この3月に子供が保育所等を卒園し、4月からは小学校へ入学する家庭も多いでしょう。高く立ちはだかるのが「小1の壁」です。
「小1の壁」を改善する為、大阪市が実態調査を行う予定が明らかになりました。「今更遅すぎる」という指摘もあるでしょうが、私は「第一歩」と評価したいです。
子供が小学校に進学し、放課後に民間以外で適当な預け先がなくなるいわゆる「小1の壁」をめぐる現状や課題をデータで把握しようと、大阪市は平成30年度、小学1年の子供を持つ市内の親を対象とした一斉の実態調査を実施する。家庭と仕事の両立支援策につなげるのが狙い。共働き世帯の増加により、「小1の壁」の改善は急務で、市は数値化して状況を把握する。市によると、こうした実態調査は全国的にも珍しいという。
市によると今春、小学校に入学する市内の子供は約1万9千人と推計される。調査はアンケート方式で各小学校の協力を得て6月ごろ実施予定。現在の就労状況や子供の小学校入学をきっかけに変化したこと、働き続ける上での障壁、不安に思っていることなどを質問する。8月ごろに集計し、結果をまとめて分析する方針。30年度一般会計当初予算案に約300万円を計上した。
これまで転職や離職を余儀なくされた割合など「小1の壁」をめぐる詳細なデータはなく、担当者は「働く女性が抱える課題の改善につなげたい」としている。
(略)
大阪市では、市が補助金を出す学童保育の施設数は約100カ所あり、一部で午後7時半ごろまで子供を預かる。これに加え、放課後に小学校の空き教室を利用し、原則午後6時まで無料で子供を預かる事業も実施している。
特に働く女性にとって、立ちはだかる「小1の壁」。子供が小学校に進学し、ある程度遅くまで預かってくれる施設が少なくなることは、家庭と仕事の両立困難な事態に直結し、仕事を続ける上での大きなハードルとなっている。
「小1の壁」をめぐっては、多くの学童保育が保育所と比べて預けられる時間が短いほか、子供が小学生になると時短勤務制度を利用できなくなる企業があること、PTA活動や学校行事など親の負担が増えることなどが要因とされている。
また、自治体などが設置する学童保育ではなく、遅くまで預かってくれる民間の施設を利用する場合は多額の費用がかかり、家計への負担となる。
女性の就業率は出産、育児で仕事を辞める女性が多い30代に落ち込む「M字カーブ」を描いており、子供を安心して預けられる場所づくりを含めた充実した子育て支援策が各自治体で課題となっている。
http://www.sankei.com/west/news/180219/wst1802190052-n1.html
「小1の壁」については、様々なエピソードを聞きます。保育所を卒園した方からのエピソードには、笑えない話もあります。いくつかご紹介します。
小学校は平日行事が余りに多い
保育所での行事は、働く親のスケジュールに合わせて実施されています。平日日中に保護者参加を要望される行事は、原則として年1回(誕生会)しかありません。
しかし、小学校は平日日中であっても、当然の様に保護者参加を求める行事が行われているそうです。年数回の授業参観・個人面談・保護者会・地域との協力行事・奉仕活動等、かなりの頻度になると聞きます。
これにPTA役員等が重なったら、有給休暇の大半を使用せざるを得なさそうです。子供の為のPTA活動なのに、子供をほったらかしにしてしまう話もあるそうです。
学校公開という観点からか、小学校は「保護者に学校の様子を見て欲しい」という意向も有しているそうです。
しかし、学校で授業を行っているのは平日日中です(年数回は土曜授業あり)。となると、必然的に行事は平日日中に行わざるを得ません。
親のどちらかが専ら在宅している家庭であれば、こうした学校行事にも参加しやすいでしょう。多くの幼稚園出身家庭が当てはまりそうです。
しかし、保育所を利用して共働きをしている家庭では困難です。「学校行事」を理由として、平日日中においそれと休みづらいです。
混み合ういきいき
大阪市内の小学校には、児童いきいき放課後事業(いきいき)と呼ばれる場所・教室があります。大阪市が行っている学童保育です。
年間500円(保険代)で利用できる事から、多くの子供が登録して利用しているそうです。
