児童手当減額に関する財務省・厚労省・内閣府の原案が固まった様子です。

特例給付(月5000円)の対象を「夫婦の合計収入が960万円以上から1500万円未満」へ絞る内容だそうです。

児童手当、高所得層は縮小 待機児童対策の財源に

財務省と厚生労働省は年収960万円以上の全ての子育て世帯に配っている児童手当の特例(月5千円)を縮小する方向で与党と調整に入る。一定所得以上の高所得世帯は支給額を縮小もしくは廃止する案が浮上しており、最大1600億円必要な待機児童対策の財源に充てる。年収基準は所得が高い方に限定してきたが、夫婦合算の仕組みに切り替える。

児童手当は中学生までが対象。3歳未満や第3子以降は月額で1人1万5千円、ほかは1万円配られる。夫婦子ども2人世帯で年収960万円未満を上限としている。2010年度の税制改正で高所得者に影響が大きい「年少扶養控除」が廃止されたことに伴い、「当分の間」の特例として年収960万円以上の世帯にも1人5千円支給している。

財務・厚労両省と子育て政策を所管する内閣府は与党と調整を始める。給付額が縮小・廃止になる高所得世帯の年収基準は今後、詰める。政府内には年収1500万円などとする案がある。共働き世帯が増加するなか、所得制限の判定対象は夫婦の合計収入とし、家計の実態を反映させやすくする。

仮に年収1500万円を基準に給付額をゼロにした場合、夫婦の合計収入が960万円以上・1500万円未満の子ども2人世帯は、年12万円(1人月5千円)は給付される。だが、高所得世帯の支給減は避けられそうにない。夫と妻の年収がいずれも800万円で子ども2人の世帯では最大で年36万円の給付がなくなる。

政府は児童手当見直しにより、待機児童解消に向けた保育所増設の財源を得たい考え。政府は24年度末までの4年間で、最大14万人分の保育の受け皿を整備する必要があるとみている。企業が負担する「事業主拠出金」の引き上げと合わせて、必要資金を確保する。経済界には1100億円の追加拠出を要請する。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66343900X11C20A1EE8000/

日経新聞記事に掲載されたグラフ「児童手当受給者の世帯年収」は、「令和元年国民生活基礎調査-児童のいる世帯数の相対度数分布-累積度数分布,年次・所得金額階級別」に近い数字が掲載されています(同一とまでは確認できていません)。

所得金額階級(児童のいる世帯)2018(平成30)年
総数100
 50万円未満0.2
 50~1001.6
 100~1502.3
 150~2002.1
 200~2503.1
 250~3002.6
 300~3503.1
 350~4003.3
 400~4504.6
 450~5005.1
 500~5506.8
 550~6005.6
 600~6507
 650~7006
 700~7505.9
 750~8005.1
 800~8504.3
 850~9004.5
 900~9503.3
 950~10003.3
 1000~11005.4
 1100~12003.2
 1200~15006.6
 1500~20003.4
 2000万円以上1.6

令和元年国民生活基礎調査-児童のいる世帯数の相対度数分布-累積度数分布,年次・所得金額階級別より作成

与党調整前ですが、政府原案はこの様な形となりそうです。

夫婦の年収児童手当の支給額(月額)
960万円未満1万円~15000円
960万円以上~1500万円未満5000円
1500万円以上廃止

政府原案通りならば、約4~5%の子育て世帯の児童手当が廃止される見通しです。

高所得世帯は都市部に集中しているので、東京や大阪等ではより多くの子育て世帯に影響が生じそうです。

財務省が数年前から主張

実は数年前から財務省が「児童手当の所得基準は世帯合算とすべき」と主張していました。

平成29年10月25日財政制度等審議会資料(抜粋)

所得制限に関する判定基準の見直し、そして制限超過世帯への児童手当の廃止、いずれも上記スライドに沿っています。内閣が代わり、財務省の発言力が強まったのかもしれません。

判定基準の見直しは合理性があると感じています。既に保育料は世帯収入から算出されています。

一方、制限を超過する世帯(年収1500万円以上)の児童手当を廃止する案はスッキリしません。

もしも高所得世帯の児童手当を削減して低所得世帯やひとり親世帯等の給付を充実させるのであれば、所得再配分の一貫して考えられたでしょう。

しかし、本改正案の目的は「待機児童解消に向けた保育所増設の財源」です。

お金に色はないとしても、保育所の増設や運営等に要する費用は、第一に保育所等の利用者に求めるべきでしょう。「保育料」です。

しかし、昨年に行われたのは「幼児教育・保育の無償化」という正反対の施策でした。

無償化によって保育需要は明白に上昇しました。昨年秋~冬に行われた保育所等一斉入所申込では、申込数が過去最多を記録しました。

無償化対象となる3~5歳児のみならず、0~2歳児の申込数も上昇しました。入所しやすい低年齢の内に入所し、早めに働き始めたいという意向が感じられました。

無償化によって急増した保育需要に応じる為、消費増税では足りずに児童手当の削減も行うとは本末転倒としか言い様がありません。

幼児教育・保育無償化によって最も大きな恩恵を受けたのは、高所得の子育て世帯でした。

【幼保無償化】値上げ・負担増も、恩恵は中高所得世帯に集中、「貧乏人は出産するな」?

主に高所得世帯へ保育料を還元したら財源が不足し、反対に高所得世帯の児童手当を狙い撃ちするとは何がしたいのでしょうか。右往左往している様に見えます。