いわゆる「北摂」と呼ばれる地域は子育て世帯に人気のあるエリアです。緑が豊かで広々として子供向けの公園も豊富であり、大阪市内・伊丹空港へのアクセスも優れています。私の周囲でも大阪市内から転居した方がいます。
北摂の中心、吹田市や豊中市で保育需要が急増し、今年4月に入園できない児童が大量に発生しているそうです。両市で合わせて2000人弱となる見込みです。
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(3/10追記)
【ニュース】吹田市の保育所問題、原因は情報公開・西部地区の保育所不足かを掲載しました。
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「何とかせいや」 関西の人気エリア、保育所難で悲鳴
2016年3月4日22時41分
1千人前後が保育所落選――。子育て世帯を中心に、関西有数の「住みたい街」として人気の大阪府吹田、豊中両市が、新年度を目前にして深刻な事態に陥っている。千里ニュータウン(NT)の再開発などに伴い、大規模マンションが続々と建設。喜ばしいはずの街の若返りが、保育所不足という新たな課題を生んでいる。
吹田市では認可保育所や認定こども園など「認可保育施設」への4月入所に過去最多の2481人が申し込み、1次選考で4割にあたる1018人の行き先が決まらなかった。
「まさか全部落ちるなんて」。長女(1)の入所を申し込んだ公務員の女性(30)は途方に暮れた。申込書には第6希望まである記入欄の欄外まで計8カ所の施設名を書いた。「育休は延ばしたくない。認可外の保育所に預けるしかない」と話す。
市が選考結果を発送したのは先月12日の金曜日。週明けの月曜日、市役所は赤ちゃん連れの母親らであふれた。電話が鳴り続け、職員総出で対応。順番を待つ人の椅子が足りず、別の場所からいくつも運ばれてきた。
40代の公務員の女性は、長女(2)の預け先が申込書の欄外に書いた保育所に内定した。だが、駅から遠くて電車通勤ができない。別の園に変えたいと窓口で交渉したが、だめだった。
相談中、左右の窓口から同じように詰め寄る保護者の声が聞こえてきた。
左隣では「どうやって育てていけばいいんですか」と母親が泣き叫び、選考で有利なひとり親家庭にするためか、「明日、離婚します」と父親が語気を強めた。右隣では赤ん坊を抱いた母親の横に祖父母が立ち、「何とかせいや」とすごんでいた。
女性は「新しいマンションが次々建っており、市は保育所が足りなくなると想定できたはず。なぜ手を打たなかったのか」と憤る。
今後2次選考があるが、1次で千人以上の行き先が決まらない事態について、市保育幼稚園課の西村直樹課長は「危機的状況」と受け止める。保育所新設などで昨年より定員を259人増やしたが、新規申し込みは373人増えた。「保育所をつくるための土地の確保が難しく、整備が追いついていない」と話す。
隣接する豊中市も定員を261人増やしたが、1次で昨年より59人多い909人が「落選」となった。
■若い家族に人気のエリア
吹田、豊中両市とも、若いファミリーに人気のエリアだ。住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」の「住みたい街ランキング関西版(市区別)」で、昨年は吹田が6位、豊中は8位に入った。市もサイトで「充実した子育て・教育環境」(吹田)、「安心して子育て・子育ちができるまち」(豊中)とうたう。
だが、保育の事情は悪化している。認可保育施設に入れなかった児童は増加傾向で、昨年は吹田市が582人(5年前の6・7倍)、豊中市は732人(同2・5倍)に達した。
吹田市は申込者全体の9・1%、豊中市は11・5%が入れなかった計算で、割合では大阪府内の全自治体中ワースト1位と2位。府平均の5・3%、全国平均の4%を大きく上回る。継続利用を除く新規申込者だけでみると、吹田、豊中両市ともおよそ3割が入れなかったことになる。預け先が見つからない場合、復職を断念して育休を延長したり、一般的に保育料が割高な認可外施設の空きを探したりせざるを得ない。
■「若い世代が一気に流入」
