都市公園法等の改正法が参議院本会議で成立しました。特区制度によらずとも、都市公園内で保育所等が設置できるようになります。

公園に保育所など設置可能に 改正法が成立

待機児童の解消を目指し、公園に保育所などを設置できるようにする改正法が、28日の参議院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。

28日の参議院本会議で可決・成立した、この改正法は、設置できる建物が管理事務所やトイレなどに限られている公園に、保育所のほか学童クラブや子ども園などを建てられるよう規制を緩和するものです。

設置にあたっては、保育所などの敷地面積は公園全体の30%以内に収め、公園の景観も損なわないことを条件にしています。

公園での保育所などの設置は、一部の自治体が国家戦略特区を活用して進めていますが、政府は今回の法改正でこうした動きを全国各地に広げたいとしています。
待機児童の解消が急がれる中、保育所の設置では用地の確保が大きな課題となっているだけに、公園の活用で保育所の整備が進むことが期待されます。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170428/k10010964511000.html

改正法の詳細は、参議院ウェブサイト議案情報に掲載されています。関連部分を引用します。

二 都市公園法の一部改正
1 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づく選定事業として行う公園施設の設置又は管理の期間は、当該選定事業に係る契約期間の範囲内において公園管理者が定める期間とすることとする。
2 公園施設の設置又は管理に関して、都市公園内でカフェ、レストラン等の収益施設の設置とその周辺の広場の整備等を一体的に行う民間事業者を公募し、選定する制度を創設することとする。
3 都市公園の占用の許可の対象として、保育所その他の社会福祉施設を追加することとする。

七 施行期日等
1 この法律は、一部を除き、公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとする。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/193/meisai/m19303193024.htm

特区制度の適用は膨大な事務作業が必要だったと考えられます。法改正によって、都市公園内に保育所等を設置する動きが加速しそうです。(なお、特区制度による都市公園専用保育所等施設設置事業は削除されてました)。

では、具体的にどういった都市公園へ保育所等が設置される可能性があるのでしょうか。大阪市を題材に検討してみます。

大阪市内にある都市公園は「都市公園一覧表」に掲載されています。市営・国営・府営を合わせて、大阪市内には993箇所の都市公園があるそうです。

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都市公園と言っても様々な種類があります。

児童用の遊具が少し設置されている街区公園、遊具や広い広場がある近隣公園、グラウンド等が併設されている地区公園、大規模なグラウンドや運動施設等を兼ね備えた総合公園・運動公園、複数の自治体にまたがる広域公園、そして自然・動植物園・歴史を活かした特殊公園があります。

この中で保育所等が設置される可能性が高いのはあるのは、一定の広さと子どもが遊べるスペースを有する地区公園(市内27箇所)・総合公園(7箇所)でしょう。

同時に、公園に設置しなければならない理由も必要となるでしょう。待機児童問題が非常に深刻にも関わらず、地価が高くて保育所等に利用できる土地・テナントを確保するのが困難という事情です。

大阪市内の候補地は5箇所?

「面積」「待機児童問題」「地価」と基準に、大阪市内で保育所等が設置される可能性がある都市公園を考えてみました。

名称位置面積(平方メートル)待機児童問題地価
扇町北区扇町73,195非常に深刻高い
下福島福島区福島・玉川41,307深刻高い
大阪城中央区大阪城1,055,643非常に深刻極めて高い
西区靱本町96,723極めて深刻非常に高い
桃ヶ池阿倍野区桃ヶ池町71,448深刻高い

こども園の誘致が既に検討されているのは、西区にある靱公園です。

今年3月に大阪市会で西船場幼稚園の廃園案が審議された際、永井委員(自民)と市役所担当者との質疑で触れられました。

永井委員「うつぼ公園の特区、認定こども園を誘致する考えは」
こども青少年局「法律の改正案の内容を踏まえながら検討したい。地元住民の理解が必要。区役所、関係局と調整を行いながら検討してまいりたい。」

https://yodokikaku.net/?p=15763

○永井委員
・靱公園への認定こども園誘致は?
○こども青少年局長
・誘致できれば良い教育環境が確保できる
・地域や公園利用者の合意が必要

https://yodokikaku.net/?p=15884

「検討したい」というお役所言葉は、ゼロ回答に近いとしばしば言われます。しかし、本件は西船場幼稚園の廃園と切り離せない内容であり、実現する可能性は高いと感じています。

靱公園の周辺は市内で待機児童問題が最も深刻です。地価が上昇し、保育所等に適した土地・ビルスペース等を見つけるのが困難になっています。

大阪市内で都市公園内に保育所等を設置するのであれば、第1号は靱公園となるでしょう。

次に可能性が高いのは大阪城公園です。鬱公園と同様、待機児童問題・地価上昇という課題を有しています。

同公園は歴史公園と位置づけられています。しかし、敷地は膨大であり、児童遊具等を備えた場所もあります。利害関係者との調整は、靱公園より容易かもしれません。

それ以外に可能性があるのは、扇町公園(北区)・下福島公園(福島区)・桃ヶ池公園(阿倍野区)です。いずれも待機児童問題が深刻な地域です。

公園内への保育所等の設置に対して、「憩いの場が無くなる」「子どもが騒がしい」「貴重な緑を減らすな」といった反対意見もあるでしょう。

しかし、候補に挙げた公園はいずれも非常に広い場所ばかりです。ほんの一部を保育所等に利用しても、一般の利用者に与える影響は極めて軽微でしょう。

待機児童問題が非常に深刻な場所にピンポイントで設置できるので、初年度から入所希望者が殺到するでしょう。市の財政負担が軽いのも見逃せません。

課題は「保育士の採用」です。公園内に保育所等を設置しても、保育士が採用できなければ運営できません。

お世話になっている保育所でも、「保育士の採用に苦戦しているらしい(でも何とか採用できた)」という噂話が漏れ聞こえます。ボトルネックを一つずつ解消する必要があるでしょう。