大阪市の保育所入所待機児童数について(平成28年4月1日現在)より、昨年と比較しつつ大阪市全体としての傾向を考察していきます。

なお、平成26年度までの数字は保育所・認定こども園のみが対象となっていました。平成27年度からは地域型保育事情(保育ママ・小規模保育・事業所内保育)も対象となっています。その為、数字の連続性がやや不十分な点があることをご留意下さい。

申込数・入所数は共に増加、保留児童数は横ばいか

まずは年度毎の入所申込数・決定数等を見てみます。

1.待機児童数

区分H28/4H27/4H26/4H25/4H24/4
新規入所申込数14,36113,91414,19513,64213,571
新規入所児童数11,49110,98811,24410,57210,597
入所決定率80.0%79.0%79.2%77.5%78.1%
入所保留児童数2,8702,9262,9513,0702,974
保留率20.0%21.0%20.8%22.5%21.9%
転所希望368441333382335
育休中363179181115
求職活動休止中411323
主に自宅で求職中564659
一時預かり等対応幼稚園2013
保育ママ・一時保育利用251176131
特定保育所希望等1,4351,7531,4121,4511,844
待機児童数273217210287664
待機率1.9%1.56%1.48%2.10%4.89%
就学前児童数126,131126,686127,317128,099128,184
保育所等在籍児童数48,82147,62346,15045,49744,669
在籍率38.7%37.6%36.2%35.5%34.9%

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000311449.html より作成(以下同じ)

大阪市における過去5年間の保育所等入所申込数や待機児童をまとめた表です。入所申込数は5年間で約800人、入所児童数は約900人増加しています。保育需要の高まりと施設の新設がほぼ同規模で発生したと推測されます。

これにより、入所が決まった児童は年々増加している一方、入所が決まらなかった児童(入所保留児童)は3,000人前後で推移しています。毎年、ざっと5人に1人は入所保留となっています。高まる保育需要に見合った施設を整備するので精一杯、というのが大阪市の状況でしょう。

入所保留児童の半分を占めるのが「特定保育所希望等」です。これは「他に利用可能な保育所等があるにもかかわらず、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機しているものや、利用可能な保育所等のあっせんに応じなかったもの」とされています。

問題となるのは「他に利用可能な保育所等」の定義です。区役所は「自宅から一定の範囲(概ね20-30分以内に登園可能)な範囲にある保育所等」を利用可能とみなし、これらに空きがあるのに断った場合は「特定保育所希望等」に分類されている様子です。

しかし、保護者としては自宅に近くて通勤先へ通いやすい保育所を希望するのが専らです。たとえ登園可能だとしても、幾つもの保育所を素通りした先にある保育所、通勤先の反対にある保育所には通わせにくいです。

入所後に転所できるならまだしも、大阪市の入所選考基準では転所に優遇措置はありません。むしろ合理的な理由がない転所希望の場合は点数が1/2とされてしまいます。であれば、あっせん等を断って認可外保育施設へ登園し、この加点(5点ないし7点)をもって希望順位が高い保育所の空きを待つのが合理的な選択でしょう。

特定保育所希望等による利用保留児童を生み出しているのは、選考制度に起因する部分も大きいです。こうした点から「待機児童数」は信用に値しません。他の自治体でも同じです。

0-1歳児の申込数が年々上昇

次に年齢毎の申込数等を見てみます。

保育所等新規入所申込者数の推移(毎年4月)

0歳児1歳児2歳児3~5歳児合計
H222,8124,4212,8063,14513,184
H232,7774,3552,6463,28213,060
H243,0264,6302,6503,26513,571
H253,0504,9442,7242,92413,642
H263,2275,1672,7243,07714,195
H273,2885,3142,5962,71613,914
H283,5145,5962,6592,59214,361

入所申込者の合計は14,361人となり、過去最高(平成26年)を上回りました。3-5歳児の入所申込数は減少に転じる一方、0-1歳児は年々増加しています。

この背景には保育所等へのニーズの高まりに加え、地域型保育事業(小規模保育等)の新設によって入所枠が広がった事があるでしょう。平成27年度において、0-2歳児の利用枠が1,239人(3-5歳児は774人)分も増加しています。

一方、3-5歳児の申込数が減少しているのは、0-2歳児で既に入所する児童が多い為でしょう。地域型保育事業等の卒園児による3歳児入所ニーズはあるものの、全体から見ると小さな割合です。しかし、市内中心部等で卒園児の入所先が見つからないケースが生じており、大きな問題になろうとしています。

0歳児は15%・1歳児は37%・2歳児は45%が保育園児

次は在籍児童数を見ていきます。

保育所在籍児童数の推移(毎年4月)

保育所数こども園数地域型数0歳児1歳児2歳児3~5歳児合 計
H223822,5576,6088,07425,39142,630
H23384 – –2,5846,6358,33526,07143,625
H24388 – –2,7056,8158,30926,84044,669
H25395 – –2,7737,0258,52827,17145,497
H26405 – –2,9337,2048,77727,23646,150
H2740831943,0217,7109,28327,60947,623
H28417391203,2207,9049,40628,29148,821
住民数21,93121,44221,07261,686126,131
在籍率14.7%36.9%44.6%45.9%38.7%

在籍児童数は48,821人と過去最高を記録しています。施設増により、昨年と比較して全ての年齢の園児数が増加しています。特に増加しているのは、地域型保育事業の主たる対象である0-1歳児です。それぞれ昨年より約200人も増加しています。

在籍児童数や年齢別人口(平成28年3月末の住基台帳より)から、年齢別の保育所在籍率を算出しました。0歳児は14.7%、1歳児は36.9%、2歳児は44.6%が保育所等に在籍しているという結果になりました。在籍率の高さに驚きです。大阪市における保育ニーズの強さが反映されています。

大阪市では今後も保育所等の新設を積極的に進めていく計画です。在籍児童数・在籍率は当面は上昇し続けるのではないでしょうか。

次回は区毎の入所申込数・入所数・保留数等を基に、各区や前年度の内容と比較していきます。