大阪市の平成29年度予算案が公表されました。子育て支援を重点政策に掲げている吉村市長は、新年度予算でも引き続いて重点投資を行おうとしています。

予算規模が大きくかつ子育て世帯に大きな影響が生じるのは、(1)保育所等の大規模新設、(2)教育費無償化を4歳児に拡大、(3)を認可外保育施設に通う4-5歳児も教育費無償化対象とする、という項目でしょう。

今回は「(2)教育費無償化を4歳児に拡大」を取り上げます。

大阪市は平成28年4月から幼稚園保育料、及び保育所保育料(教育費相当分)の無償化を実施しています。

【大阪市会】5歳児教育費無償化を含んだH28予算案が本会議で可決されました

平成29年度予算案はこれを4歳児まで拡大すると同時に、認可外保育施設へ通う4-5歳児の一部も対象とする内容となっています。

報道発表資料 4歳児からの幼児教育の無償化を図ります

○無償化の内容については、平成28年度と同じ
・世帯の所得等に応じて設定されている保育料について、
幼稚園等保育料(1号認定)は、世帯の所得等に関係なく保育料を無料
保育所等保育料(2号認定)は、世帯の所得等に応じた教育費相当額を無料
・新制度に移行していない私立幼稚園等は、世帯の所得等に関係なく、308,000 円を上限に、支払った保育料等に対して、就園奨励費を助成
・児童発達支援事業所では個々の障がいの特性に応じて、就学前期間に療育を行い、幼稚園・保育所等と同様の支援を実施しているため、世帯の所得等に関係なく利用者負担を無料

http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/seisakukikakushitsu/0000388599.html

4歳児の保育所保育料は最大13,700円か

4歳児教育費無償化の具体的な内容は、5歳児と同一と考えられます。

これを当てはめると、幼稚園保育料は無料(旧制度の園は就園奨励費で308,000円まで補助)となるでしょう。また、保育所保育料は所得に応じて最大13,700円となりそうです。

保育所・認定こども園(保育認定)・地域型保育事業の保育料について

分かりやすく表すと、幼稚園保育料は無料、保育所保育料は約半額となります。子育て世帯(特に所得が高い世帯)にとっては負担が大きく軽減されるでしょう。

高所得世帯ほどメリット大

4-5歳児の教育費無償化には大きな問題があります。高所得世帯ほど大きいという点です。

保育料・幼稚園の就園奨励費は応能負担となっており、所得が高いほど自己負担額が大きくなる仕組みです。反面、生活保護世帯等の自己負担額はゼロとなっています。

教育費が無償化されると、高額の保育料等を支払っていた世帯に大きな経済的メリットがあります。一方、低額の保育料等しか払っていなかった低所得世帯・生活保護世帯にはメリットがありません。

教育費無償化は、親の所得格差が子供の教育格差を更に広げる副作用を有しています。無視できない問題です。

子供への投資を重視するのであれば、むしろ殆どの子供が通う保育所・幼稚園・小中学校等における教育の充実に充てるべきでしょう。

職員の待遇向上・研修の充実・施設や整備の更新・不足している地域での新規開設等、用途はいくらでも思いつきます。

教育費無償化は金銭を家庭へ還元し、その使途を家庭に委ねるとも言えます。所得が高い家庭ではお稽古事等に費やせる反面、所得が低い家庭では難しいでしょう。

また、高所得世帯ほど大きなメリットがあるという事は、こうした世帯に選ばれやすい市中心部(西区・中央区・北区・天王寺区等)へ子育て世帯が集中する効果もあるでしょう。

この様な地域は急激に子供が増えており、保育所等や小中学校の不足感が著しく強くなっています。高所得世帯に傾斜した無償化施策は、教育環境の悪化に繋がりかねません。