保育園等の騒音・渋滞・マナーは首都圏だけでの問題ではありません。大阪市内や関西一円でも生じています。
自治体は対策に苦慮
保育所を巡るトラブルが全国で相次いでいる。大阪府内でも「子どもの声がうるさい」「親の送迎マナーが悪い」などの苦情が目立ち、住民の反対で建設が難航するケースも出ている。保育所は迷惑施設なのか-。現状を探った。
大阪市鶴見区の住宅街。真新しい保育所は遮音壁を張り巡らせた。陽光が差し込む窓はない。
「やむを得なかった」。市の担当者は声を落とす。住民の反対に遭ったが、騒音対策などを充実することで合意にこぎ着けた。
孫を通わせる女性(72)は「健全な成長の妨げにならないだろうか」と戸惑うが、近所の男性(78)は「静かな日常を守りたい気持ちも理解してほしい」と訴える。
http://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/compass2011/160522/20160522035.html (以下同じ)
鶴見区は保育所がやや不足している地域です。入所するのに市内中心部ほどの高い点数は必要ないものの、近隣等で母親が短時間働いている方による保育ニーズが強い様子です。
ここ数年の間に鶴見区内では3カ所の保育所が開所しています。工場跡地や駐車場からの転用による敷地が多く見受けられます。大阪市内で保育所を作る場合、大半の場合は住宅に接した場所に設置されます(例外はオフィスビル?)。その為、何らかの地域調整は避けられないでしょう。
鶴見区内のとある保育所は、一面の壁によって採光が遮られています。遮られるのは光だけではありません。風も通りません。園児が過ごす環境に影響が生じるのは本当に残念です。
窓ガラスによる採光&敷地境界に半透明の遮音壁を設置する方法も考えられたでしょう。しかし、建物が敷地境界付近にまで達している様子です。建設途中に地域からの反対等を受け、やむを得ず設計変更を行ったのかもしれません。
関西での騒音問題と言えば、東灘区のドクロマークが有名です。
豊中市では、4月に定員120人の保育所が開所する予定だった。しかし、周辺には小学生の通学路もあり、計画段階で住民から交通事故を心配する声が上がった。
市は地元説明会を開催したが、住民と折り合いがつかず、建設を断念。新たな受け皿の確保を急いでいる。
同市の待機児童数は昨年4月1日現在で253人。府内の市町村で最多だ。市こども政策課は「保育所を早急に整備しなければならないが、その土地に何十年も建つ施設であり、近隣に温かく受け入れてもらう必要もある」と苦悩を漏らす。
保護者のマナーも課題に浮かぶ。大阪市のある保育所前では、送迎の自転車で道がふさがることも。近所の女性(80)は「母親同士が道端で長時間おしゃべりしたり、ポイ捨てするのは控えてほしい」と注文を付ける。
(中略)
「理解を得るには住民との日頃の関係が大切」。大阪市こども青年局の担当者は説く。市内の保育所では、町内会や老人会と交流したり、園庭を住民に開放するなど、地域に溶け込む努力を重ねているという。
府内の自治体は住民との話し合いも続けている。合意形成したケースでは、遮音フェンスの設置や園庭位置の変更、送迎の道路を限定するといった対策を実施。大阪市などは車での送迎を原則禁止している。
ただ、外遊びの時間まで制限している保育所もあり、園長は「住民とどう合意点を見いだすか難しい問題」と顔を曇らせる。
トラブルを未然に防ごうと、府は近隣対策の手引を年内に作成する方針だ。騒音の基礎知識をはじめ、住民と良好な関係を築いた保育所の事例、設計面のアドバイスなどを盛り込み、府内全ての保育施設に配布する。
府の担当者は「いろんな意見があると思うが、地域の宝である子どもたちの育ちに住民も目を向けてほしい」と話す。
事故はリスクではありません。お世話になっている保育所でも、園扉の外で親が目を離したすきに自動車と接触する事故が起こりました。大阪市内は交通量が多く、こうした危険とは切っても切り離せません。
ただ、様々な方法で事故リスクは低減できます。例えば複数の子どもを自転車に乗せる場合、どうしても一時的に目が離れてしまいます。園の片隅に保護者用の一時駐輪場を設置し、安心して子どもを乗降させられるスペースを作るのが一例です。
保護者のマナーも大きな課題です。立ち話や一時的な自動車の駐車は近隣住民に大きな迷惑を掛けてしまいます。自動車登園を明確に禁止している保育所もあります。近隣住民に配慮した登園・降園が求められるでしょう。
一方、中には言いがかりとしか言えないような近隣住民からの要求もあります。理不尽な要求であっても無視すると保育所等に嫌がらせが行われる可能性があり、対応に苦慮する話も聞きます。行政による仲介等にも限りがあります。
大阪市の担当者は「理解を得るには住民との日頃の関係が大切」と指摘しています。しかし、地域で新しく保育所を設置しようとする法人であれば、そもそも住民との関係はありません。新しい一事業者に過ぎません。住民との日頃からの関係が求められるのは区役所でしょう。こまめな町会・地活協との関係構築が重要かもしれません。
土地が限られている都市部で保育所の新設を進めるのは、更に困難になっていきます。大阪市西区では平成29年4月の保育所開所が見送られる可能性が高くなっています。保育所に適した用地が見当たらないのが一因でしょう。
しかし、【H28保育所等一斉入所結果分析】(1)大阪市全体で記したとおり、都市部での保育ニーズは極めて強いです。子育て世帯では、保育所等の不足感が極めて強い大阪市西区を転入候補から外す動きも生じるのでは無いでしょうか。
子どもがいない社会・地域に未来はありません。