働く女性が増え、保育の需要が高まっているのは全国的な傾向だ。吹田、豊中両市にはそこに、千里NTの再開発などによる大規模マンションの建設ラッシュが重なっているという個別事情がある。
吹田、豊中両市にまたがる千里NTは2012年に「まちびらき」50年を迎え、府営住宅の建て替えやその空き地を活用した民間マンションの建設が進む。0~5歳の就学前児童数が吹田市は12年に増加へと転じ、15年は前年より350人増の2万735人。豊中市は15年は2万2191人と前年比23人増だったが、13年と14年はともに前年より400人あまり増えている。
吹田市の保育担当者は「若い世代が一気に大量に流入し、保育の需要をさらに押し上げているのではないか」と話す。豊中市では4月、NTを含む市北東部で認可保育施設5カ所が開園する予定だ。
吹田市役所の様子が臨場感を持って書かれています。あたかも取材した記者のお子さんが保育園へ入れず、母親としての立場で市役所へ相談しに行った際に出くわした様に感じられました。
子育て世帯に人気の街=保育園へ入りにくい街
保育を必要とする世帯、つまり子育てしながら共働きしている世帯が住みたい街には共通点があります。利便性・環境の良さ・子育て世帯向け住居の多さです。吹田市や豊中市(他には箕面市や池田市)は多くの地域でこれらを備えており、今や関西で最も人気がある地域といえるでしょう。
こうした地域で再開発事業によって子育て世帯向けの大型マンションが整備されると、似た様な家族構成・年齢構成である世帯が転居していきます。以前から高止まりしていた保育需要が一気に高まり、保育園へ入れない児童が急増するのは当然の結果でした。
「子育て世帯に人気の街」=「保育園へ入りにくい街」というのは全国で共通した減少です。保育園に入りやすいという理由で子育て世帯からの人気が高まるケースは殆どありません。上述したとおり、利便性・環境の良さ・子育て世帯向け住居の多さが主たる理由でしょう。
マンション建設に保育園整備が追いつかない
民間事業所等によるマンション建設が先行し、保育園の整備が追いつかないのも共通した現象です。吹田市の担当者は「若い世代が一気に大量に流入し・・・」と抗弁していますが、言い訳になっていません。大量に流入するのは分かり切った話でした。「流入するのは分かっていたが、適切な対応を取らなかった。」というのが正確でしょう。
吹田市・豊中市の保育料は決して安くありません(詳細はこちら)。吹田市は概ね府内の平均的な水準ですが、豊中市は府内で最も高い水準です。また、両市は大阪市内の中心部より遙かに土地にゆとりがあり、保育園に適した候補地も数多くあるでしょう。来春に向けてどうなるのでしょうか。
「大阪市内の保育園」という選択肢
両市にお住まいで保育園に困っている方に、ささやかながら提供できる情報があります。「大阪市内の保育園」という選択肢があります。現時点で入園枠が空いている場合、他市に住んでいても今から入園できるチャンスはあります。1-2歳児入所枠や地下鉄御堂筋線沿線にある保育園は殆ど空いていません。が、東淀川区西部・淀川区西部地区や小規模保育施設等では未だ若干の空きがある施設があります。
入園期間・手続方法等は通常のケースとやや異なっています。気になる方は、早急にお住まいの自治体や当該区役所等へお訊ね下さい。
府内ワーストは東大阪市では?
上記記事では「保育園に入れない児童の割合は吹田市・豊中市が府内1位・2位」とされています。しかし、待機児童等の状況を見る限り、府内で最も保育園に入りにくい自治体は東大阪市だと見ています。そう、元園長・副園長夫婦による巨額横領事件が明るみになった、みるく保育園がある東大阪市です。
府内の自治体別待機児童率(平成26年10月)によると、東大阪市の待機児童率は府内ナンバーワンで突出しています。申し込んだけど入園できなかった入所保留児童ベースでは更に跳ね上がるでしょう。みるく保育園での事件の背景には、東大阪市内の保育園不足もありそうです。
なお、大阪市では2000人以上の児童が保育園へ入れない見込みとなっています。特に市内中心部の1−3歳児は、フルタイム共働きでも入所が困難な状況です。