今春に行われたオンライン授業に際して、ある学校長が「混乱した」とする提言書を市長に提出すると共に、その内容が朝日新聞に掲載されました。
問題は文部科学大臣の耳にも入り、大臣が「現場の先生が首長に意見をおっしゃることは決して悪いことだと思いません。ただ、大阪市は考えた上での結果だと思う。やってみて不具合があったという報告だとすれば、耳を傾けて改善したらどうですかね」と発言するに至りました。
校長に対する処分が発表されました。
大阪市教委、松井市長宛ての苦言拡散で校長訓告…オンライン学習を批判
大阪市教育委員会は20日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言中の4~5月、市立小中学校で実施したオンライン学習について、松井一郎市長宛てに苦言を呈する文書を知人に提供し、市教委の対応に不安を生じさせたとして、市立小学校の男性校長(59)を文書訓告とした。
発表などによると、校長は5月中旬、松井市長と教育長宛てに文書を送付。市長の要請で実施したオンライン学習は通信環境の整備が不十分なまま導入され、「学校現場は混乱を極めた」などと批判し、文書を外部に提供したことでインターネットなどを通じて拡散させたとしている。
オンライン学習は約1か月間実施したが、通信トラブルが頻発するなどし、授業に遅れが出た学校も多かった。市教委の担当者は「教育行政の不安をあおるような発言や行為で信用を傷つけた」と説明している。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20210820-OYO1T50034/
大阪に3度目の緊急事態宣言が出された際、環境が整わないまま進めたオンライン学習で学校現場は混乱したとする文書を大阪市の松井市長に実名で提出した市立小学校の校長について、大阪市教育委員会は20日付けで文書訓告の処分としました。
文書訓告を受けたのは、市立木川南小学校の久保敬 校長で、3度目の緊急事態宣言が出されていたことし5月、市が方針を示したすべての学校でのオンライン学習について、「通信環境の整備など十分に練られることのないまま場当たり的な計画で進められており、学校現場は混乱している」などとした市の教育行政への提言書を松井市長あてに実名で提出していました。
処分の理由について、大阪市教育委員会は、独自の意見に基づく内容で子どもの安心・安全に関する教育委員会の対応に懸念を生じさせたなどとしています。
久保校長は「他にも方法はあったかもしれないが、現場の声が届いていないと思って提言をした。自分の行動が懸念を生じさせたとは思わない」と話しています。
詳しい内容は大阪市ウェブサイトに掲載されています。
令和3年4月、大阪府における新型コロナウイルス感染者数の急増に伴って医療体制が非常にひっ迫するとともに、本市の児童生徒の感染者数も飛躍的に増加し、変異株が子どもたちにどう影響するか分からない状況にある中、危機管理的な判断として、教育委員会で具体的な対応を決定し、各学校へ通知し、各学校で対応を進めておりました。そうした中、本市が進める教育施策・教育行政の内容や緊急事態宣言中の学校運営等に対して、大阪市立小学校長から提言が提出されました。
教育委員会としては、よりよい教育行政の実現のため、学校現場からの声を聞くことは重要なことであると考えておりますが、今回の提言については、他校の状況等を斟酌せず、独自の意見だけをもって本市の学校現場全体がそうだと断じるなどの内容となっており、そうした提言を拡散させたことについて、次のとおり、令和3年8月20日付けで当該小学校長に文書訓告を行いました。
処分を受けたのは、大阪市立木川南小学校の久保敬校長です。4月下旬から行われたオンライン授業に対し、「学校現場は混乱を極めた」等とした提言を公表しました。
主な処分理由は「他校の状況等を斟酌せず、独自の意見だけをもって本市の学校現場全体がそうだと断じる」「提言を拡散させた」「子どもの安心・安全に関する教育委員会の対応に懸念を生じさせた。」とされています。
「他校の状況等を斟酌せず」とありますが、他校でも混乱した旨は多数報道されています。
学校長や保護者からも不満が噴出しています。
大阪市の学校現場の大半で同様の混乱や不満の声が出ていました。「全体がそうだと断じる」という部分からは、市教委の苦しい言い訳を感じました。仮に全体がそうではなかったのであれば、市教委がその旨を説明すべきです。
「提言を拡散させた」という処分理由は理解できる面もあります。ただ、校長先生は3回に渡って「大阪市民の声」にメールで意見を伝えても返事がなく、やむを得ずに提言を拡散させたそうです。
市や市教委が適切に対応していれば、こうした事態は起こりませんでした。
「子どもの安心・安全に関する教育委員会の対応に懸念を生じさせた。」という理由は理解不能です。懸念を生じさせたのは提言書ではなく、市教委や市長の対応が余りに杜撰だったからです。
突然のオンライン授業導入はやむを得ないとしても、給食と併用したり双方向授業が週1回しか出来ないのは子育て世帯を馬鹿にした話でした。感染対策も学習機会の確保もできませんでした。「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。
私自身はオンライン授業も一つの対策だと考えています。ただ、多くのデメリットがあります。保護者の負担も極めて大きいです。。昨年の4月~6月や今年の4月は死にそうな思いをしました(今も夏休みで苦しんでいます)。
一斉休校やオンライン授業の導入を訴えるのは簡単です。問題は、それに伴う様々な問題や障壁にどうやって対応するかです。
今回の処分内容は「文書訓告」でした。松井市長は「イヤなら辞めろ」と辞職を迫り、大阪市会では減給や戒告と言った処分が取りざたされていました。それと比べると、今回の処分は軽く感じました。
あくまで推測となりますが、教員出身者が殆どを占める市教委では校長の発言に同情的な雰囲気もあったのでしょう。振り上げた拳の降ろし所を丁寧に探ったと感じました。
松井市長は8月14日~22日まで夏休み!
大阪市立小中学校は来週から2学期が始まります。通常授業で再開するか、夏休みを延長するか、オンライン授業へ移行するか、現時点では発表はありません。
松井市長が市教委と検討していると思い、公務予定表を見てみました。唖然としました。長い夏休みの真っ最中でした。
https://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000329708.html
大阪市のコロナ本部会議が行われたのは4月が最後です。
休み明けの23日にどんな発言をするか、本当に心配です。本処分に関する質問もあるでしょう。
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(追記)
朝日新聞も松井市長が登庁していない旨を指摘しています。
久保校長は「他校の状況を知らなかったわけではなく、私も(オンラインでの)双方向通信学習の練習をするなど対応に苦慮した校長の一人。みなさんが不安に思っていたことを私が意見したと思っている」と話した。
松井市長は20日、「公務日程なし」として登庁していない。朝日新聞は市教委を通じコメントを求めたが、担当者は「市長が次に登庁した時に確認してほしい」と話した。松井市長は5月20日、久保校長について報道陣に「ルールに従えないなら、組織を出るべきだと思う」などと述べ、6月2日には「ルールを破れば処分の対象」と述べた。その一方で「校長の文章に対して、一般的に違うというところについては否定しただけで、彼を処分するなんて一言も言っておりません」とも話していた。
校長間の横の連絡も当然に行っているでしょう。それを踏まえての発言・提言でした。もしも他校がオンライン授業に全く困っていなければ、こうした提言も挙げられません。