(園児が抜け出した可能性がある木立(現在は最も疎らに)、グーグルストリートビューより)

広島市立小河内保育園で園児が抜け出した可能性が強い「生け垣の隙間」につき、保育園の認識が明らかになってきました。

隙間を確認した3年前にネットを張ったのですが、それ以外の3箇所にも園児が抜け出せる可能性がある隙間が確認されました。

 市によると、園の職員が2019年6月に生け垣に隙間があることに気づき、園児が外に出る危険性があることから内側にネットを張った。男児の死亡を受けて改めて確認したところ、園舎の隙間など3カ所も園児が通る可能性があると判断し、新たにネットを張ったという。

 こうした隙間について、園長は「網目の細かいネットを生け垣の幹にくくりつけていたので不備はないと思った」「子どもが乗り越えるとは想定していなかった」などと市に説明したという。

https://digital.asahi.com/articles/ASQ4P6RD9Q4PPITB00H.html

園長の認識が余りに甘すぎます。子供はネットが大好きです。運動会での障害物競走の如く、ネットをかいくぐったり隙間を広げようとしてます。

目撃した保育士はその都度「ネットには触らない様にね」と優しく伝えているでしょうが、常に見ているわけにはいきません。子供が何度も触る内にネットは劣化し、その機能を弱めていきます。ボールなどが敷地外に飛び出してしまう事もあったでしょう。

そもそも生け垣に隙間があると認識したならば、行うべき対応は「生け垣の植栽密度を増す」「フェンス等を設置する」でした。園長は網目の細かいネットを括り付けて満足しているならば、子供の日々の活動や習性等を正しく認識できていませんでした。

隙間の存在は多くの保護者も認識していた筈です。送迎で生け垣の前を通過する度に園内の様子が見えてしまいます。中には保育園に「隙間が心配だ」と伝えた方もいる筈です。しかし、園は「ネットで十分だ」と判断していたのでしょう。

生け垣の隙間を軽視した園長は、隙間の存在を広島市に報告していませんでした。しかも、同園には計3箇所の隙間が存在していました。

園庭の生け垣などには複数の隙間があったが、園の安全点検では不備として市に報告されていなかったという。

ただ、広島市役所の担当部局は定期的な実地検査等は行っていなかったのでしょうか。経験ある担当者が見れば、隙間の存在と対策不備には容易に気づけます。わざわざ市の担当者が公立保育園を検査する必要は無いと判断していたら残念です。

保護者会では対策の不備や初動の遅れを指摘する声が相次ぎました。

男性(43)は取材に「いつまでにどうするんだ、と怒っている人もいた。保育士が園児全員をずっと見るのは不可能だ」。別の保護者は「フェンスがなければ、また外に出てしまう園児がいるのではないか」と話した。

 4月に子どもが入園したばかりの20代の男性は「対応した保育士はやるべきことをしたと思うが、保護者や警察への連絡などマニュアルが適切だったのか」と話した。息子が男児と同じクラスだったという女性は「いなくなったことを早く教えてほしかった。私たちも捜せたかもしれない」と声を詰まらせた。

私も全く同感です。以前の投稿で指摘した通りです。

【広島5歳園児溺死】保育園の木立から抜け出し? 園外捜索の開始時間は?(時系列)

問題の原因は保育士の過失ではなく、施設の不備にあります。定期的に点検し、適切な対策を行うのは管理職や設置主体たる広島市の責任です。

園児の姿が見えなくなった後の対応も遅かったです。警察に通報したのは不在から1時間後であり、どう考えても遅すぎます。事故発生時に園長が保育園に出勤していたとの話は出ておらず、初動の遅れに繋がった可能性は否定できません(常時出勤すべき、という話ではありません)。

土曜日なので自宅で過ごしている保護者もいます。緊急メール等で助けを求める事もできました(相当の覚悟が必要ですが)。職員と共に早期の園外捜索に踏み切れていたらと思うと、本当に悔やまれます。

園児の命が懸かっているので、多くの保護者は血眼になって協力します。映画「となりのトトロ」で抜け出した妹を探す、姉や近隣住民の姿を思い出しました。