(抜け出した可能性がある木立、グーグルストリートビューより)

広島市立小河内保育園から園児が抜け出した事故につき、当日の出来事を時系列に並べました。新たに気になったポイントが見えてきました。

時間出来事
9時過ぎ登園
当日は園児34人・職員8人が園にいた(配置基準は充足)
10時過ぎ3歳以上児(計24人)・保育士2人と園庭で遊んだ(担任の保育士は園内でオンライン研修)
11時20分頃手洗い場にてミニカーで遊んでいた
11時25分頃?園児が園庭と道路の間の植え込みの隙間などから外に出た?

11時30分頃園児と園庭で遊んでいた保育士ではない保育士が、園児不在に気づいた(園庭遊びを終え、昼食の為に保育室へ戻ったタイミング?)
11時30分~園内を捜索しても見つからず、自宅にも帰っていなかった
12時30分頃警察に通報した
川の方向へ1人で歩く姿、川土手を降りる姿、河原を1人で歩く姿がドライブレコーダーや防犯カメラに録画されていた

14時30分頃園近くの太田川放水路で倒れている園児を発見した。現場上流には泥が付いた足跡があり、流された可能性もある。
心臓マッサージや人工呼吸をしていたが、反応はなかった
病院で死亡が確認された、死因は溺死

新たに気になったポイントは2点です。園から抜け出した経緯と園外捜索です。

抜け出した経路は園庭と植え込みの隙間が有力視されています。糸状のネットが偏り、植え込みが疎らな箇所がありました(上記ストリートビュー参照)。5歳児ならネットをかいくぐり、木立の間から抜け出せてしまいます。

園は隙間の存在を認識・重要視していなかった様子です。安全管理チェックシートで指摘されていませんでした。

市こども未来局によると、市立保育園は計87園あり、毎月初めに1回、各園の担当者が老朽化などを確認する市の「安全管理チェックシート」に従って施設を点検。問題が見つかった場合、市に報告する決まりという。男児は門や出入り口ではなく、園庭から植え込みの隙間を通って1人で外に出た可能性があるとされるが、園から施設の問題は報告されていなかった。

https://mainichi.jp/articles/20220419/k00/00m/040/249000c

仮に隙間を認識していても、「こんな隙間を園児が通り抜けられる筈がない」と軽視していたのかもしれません。

大人が想像する以上に子供は小さな隙間が好きで、すり抜けていきます。昨年に岡山市で発生した園庭遊具での事故は、隙間で窒息してしまったのが原因でした。

2歳園児が遊具の棚に首を引っかけ死亡 第二さくら保育園(岡山市)【ニュース・11/15追記】

お世話になっている保育所では、頭が入らない様に遊具の隙間を狭めました。

もう1点は園外捜索を始めた時期と規模です。報道では「園児が園内や自宅にいない事を確認した後、12時半頃の警察に通報した」とされています。警察の到着を待ってから園外捜索を始めたのであれば、この1時間の遅れが致命傷だったかもしれません。

というのも、保育士が所在を確認した10分後に園児の姿が消えていました。園児はまだ園近く、遠くても土手や河川敷に留まっていた時間です。園内捜索と同時に園外捜索にも人を出していたら、早いタイミングで園児を見つけられた可能性が強いです。

ただ、当初は「園内のどこかにいる」と思い込んでしまうのは仕方ありません。まさか1人で園外に出ているとは思いもしません。園外捜索に割ける人的余裕も乏しかったでしょう。

それでも抜け出した可能性を考慮し、園内と同時に園外捜索も行うべきでした。少なくとも門から抜け出した可能性は想定できました。

この判断に影響したかもしれないのは「土曜日」です。園長が不在ならば、迅速な判断が難しかったでしょう。土曜保育の責任者が園長や主任保育士に連絡を取り、更には広島市役所の担当部局にも相談し、通報や捜索範囲を決定したのではないかと感じました。

思い出したのは、東日本大震災で重大な被害を受けた石巻市立大川小学校です。当日は校長が出張でおらず、避難等の遅れに繋がりました。

保育園の立地を考慮すると、園外で最も重点的に探すのは「水辺」、次いで「幹線道路」です。どちらも園児に重大な危害を及ぼす危険がある場所です。

より早い時間に河川敷を捜索する事はできました。酷な要求ではありません。施設の不備や判断の遅れに関する保育園や広島市の責任は極めて重大です。

本事件に関するヤフコメを読んだのですが、「保育園や保育士は悪くない」「避けられない事故だった」というコメントが非常に多くて驚きました。

園児が出入りできる程度に紐状のネットや木立に隙間が生じているのは認識できた筈であり、対策は容易でした。確実に避けられた事故です。現場の保育士ではなく、保育園(管理職)や市の管理責任が問われます。