吹田市の保育所への入所不承諾問題、収まる気配がありません。落選の母親ら、市に手紙「保育所増やして」も行われました。どうしてこうした事態が生じてしまったのでしょうか。

※事実関係等に誤りがありましたら、コメント欄からご指摘頂けると幸いです。

入所希望者2,481人、入所決定は1,463人・不承諾は1,018名

先日議会に報告があった2016年度保育所等の利用申し込み状況によると、2月1日時点で入所希望者2481名に対し、1018名が不承諾となったとのことです。また、年齢別では0歳児180名、1歳児365名、2歳児249名、3歳児152名、4歳児63名、5歳児9名と、全ての年齢で不承諾が多く生まれているとのことです。

http://ameblo.jp/hyakujouiinkai/

入所希望者に対し、入所が決まったのは約6割でした。残りの4割の児童は2月になって唐突に「不承諾」を突きつけられた形となっています。

「うちの子はきっと入れるだろう、職場にもそう伝えておこう。」と考えていた家庭が多かったでしょう。青天の霹靂とも言うべき事態です。

原因は?

吹田市の担当者は若い世代の大量流入を原因としてとらえています。

吹田市の保育担当者は「若い世代が一気に大量に流入し、保育の需要をさらに押し上げているのではないか」と話す。

http://digital.asahi.com/articles/ASJ2V65J4J2VPTFC01F.html

市のこども部長はこれとやや異なる見解を示しています。

吹田市の平成27年4月1日現在の保育の受入れ枠は、平成26年4月1日に比べ、認可保育所の分園設置などによる定員増で55人、新しく運営がはじまった小規模保育事業(10園)で164人、合わせて、219人分増えました。

ところが、今年の4月1日現在の待機児童数は90人。昨年同時期から66人増えています。吹田市の就学前子どもの数もこの1年間に約350人増えていますが、待機児童の増加は、働こうとする保護者の需要の高まりが大きな要因と考えています。

(就学前人口) 20,380人(H26.4.1) → 20,735人(H27.4.1)

http://suitashibuchoblog.seesaa.net/article/427061414.html

恐らくは両方とも当てはまるでしょう。子育て世帯の増加・共働き比率の増加・保育所が少ない地域への集中が、事態を深刻にさせたのではないでしょうか。

年齢別申込人数は?

年齢別の入所不承諾数は公表されている一方、年齢別の申込人数は明らかにされていません。保育所毎・年齢毎の申込人数も不明のままです。ここに吹田市の大きな問題があると感じました。つまり「情報公開不足」です。

吹田市や議員のウェブサイトを探したのですが、年齢別の申込人数は分かりませんでした。そこで、大阪市の年齢別申込人数を基に推計しました。大阪市の年齢別申込人数の比率を吹田市に当てはめたものです。

年齢申込(推定)入所決定(推定)不承諾(確定)推定入所率
0歳児58440418069%
1歳児98161636563%
2歳児46021124946%
3歳児32617415253%
4歳児103406339%
5歳児2718967%
合計24811463101859%

きつい結果です。特に厳しいのは2歳児・4歳児でした。入所が決まったのは半数以下という推計結果です。

保育所別の募集数は?

入所書類が掲載されたページに、吹田市内の保育所等の一覧表は掲載されています(こちら)。

201598114623_ページ_1

しかし、保育所別・年齢別の募集予定数は記載されていません。他のページもくまなく探したのですが、見つけられませんでした。

ひょっとすると、今でも保育所別・年齢別の入所数が市民向けに公表されていないのかもしれません。大阪市民としての感覚からすると、唖然としてしまいます。

情報公開に積極的な大阪市・消極的な吹田市

吹田市と異なり、大阪市では様々な情報が公開されています。たとえば平成28年度保育施設利用申込み状況の公表についてでは、保育施設・年齢毎に募集予定数・第1希望申込数が公表されています。当然ながら、全体としての合計数も公表されています。

公表後には希望保育所等の変更も可能です。すなわち、申込状況は中間発表であり、この内容を基に希望を変更する事が出来ます。

また、保育所・年齢毎の入所倍率も明らかになります。入所できそうか難しそうか、一定のメドが付けられます。難しいのであれば希望保育所等を追加する、認可外も考慮するといった、何らかの対応や心構えができるのです。

更に毎年5月頃には各施設・事業別新規利用状況(北区~淀川区)(東淀川区~西成区)にて、保育所毎の入所者点数が公表されています。全ての年齢をひとまとめにした数字ですが、年齢毎の募集数と照らし合わせる事により、入所に必要な点数が概ね推測できます。

