第7回大阪市待機児童解消特別チーム会議を受け、新たな待機児童対策が動き出しました。

(1)保育所入所枠1歳児に重点、(2)期間限定で1-2歳児受入れ、(3)空き枠検索サービス開始へが主な内容です。

保育所入所枠1歳児に重点的に

大阪市の吉村市長は、来年4月に市内の待機児童をゼロにするため、保育所の入所枠を1歳児に重点的に振り分ける方針を示しました。
大阪市では、先月1日の時点で、24の区のうち16の区
では待機児童がゼロになったものの、▽最も多い淀川区で26人、▽次に多い城東区で14人などあわせて67人の待機児童がいます。
このため、吉村市長は、先週の記者会見で、来年4月に待機児童をゼロにするという目標を新たに掲げる考えを示しました。
こうした中、大阪市役所では14日、吉村市長や待機児童の多い区の区長らが出席して、対策を検討する会議を開きました。
この中で、吉村市長は、「来年4月に待機児童を解消するためには、1歳児をターゲットにした対策を実施することが大切だ」と述べ4歳児や5歳児の受け入れが少ないために入所枠が残っている保育所を洗い出し、その入所枠を1歳児に重点的に振り分ける方針を示しました。

http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20180514/4604831.html

大阪市内の待機児童・入所保留児童には、年齢毎の偏りが生じています。待機児童数(区別・年齢別)によると、0歳児9人・1歳児37人・2歳児12人・3歳児8人・4歳児1人・合計67人となっています。

しかし、待機児童数は保育所へ入所できなかった児童・家庭の実態を反映していません。というのは、入所が決まらなかった児童の内、特定保育所希望・転所希望・育休中・求職活動休止中等である家庭が除外されているからです。

実態に近いのは「保留児童」でしょう。新規利用申込数及び新規利用児童数(区別・年齢別)から算出しました。


(保留児童が多い3区を黄色で表示)

年齢別で最も保留児童数が多かったのは、1歳児の1,306人でした。次いで2歳児が546人、0歳児が398人となっています。

0歳児4月入所できない年度後半生まれの児童等、1歳児は多くの希望者が申し込みます。これに対し、募集枠は決して十分とは言えません。中には1歳児募集を殆ど行わない保育所もあります。

こうした状況を鑑みると、吉村市長が「1歳児をターゲットにした対策を実施することが大切だ」と指摘したのは正論です。遅すぎたぐらいです。

なお、保留児童数が多かったのは淀川区232人・東淀川区183人・北区174人でした。

淀川区・東淀川区は保育需要が高まっているのに対して新たな保育所等が積極的に整備されず、多くの児童が入所できませんでした。

また、北区はタワーマンション等の開発が非常に引き続いて盛んである事に加え、東部地域の保育所新設が4月に間に合わなかった事が影響していると推測されます。

実はこの3区にお住まいの方からは、非常に多くのメールを頂いていました(逆に西区の方からは例年より少なかったです)。納得しうる結果です。

対策の一つとして検討されているのは「1~2歳児を期間限定受け入れ」です。

 大阪市は14日、待機児童の解消に向けて、新設の認可保育施設を対象に、1~2歳児を最大2年間限定で受け入れる「期間限定保育」の制度を導入する方針を明らかにした。市の待機児童数は4月時点で67人だが、1~2歳児が半数以上を占めるといい、対策が急務となっている。

待機児童の解消に向けた特別チームの会議が同日、開催され、方針を決定した。期間限定保育は、待機児童が少ない4~5歳児クラスの教室の空きスペースを利用し、1~2歳児を最大2年間限定で受け入れる。保育士数や施設の状況などを調べたうえで、早ければ今年度中に導入する予定。すでに東京都文京区や仙台市など一部の自治体で導入されているという。
https://www.sankei.com/west/news/180515/wst1805150031-n1.html

具体的には新設保育所を念頭に考えているでしょう。新たに保育所を開所しても4-5歳児の申込者が非常に少なくなっています。既に他の保育所・幼稚園へ通っている児童が大半である為です。

その為、新設保育所の4-5歳児保育室・保育士はやや余剰感があります。開所当初は4-5歳児の募集を行わない新設保育所もあります。こうした保育室・保育士を活用する考えでしょう。

課題はあります。「期間後はどうするか?」です。小規模保育の卒園児と同じ様に、期間限定後は加点を付けて転所を促すのでしょうか。

また、同じ保育所に期間限定児童と無限定児童が混在すると、児童や保護者の間で溝が生じてしまわないでしょうか。同じ1歳児でも○○君は小学校入学前まで在園できる、××ちゃんは2年間だけしか在籍できないとは、非常に残酷です。

保護者が願っているのは、こうしたイレギュラーな仕組みではありません。小学校入学まで過ごせる保育所の新設です。特に保留児童が多かった淀川区・東淀川区・北区では切実でしょう。

1-2歳児対策とは別として、年度途中入所枠を探しやすいサービスを開始するそうです。

大阪市、保育所の空き枠検索できるサービス開始へ

「待機児童0」を目指している大阪市は、対策の1つとしてホームページ上で条件に合った保育所の空き枠を検索できるサービスなどを始めると発表しました。(中略)

14日の会議で、大阪市はどの保育所に入所枠があるのかをわかりやすくするため、ホームページ上でリアルタイムで検索できる機能を設けることを明らかにしました。また、待機児童が多い1歳児への対策として、利用者数の少ない4、5歳児の保育室を活用して、期間限定で受け入れると発表しました。

https://www.mbs.jp/news/kansainews/20180514/GE000000000000022568.shtml

各施設の空き情報は、大阪市内保育施設等の空き情報についてに掲載されています。また、地図情報を利用した空き情報もあります。

ただ、空き情報として表示されているのは、毎月行われている年度途中入所審査を終えた後の募集数です。退所者と入れ替わる形で入所者が決まった場合は、数字に表れてきません。

また、当ウェブサイトでは一斉入所での年齢別募集数・申込数・入所最低点等を記載した大阪市子育て支援施設マップ子育て支援施設データベースを公開しています。

しかし、これらには検索機能はありませんでした。たとえば「自宅から2km以内で1歳児募集枠がある保育所」を調べたくても、一覧表や地図を頼りに一つずつ調べていくしかありません。

大阪市内に土地勘がある方なら容易ですが、外部から転入してきた方にとっては難しい作業です。

各保育所等・年齢別の空き情報は、ウェブサイト上にCSV形式でアップロードされています。ウェブサイト上で動くデータベースでCSVファイルを読み込み、選択された条件に応じて表示する形を取るのでしょう。

既にICT戦略室が作成しており、秋頃から運用を開始する予定だそうです。


ベータテストとして先行公開し、徐々に完成させていく考え方もあるでしょう。

また、以前に「育休延長・給付金のために入園の意思ない保育利用申請が行われているのではないか」と指摘しました。

【朝日新聞より・3/31修正】育休延長・給付金のため… 入園の意思ない保育利用申請

大阪市は国へ改善を要望するそうです。

会議では、今の国の制度では、育児休業を延長するためには、保育所に入所できなかったことを示す証明書を会社などに提出する必要があることから育児休業を延長する目的で、入所を申し込む場合があることが報告されました。
これについて、吉村市長は、記者団に対し、「制度上の欠陥なので、改善を要請したい」と述べ、今月中に国に対し、制度の改正を求める考えを示しました。

http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20180514/4604832.html

国レベルで改善されれば、多くの自治体や延長希望者が喜ぶ結果となるでしょう。無駄な作業は出来るだけ減らしたいものです。