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生後9ヶ月の女児が認可外保育施設で死亡した宇都宮トイズ事件の公判が行われています。

小児救急医の証言

2日目は検察側証人として小児救急を専門とする医師が専門的見地から、「重度の脱水症状」「重篤で誰もが気づける状態だった」と証言しました。

「といず」乳児死亡公判 小児科医が証言「誰もが気付く重篤状態」

宇都宮市内の認可外保育施設「といず」で2014年7月、宿泊保育中の同市、山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた元施設長で住所不定、無職木村久美子(きむらくみこ)被告(59)の裁判員裁判第2回公判が7日、宇都宮地裁(佐藤基(さとうもとい)裁判長)で開かれた。検察側証人で北九州市立八幡病院の市川光太郎(いちかわこうたろう)病院長(小児救急医学)は、愛美利ちゃんが熱中症で亡くなる前の容体について「脱水の症状が出ており、重篤で誰もが気付ける状態だった」などと証言した。

弁護側は「被告は(愛美利ちゃんが)生存に必要な保護を要するとの認識はなかった」と主張している。

市川病院長は愛美利ちゃんについて、司法解剖時の血液検査結果や体重が8・7キロから7・5キロまで13・8%減少していたことから「重度の脱水状態」と指摘。「亡くなる12時間前にはほとんど動けない状態だったのでは」とし受診の必要があったとの見方を示した。

重度の脱水状態の場合、「笑わずぐったりする」「呼吸が速くなる」「(ミルクなどを)吸い込んだり飲み込んだりすることは不可能」などと説明した。

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20160608/2350312

(省略)

この日は、初めに「といず」で保育や送迎を担当していた次男が証言した。子どもの体調などを保護者と共有するための連絡帳について、木村被告に渡されたメモを基に書いていたとし、「記載したことと実態が合致していない部分があった」と話した。連絡帳には食事、体温、排便などの記録欄があったが、食事内容は実際と異なるもので、体温は計らず朝に保護者が記入した数値から少しずらして書き、排便の記録も「いつもこのくらいという感じで書いていた」と振り返った。また、体調が悪化したとみられる2014年7月25日の愛美利ちゃんの様子について、「午前中からワイシャツで縛られていた。昼ごろに母から『熱があるみたい』と聞いたが、特別な対応はしなかった」と説明。26日は午前5時40分ごろ、木村被告に「子どもの様子がおかしい」と起こされ、被告の指示で人工呼吸をしたという。その際、愛美利ちゃんは右腕を額の方に伸ばした形で動かず、顔色も悪かったため「死後硬直していると思った」と話した。さらに木村被告に対し、「正直に話してほしい」と訴える場面もあった。

その後、小児救急医療の専門医で北九州市立八幡病院長の市川光太郎医師の証人尋問が行われ、「(愛美利ちゃんは)死亡推定時刻の12時間前には意識がもうろうとしていたはず。誰が見ても医療措置が必要だと気付く状態だった」と指摘した。

http://mainichi.jp/articles/20160608/ddl/k09/040/342000c

司法解剖によると、被害者の死亡推定時刻は26日の午前4時頃でした。亡くなる12時間前、25日の夕方には重度の脱水症状で意識が朦朧としていたと推測されます。

保育施設の夕方は預け入れ・お迎えで忙しい時間帯です。異変を生じる前からワイシャツで縛りつけて放置し、慌ただしい夕方で誰も気づかず、明け方になってようやく異変に気づいたのではないでしょうか。

なお、証拠隠滅に、死後硬直状態にある被害者にシャワーを掛けたとも証言しています。

死後硬直するまで気づかないとは、そもそも被害者の存在を誰もが忘れていた様に感じられます。大切な子どもではなく、あたかも物の様に扱われていたかもしれません。

被告人質問

また、本日(3日目)に被告人質問が行われました。木村被告は「被害者は普段と変わりなかった」「保育士として結果に落ち度があった」と述べました。

「愛美利ちゃんは普段と変わりなかった」

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8日の被告人質問で木村被告は、遺族に謝罪の言葉を述べ、「真実を述べていきたいと思います」と話した。そのうえで、「保育士として結果に落ち度があったと思うが、愛美利ちゃんは普段と変わりがなかった」と述べ、改めて、保護責任者遺棄致死の罪について否認した。

http://www.ytv.co.jp/press/mainnews/TI20211220.html

「普段と変わりなかった」と本当に認識したのは、果たしていつの時点の事だったのでしょうか。被害者が亡くなるより相当以前の時間か、もしくは本当に異変に気づかなかったのでしょうか。

暴行罪と保護責任者遺棄致死罪

被告人は暴行罪は認める一方、保護責任者遺棄致死の罪は否認しています。暴行罪と保護責任者遺棄致死罪は法定刑が大きく異なります。

暴行罪は「二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」(刑法208条)とされています。一方、保護責任者遺棄致死罪は「十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」(刑法219条、同204条)とされています。

公判は明日9日も行われ、判決は15日に言い渡される予定です。

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