翌年度の入所を検討している方にとっては、「フルタイムなら大丈夫そう」「加点がないと厳しいかも・・・・」「低い点数でも入れている」という見通しが立てられます。これは極めて重要な要素です。

調べた限りにおいて、吹田市ではこうした発表が行われている気配がありませんでした。10月に申込を終えた後、2月になって「不承諾」が通知された形です。対応のとりようがありません。

阪急以西に保育所が本当に少ない

ここまでは情報公開不足を指摘してきました。一方、保育所の偏在も気になりました。これは吹田市内にある保育施設を地図に落としたものです。

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保育所等は市内中心部から東部(特に山田・千里丘地域)に掛けて集中しています。一方、大阪市内への通勤に便利な北大阪急行沿線には保育所がまばらです。JR沿線も決して多くありません。すなわち、入所不承諾が大量に発生したのは市内西部だと推測されます。

大変だと感じたのは緑地公園駅の利用者です。同駅や周囲一帯は豊中市となります。また西側一帯は服部緑地公園があります。吹田市は同駅周辺に保育所を設置できない、豊中市は同駅西側(寺内)に保育所を設置するだけで十分と判断した、という可能性があります。

吹田市民・豊中市民の双方が利用できる認可保育所を緑地公園駅東側に設置できないものでしょうか。「自治体同士の壁」が住民の不利益となっています。

1年前のものですが、これを裏付ける記述があります。

吹田市の中でも、特に江坂は人気エリアで通勤に便利な地域なのでワーキングマザーが多いみたいですふらふら

想像以上の激戦ぶりにびっくりしてますもうやだ〜 (悲しい顔)

吹田市役所に確認したら、江坂と南千里の地域は特に人気で保育園に入れていない方が大勢いるんだそうです涙

http://maisuku.com/837/

こうした傾向は今年も変わらず、むしろより深刻になっているでしょう。

情報公開・西部地区への新設を

すぐに出来るのは情報公開でしょう。ウェブサイトを見ても、保育所入所の見込みに関する情報が余りに少なすぎます。面接等で個別に伝えているかもしれませんが、それでは遅すぎます。吹田市への転居を検討している方には伝わりません。

今時の子育て世帯の多くはインターネットを利用しています。ウェブサイト上に保育所・年齢別の募集予定数・申込数・入所決定点数等を掲載すれば、申込(予定)者は合理的に計画立てて行動できます。大阪市と同程度の情報を公開していたら、発表後に問い合わせが殺到する事態は幾分和らいだでしょう。

また、交通利便性の高い西部地区への新設も必要でしょう。駅に近くて都心への通勤に便利な地域ほど共働き世帯が多く、保育需要が高いのは全国共通です。吹田市は駅前でも大阪市ほどゴミゴミしていません。利便性が高い地域でも、子供を育てやすい環境が保たれていると感じています。

関西では北摂、特に吹田市は子育てしやすい街として有名です。良い点ばかりをアピールした反面、保育所不足等に関する情報公開は極めて不十分でした。これが混乱に繋がったという側面は否定できないでしょう。

大阪市内等への登園・転居も検討か

また、子育て世帯に人気がある街は、どうしても保育所へ入所するのが難しくなってしまいます。入所できる見込みがなければ、入所しやすい他の自治体・地域への転居も一つの方法でしょう。

ただ、大阪府の待機児童(H27.10.01)によると、北摂はどこも似た様な状態です。しかもこの地域は大阪市内へ通勤しやすく、フルタイム共働きが少なくありません。保育所を新設しても、フルタイム共働きの保育需要を満たすだけで精一杯かもしれません。

なお、大阪市は正社員・派遣社員・自営業等の区別はなく、就労時間で点数化されています(詳細はこちら)。派遣社員や自営業にやさしい大阪市です。

また、吹田市で厳しい4歳児の入所枠が空いている保育所が少なくありません。吹田市よりも大阪市の方が保育所へ入りやすいケースもあるでしょう。どうしてもという方は、東淀川区・淀川区役所へお問い合わせ下さい。

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(H29/6/20追記)
コメント欄より、「吹田市の中でも保育所不足が特筆して多いのは、千里丘地区です」「吹田市内の地域別の待機児童表も公開されている」という指摘を頂きました。ありがとうございます。

平成28年度10月1日付保育所等利用待機児童数
http://www.city.suita.osaka.jp/home/soshiki/div-jidou/hoiku-yochien/_81156/_82036/_83678.html

これによると、吹田市内の待機児童の半数近くが千里丘地域に集中しているそうです。

ただ、入所できなかった「入所保留児」の分布までは明らかになっていません。山田・千里丘地域の他、ニュータウン地域にも相当数の入所保留児が存在するのではないでしょうか。