大阪で感染が拡大する局面において真っ先に感染者数が増加するのは、10代後半と20代です。その多くは高校生や大学生です。

体力が有り余っているこの世代の活動で特に注意が必要なのは「部活動」です。マスクを外して近距離で接触する機会が多く、閉鎖空間たる更衣室や飲食の場を大人数で共有するのが日常茶飯事となっています。

部活動クラスターの一つの特徴は、規模が大きくなりやすい事です。数十人、中には100人を超えるクラスターも発生しています。クラスターの大きさは医療機関や高齢者施設に並びます。

また、部活動は練習試合・合同練習・大会等を通じた他校との交流も盛んです。対戦相手や練習相手校の選手や関係者等が感染した事例は数えきれません。

先に挙げた医療機関や高齢者施設ではワクチン接種が進み、クラスターの発生件数は大幅に低下しています。しかし、多くの高校生や大学生がワクチンを接種できるメドはまた立っていません。今後も部活動クラスターの発生は避けられません。

そうした中、この7月は全国各地で様々な大会が行われています。予期された事と言いますが、残念な事と言いますが、学校関係者や部活動関係者で感染が判明し、出場辞退や棄権を余儀なくされるケースが相次いでいます。

頻繁に報道されているのは、全都道府県で開催されている全国高校野球大会への出場校です。7月19日朝までに報道された事例を一覧にしました。少なくとも5校が出場を辞退しています。

学校名都道府県事由
福井商業福井複数の野球部員がコロナ感染、出場辞退
中越新潟複数の野球部員がコロナ感染、出場辞退
米子松蔭鳥取学校関係者1名がコロナ感染、出場辞退
小松大谷石川生徒4人・教師2人がコロナ感染 出場中
横浜隼人神奈川敗戦後に学校から感染者が出たと発表、部活動の活動停止
城郷神奈川全部活動が対外活動禁止に、出場辞退
藤沢工科神奈川全部活動が対外活動禁止に、出場辞退

昨日から大きな話題になっているのは、米子松蔭高校の野球部ですね。鳥取大会の優勝候補(第1シード)です。

初戦の前日晩に学校関係者1名(野球部との関係は不明)の感染が判明、野球部関係者は抗原検査によって全員の陰性が確認されるものの濃厚接触者の疑いが拭いきれず、試合直前に出場を辞退しました。

公表されている情報が余りに乏しいので、この判断の是非は分かりません。

高校最後の大会、リスクが比較的低い屋外スポーツ、濃厚接触者の出場を認める五輪との均衡という出場を後押しする要素もあれば、有力校のゴリ押し、塁上等でのコンタクト、五輪は特別扱い、抗原検査の信頼性、大会スケジュール等、辞退はやむを得ないとする要素もあります。

様々な識者の意見から抜け落ちているのは、米子松蔭高校が立地する鳥取県米子市の感染状況です。同市では飲食店を中心としたクラスターが発生し、昨年来で最も厳しい感染状況の真っ只中にいます。

【新型コロナ】鳥取県 過去最多29人の感染確認 米子市の飲食店でクラスター(鳥取県・米子市)
https://news.yahoo.co.jp/articles/55047663f5a860f0c70a5430b1f0c5812770879c

一地方都市で一度に30人近くの感染が確認されると、地域の緊張感は極めて高くなります。街からは人が消えてひっそりとします。

そうした中に高校関係者から感染者が確認されると、やや過敏に反応してしまうのは致し方有りません。都市部と地方、コロナ感染に対する考え方は違って当然です。

判断に大きな迷いや戸惑いを及ぼしているのは、基準の乱立です。同じ高校野球であっても、都道府県単位で基準が異なっています。

野球部関係者から感染者が出ない限り、学校関係者から感染者が発生しても出場を認めている学校もあります。スポーツの種類によって基準が異なります。大会・練習試合・校内練習によっても違います。

これに拍車を掛けているのはオリンピックです。どの様な判断がなされても、「でも五輪は(以下省略)」という意見が溢れかえります。

学生のスポーツ大会は重要です。しかし、それを聖域視する必要はありません。舞台や芸術といった文化活動が劣位に置かれている現状もあります(東京都の博物館休館はダブルスタンダードでした)。

どういった結論が妥当かは難しいです。重要なのは、事前に様々な意見や科学的根拠をもって定められた判断基準等を明らかにしておく事でしょう。スポーツ同じです。ルールの策定が大切です。

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(7/20追記)
米子松蔭高校の出場が認められました。また、鳥取県高野連は出場可否等に関するガイドラインを設定していたそうです。

米子松蔭の大会への復帰認める 鳥取県高校野球連盟
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210719/k10013147931000.html

今後は「可能ならば試合を順延し、学校内での感染状況を見極める」という判断を行う大会が増えそうですね。