大阪市の待機児童は、多くが市中心部で生じています。大きな理由の一つは、タワーマンション・大規模マンション等の新設です。多くの子育て世帯が転入し、周囲の保育所等へ殺到しています。

これに対し、大阪市は「マンション内に保育施設を設置する」「マンション入居者が優先的に入所できる」という制度を導入します。

一室あたり35平方メートルを超え、70戸以上の大規模マンションを建設する際は、保育所整備について、施工主と市が事前協議しなければならない制度や、マンション内で保育所を設置した場合にマンション住民が優先的に入所できる制度を新たに設ける。

http://www.sankei.com/west/news/180215/wst1802150078-n1.html

過去の投稿で触れた事があります。

「大規模マンション建設における保育施設等の整備協議等に関する条例案の骨子」についてパブコメが実施されます

【大阪市会】マンション住民優先入所制度をH30.4.1から実施したい意向

事前協議に関する条例は今年4月から施行されます。

大規模マンション建設時に保育施設等整備の事前協議を義務付ける条例を平成30年4月1日から施行します
http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000420710.html

これには大阪市が保育施設の設置を要請する、もしくは業者が自主的に保育施設を設置した場合、マンションの入居者が「優先入所」できる制度が盛り込まれています。

詳細を定める事務取扱要綱に対するパブコメが、本日から実施されています。

 大規模マンションが建設され住民が入居する際には、その地域の保育ニーズが急増し、待機児童が発生する可能性が高くなりますが、大規模マンションの建設と同時に当該マンション内に保育所等が整備されれば、その地域の待機児童の発生を防止・抑制することができると考えられます。
 このため、大阪市内での待機児童の発生状況等を踏まえ、大規模マンションの建設時に当該マンション内に保育所等を整備するようマンション事業者に促すことを目的に、大規模マンションの住民については、当該マンション内に整備される保育所等の利用について優先的な利用調整を行うよう要綱を定めるため、市民から幅広く意見を募集します。

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/kisoku_boshu/kodomo/0000425946.html

要綱案から重要な部分を抜粋します。

(優先的な利用調整の対象となる大規模マンション)
第4条
優先的な利用調整の対象となる大規模マンションは、次の各号のいずれかに該当する大規模マンションとする。
(1)条例第7条第1項の規定による協力の要請の対象となった大規模マンション
(2)事業者が、条例第5条の規定による届出において大規模マンション内に保育施設等を設置することを届け出たことにより、条例第7条第1項の規定による協力の要請を行う必要がないと市長が認めた大規模マンション

制定過程では「大阪市が保育施設の設置を要請したマンションに限るか否か」という点が論点になっていました。要綱案では「事業者から保育施設を設置すると届けた事により、協力要請が不要となったマンション」も含まれています。

全てのマンションが自動的に対象となるものではないものの、多くが対象となるのではないでしょうか。

(優先的な利用調整の対象となる保育施設等)
第5条
優先的な利用調整の対象となる保育施設等は、前条の規定による大規模マンション内に設置される保育施設等であって、次の各号のいずれにも該当する保育施設等とする。
(略)
(2)入居の開始が可能となる日から起算して1年以内に設置された保育施設等
(略)

入居開始日から1年以内に設置された保育施設に限られています。

(優先的な利用調整の対象となる児童)
第6条
優先的な利用調整の対象とする児童は、優先的な利用調整の対象となる保育施設等が設置された大規模マンションに、利用開始希望日において居住する児童とする。

優先入所を希望する児童は、利用開始日にマンションに居住していなければなりません。優先入所後の転入は認められていません。

(調整方法)
第7条
優先的な利用調整は、次の各号に定めるところにより行う。
(1)第6条に該当する児童であって、当該児童に係る利用申請において当該児童が居住する大規模マンション内に設置された保育施設等を第1希望とする場合は、当該保育施設等に限り最優先で利用調整を行う。ただし利用調整要綱第7条各号(※連携施設へ入所する小規模保育の卒園児等)に該当する児童に係る利用申請において、当該大規模マンション内に設置された保育施設等が希望されている場合を除く。
(2)前号に規定する児童の数が、当該保育施設等における児童の受入可能数を超える場合は、利用調整要綱別表に規定する保育利用調整基準に基づき利用調整を行う。
2前項に規定する利用調整を行ってもなお、当該保育施設等において児童の受入が可能である場合は、区保健福祉センター所長は、利用調整要綱に基づき当該大規模マンションに居住する児童以外の児童を利用調整する。

利用調整は連携施設へ入所する小規模保育等の卒園児等→マンション内児童→それ以外の児童、という順序で行われます。

(期間)
第8条
優先的な利用調整は、保育施設等の設置日から起算して3年以内の利用開始に係る利用調整について行う。

優先入所が行われるのは「設置日から3年以内」に限られています。それ以降は通常の保育施設と同じ調整が行われます。

マンション入居者の優先入所制度は、非入居者からの不公平感を如何に拭えるかという点が重要だったと推測しています。期間を「3年限定」と絞ったのはその現れかもしれません。

本制度で恐れているのは、マンション内保育施設が整備された事により、その地域の保育所新設が滞ってしまう点です。

大阪市の保育所新設は、各地域毎に設置予定数を定めて公募を行っています。マンション内保育施設は設置予定数の枠外とし、当該地域の保育所整備にブレーキが掛からない様にして欲しいです。

パブコメは3月20日まで受付中

本事務要綱に対するパブコメは、2018年2月19日~2018年3月20日まで受け付けています。意見等がある方は、是非こちらのページから大阪市へお送り下さい。