置する行為を「虐待」として禁止しようと、埼玉県虐待禁止条例の改正案を提出していた自民党県議団は、開会中の9月定例会での成立を断念した。10日に正式決定する。改正案には県民などから「子どもだけの登下校まで禁じるのはおかしい」などと批判が相次ぎ、理解を得られない中で成立させるのは困難と判断した。
放置や置き去りによる悲惨な事案が各地で起きたことを受けて、県議会最大会派の自民は来春施行を目指す改正案を今月4日に提出。委員会は通過し、13日には本会議で採決の予定だったが、関係者によると、自民は議長に撤回を要請する方針だ。
改正案は罰則規定はないものの、保護者や保育園職員などに対し、小学3年までの子どもの放置や置き去りを禁じる内容。虐待を受けた児童の発見時などの通報を県民の義務とした。
ただ、自民は委員会で禁止事項として、〈1〉短時間でも子どもに留守番をさせる〈2〉子どもだけで登下校させたり、公園で遊ばせたりする――といった内容が想定されると説明。これらは改正案には明記されていないが、他の会派などから「多くの家庭が条例違反になりかねない」「子どもの預け先がない親を追い詰める」などと批判が相次いだ。さいたま市PTA協議会なども改正反対のオンライン署名活動を始めていた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/35aed04f7ede5efef952a625256212c485e8b0dc
条例改正案はこちらです。そこはかとなく世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の薫りが漂います。
一つの子育て世帯として「荒唐無稽、現実を無視した条例改正案だ」と受け止めていました。もしも成立・施行した場合、大きな混乱が起こると予想していました。いくつかご紹介します。
【現状は適法→条例改正で違法に】
・小学3年生以下の子供だけで(以下同じ)学校へ登下校するのが「虐待」だと判断される。
・公園で遊ぶのが「虐待」だと判断される。
・近所のスーパーマーケットや駄菓子屋へ買い物に行くのが「虐待」だと判断される。
・塾や習い事へ出掛けるのが「虐待」だと判断される。
【広がる混乱】
・地元の役所や学校や警察に「虐待ではないか」という通報が殺到する。
・自力救済系Youtuberが埼玉県内の公園を見張り、子供だけで遊んでいる光景を「虐待現場だ」と中継&通報する。
・対処が必要な深刻な虐待案件が埋もれてしまい、ケガ等を伴う虐待事件が増加する。
・自民党県議団や国会議員の子供が虐待されている現場を探す動きが盛んとなる。
・埼玉県内での居住が子育て世帯から敬遠され、ファミリー物件が値下がりする。
「子供を虐待から守る」という問題意識は理解します。
一方でその対象が過度に広い感じています。「小学3年生」ではなく「未就学児」もしくは「2歳以下」であれば、違った受け止めとなったでしょう。
また条例改正案は「放置」と表していますが、その態様は様々です。自宅で数分だけ留守番させる事も、商業施設の駐車場で1時間も待機させるのはも同じ行為だと括られています。
「放置」を禁ずるのであれば、児童の身体に害を及ぼす可能性が高い行為に限定すべきでした。子供の年齢等にもよりますが、短時間の留守番や近所の買い物はOKでも、車内での長時間待機はNGだと考える子育て世帯が大多数でしょう。
我が家は未就学児の間は1人で留守番や買い物等はさせませんでした。小学校入学後に少しずつ機会を作り、慣らしていきました。
この騒動から浮かび上がったのは、自民党埼玉県議団が「子育て」を全く理解していないという残念な事実です。日々子供と向き合い、その生活ぶりを理解していたら、こうした非現実的な条例改正案を提出するわけがありません。
多くの国民が政治に求めているのは、子育て世帯の手足を縛る法令や政治家個人の思想の押しつけではありません。子育て世帯が困っている現実に向き合い、地道に解決していく支援策です。