平成30年度の大阪市予算案が発表されました。
大阪市の吉村市長は、保育所の整備など子育て支援策に重点を置いた一般会計総額1兆7700億円余りとなる新年度・平成30年度の当初予算案を発表しました。
大阪市の新年度の当初予算案は、一般会計総額がおよそ1兆7771億円で、前の年度に比べて145億円余り増えました。
具体的には、▽待機児童解消に向けた保育所の整備などに85億4800万円、▽4歳児と5歳児の教育費無償化を行うために57億1000万円を計上するなど、子育て支援策に重点を置いています。
また、子どもの貧困対策に7億800万円を計上し、▽生活に困窮する世帯の小中学生への学習支援を拡大するほか、▽若いひとり親に対する支援は、結婚したあとも続けるなどとしています。
一方、市営地下鉄の今里筋線の延伸区間などで予定しているBRT=バス高速輸送システムの社会実験は、地下鉄民営化後に大阪市が行うことになっていて、その準備に23億6800万円をあてています。
吉村市長は記者会見で「大阪の発展のためには子どもと現役世代が元気でなければならない。今回の予算は『子どもの環境充実予算』だ。子育てや教育の環境に力を入れた内容だ」と述べました。
予算案の詳しい内容は大阪市ウェブサイトに掲載されています。子育て支援に関する施策は、下記のPDFファイルにまとめられています。
待機児童対策
強調されているのは待機児童対策です。平成29年度中には約4700人分の入所枠を設定しました。平成30年度は、都心部を約4000人分の入所枠を設定する予定です。
待機児童対策に継続的に重点を置くのは、子育て世帯にとってありがたい方針です。
ただ、平成29年度中に行われた事業者募集は苦労した様子がうかがえます。最終的には第6次募集まで行っていました。保育士不足・土地の高騰等が影響したのでしょうか。
また、年度末に非常に大きな影響を及ぼしたのは、北区を中心とする開所延期です。一斉入所開始後に明の守保育園、そして1月には天満ちとせ保育園と豊崎ちとせ保育園の開所延期が発表されました。
これらの保育所への入所を申し込んでいた方に対し、極めて大きな影響が生じています。入所を諦めた方、転所が決まったが在園している保育施設を3月末で退所させられる方、きょうだいが別園に分かれざるを得ない方、復職時期がずれた方、様々な話を聞いています。
単なる工事遅延では済まされない話です。今後は開所延期が無い様に、仮に延期するとしても一斉入所の締切までにその旨を公表すべきです。
保育人材の確保
新年度は保育士等の確保に更にも力を入れる予定です。
予算案では保育補助者の賃上げ助成、清掃業務等の担当者の給与助成、ICT助成、宿舎借り上げ事業の対象者拡大、等を打ち出しています。
保育所の根幹は保育士です。多くの保育士が働きやすい環境を整える、また保育士が保育に集中できる環境を整えようとする姿勢は理想的でしょう。
こどもの貧困対策
大阪市が有する大きな問題の一つが「こどもの貧困」です。
様々な話を聞くと、地域・世帯によって経済力に大きな違いがあるのが見えてきました。お世話になっている保育所でも、会社経営者からシングルマザーまでいます。親の経済力に関係なく、必要十分な教育を受けられる制度が望まれます。
4-5歳児教育費相当額無償化により、4-5歳児を育てている世帯の経済的負担は大きく減少しました。しかしこれは、小学校入学前に大阪市外へ転出する動きを加速させかねません。
多くの子供が大阪で無事に育つには、どうすれば良いのでしょうか。地域の小中学校の話を聞く限り、教育環境に不安を感じるのは事実です。
小学校の新増設・統廃合
西区・北区・中央区等の小学校では、児童数が急増しています。これに対し、「小学校の高層化」によって対応する方針です。
都心回帰 中心部の3区 5階以上に高層化
大阪市教委は、高層マンション建設などで都心回帰が進み、大阪市中心部の北区、中央区、西区で児童が急増していることを受け、校舎を5階以上に高層化する方針を決めた。将来教室に転用できるように1階部分はピロティ(吹き抜け空間)にする。3区の8小学校で工事や設計を始める予定で、来年度当初予算案に関連事業費約15億円を盛り込む。
また、予算案には「もと扇町高校跡地や周辺市有地の活用等」と記載されています。中之島5丁目にある「もと扇町高校」跡地は、大阪市が一等地に有する数少ない土地です。この土地、もしくは周辺地と交換する事により、小学校(もしくは小中学校)の新設が検討されています。
ここに小中学校が建設されれば、北区中之島地区や西区西船場地区の教育環境は幾分好転するでしょう。早期着工が待たれます。
一方、生野区では小中学校の統廃合が検討されています。12小5中を4小4中へ再編する計画です。
大阪市内は中心部で児童が急増する一方、周縁部では児童が激減しています。狭い大阪市の中で、子育て世帯が集中する地域と急減する地域が混在しています。
こうした動きは更に加速するでしょう。