小学生期における人間形成にとって大切な「一緒に遊びに熱中する」という体験を通して児童自身が主体的にたくましく生きる力をはぐくめるようにすることを目指しています。
対象児童 小学校1年生~6年生(当該校区に居住する全ての小学生が参加登録できます。)
開設日 平日の放課後、土曜日、長期休業日(夏休み・冬休み・春休み)
開設時間 月曜日~金曜日:授業終了後~18時
短縮授業日:13時~18時
始業式、終業式等:11時~18時
土曜日、長期休業日:8時30分~18時
一方、いきいき活動に利用されるのは、原則として「1教室」とされています。小規模校ならともかく、1学年3クラス以上もある中規模校以上では、教室が非常に混み合うと聞いています。
特に夏期休暇中等は大変だそうです。1教室に100人近い児童が集まり、どうにもならなくなったという話も聞きました。その後、図書館等を臨時使用して乗り切ったそうです。
また、いきいきの利用時間は原則として18時までとなっています(5人以上の希望者がいれば19時まで延長)。しかし、これを超える時間も利用したい場合は、民間学童を利用している家庭が多いそうです。
多くの保育所では19時まで開所しているでしょう。いきいきの開所時間で大丈夫か、それとも民間学童の利用も必要でしょうか。
なお、いきいきや民間学童に関する情報は、大阪市で働く親に役立つ地域密着情報 | (Lycka)リッカに詳しく掲載されています。
学校内の様子が見えない
保育所には保護者が毎日送迎しに行きます。お迎えの時には、その日の様子等を先生から聞く事も多いでしょう。また、帰り時間が一緒になった他の保護者とは、雑談をしながら情報交換をする機会もあります。
しかし、小学校は全く違うそうです。保育所と比べて、保護者が学校へ行く機会は限られています。その為、子供が学校でどうやって過ごしているかという情報が、なかなか入ってきません。
問題なく過ごしているなら良いです。しかし、何かしらの問題を起こしていて、それが保護者に聞こえてこないと悲惨です。何の前触れもなく同じクラスの保護者から電話が掛かってきて、「お宅はどういう教育をしているのか、子供が無茶苦茶しているぞ!」と怒鳴られた話も聞きました。
保育所と幼稚園の違い
大きく分けて、小学校には幼稚園から進学した児童と保育所から進学した児童がいます。
一般的には「幼稚園はしっかり勉強させている、保育所はのびのび生活させている」というイメージがあるかもしれません。エピソード通りか、入学直後は幼稚園出身者の方が学校生活や勉強に溶け込みやすいという話を聞きました。
しかし、徐々に子供達も混じり合い、だんだんと違いが見えにくくなってくるそうです。
一方、保護者は違います。昼食後に幼稚園へ迎えに行ける家庭と、共働きで夕方から夜に保育所へ迎えに行く家庭では、生活リズム等が全く違います。
笑えないエピソードを聞きました。クラスの親睦を図る為に幼稚園出身者が「保護者で交流会をしましょう」と提案したのですが、保育所家庭は全員が断ったそうです。
理由を訊ねたところ、「平日15時からスイーツを食べに行けるわけがない」との事でした。時間に対する認識が違ったそうです。
重要性が減少した行事・会合・組織等を廃止・縮小すべき
「小1の壁」という観点から考えると、やはり保護者が平日日中に小学校へ出向く用事を如何に減らすかが重要でしょう。
あくまで想像となりますが、小学校の考え方が専業主婦・パート世帯が多かった昭和のままで止まっているのかもしれません。
小学校や地域活動等へ振り向けられるマンパワーがある世帯は、徐々に減少しています。しかし、従来の考え方のままでマンパワーを確保しようとすると、どこかで無理が生じます。
中には十分なマンパワーを提供できる世帯もあるでしょう。しかし、こうした世帯は地域社会や学校で力を持っているケースも少なくないでしょう。共働きで参加しづらい世帯へ矛先が向くのは目に見えています。
PTAや地域活動も含め、保護者が参加すべき用件を重要な物に絞るのが重要です。単なる連絡調整であれば、LINE等を利用すれば十分でしょう。また、時代の変化によって、重要性が減少した行事・会合・組織等は廃止すべきです。
小学1年生に限らず、他の学年にもアンケートを取ると経年変化等も調べられるでしょう。アンケートの結果が非常に気になります。