今年4月から、大阪市は認可外保育施設へ通う4-5歳児も教育費無償化の対象とする制度を始めています。
しかし、全ての4-5歳児が対象となるわけではありません。(1)利用保留児童、(2)一定の教育の質が認められた認可外保育施設へ通っている、いずれかの条件を満たす必要があります。
制度が導入されているにも関わらず、実は(2)の基準は定まっていませんでした。基準策定へ向けてようやく動き出しました。
「幼児教育の無償化」の認可外保育施設への拡充にかかる有識者会議を設置します
大阪市では、生涯にわたり自己実現をめざし、社会の一員として生きていくための道徳心・社会性、知性や体力の基礎を培う乳幼児期の教育の重要性に鑑み、すべてのこどもが家庭の経済状況にかかわらず、質の高い教育を受けることができるよう、幼児教育の無償化の実現に向け取り組んでいます。
平成28年度から幼稚園、保育所等に通う5歳児を対象に開始しましたが、平成29年度より対象年齢を4歳に拡大するとともに、認可外保育施設に通うこどもについて一定の要件を満たす場合、保育料(利用料)の補助を行います。
認可外保育施設に通うこどもについては、「①認可保育所等への入所を申し込んでいたが利用保留となり、やむを得ず認可外保育施設を利用しているこども」と「②一定の教育の質が認められた認可外保育施設を利用しているこども」が幼児教育の無償化の対象になります。
今般、②にある「一定の教育の質が認められた認可外保育施設」について、公募により施設を募集し選定することとなり、その選定を行う有識者会議を設置します。
有識者会議構成メンバー
幼児教育・保育分野の学識経験者、弁護士等http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000404030.html
教育の質・証明書・申請が必要
「教育の質」と言われてもピンときません。制度導入時の報道発表資料では「保育所保育指針等に準拠した一定の教育の質」とされています。
保育所保育指針は平成30年度からの適用に向けた改正内容が発表されたばかりです。保育の内容・健康及び安全・子育て支援・職員の資質向上に関する基本原則が記されています。
吉村市長が基準策定の意図を説明しています。教育の質に加え、安全性も重視するそうです。
「教育の質に加え、子供が安全に通える場所であることが大事だ」と強調。国が定める基準に上乗せする形で、アレルギー対応などに配慮した保育・教育を行っているかを重視する方針で、「教育・保育全体の質や安全性の底上げにつながるように誘導していくのが狙いだ」と述べた。
http://www.sankei.com/west/news/170629/wst1706290088-n2.html
安全面については、少なくとも「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書等が交付されている」施設を対象とするのでしょう。制度導入時の報道発表資料でも触れられています。
大阪市は認可外保育施設へ立入調査を行った結果を公表しています。証明書の有無は「基準を満たす証明書発行」欄に記載されています。
8割程度の施設へ証明書が交付されている様子です。
証明書を有して一定の教育の質が保たれている施設が申請し、審議会で認められると教育費無償化の対象施設となります。長い道のりです。
保護者が最重視するポイントに、審査基準に要注目
どれだけの施設が申請するかは分かりません。一方、保護者サイドとしては「4-5歳児の認可外保育料が半額になる」というのは大きな魅力です。
また、対象施設は一定の安全性・教育の質を有していると大阪市が認めた施設です。玉石が混合する認可外保育施設の中で、これほど強い「お墨付き」はありません。保護者が最も重視するポイントとなるでしょう。
懸念されるのは「一定の教育の質をどう判断するか」という線引き、つまり審査基準です。
たとえば「安部首相ガンバレ」「五箇条の御誓文」で話題となった、塚本幼稚園の様な教育を行っている施設はどう判断するのでしょうか。
おかしな施設を選定してしまうと大変です。「大阪市がおかしな教育を荷担・推奨している」とバカにされかねません。選定に当たっては、実地調査・利用者からの意見も重要でしょう。
また、事後的な監査制度も重要です。申請時だけ大人しくして、認められた後は好き勝手にされたら大変です。
対象施設を選定する有識者会議は来月7月に設置されるそうです。有識者の意見のみで決めるのではなく、子育て世帯からの意見も募るべきでしょう。妥当な審査基準の策定が待たれます。
対象施設へ通っている児童への補助金は、来年3月頃に支給されるそうです。1年分がバックデートされます。制度導入が先走ってしまった、という印象を受けました。