現在、保育所等に入所するのは4月が一般的です。年長児の卒園や在園児の進級に合わせ、0-1歳児クラスを中心に一斉に募集を行います。

一方、4月以外に入所するのは困難です。多くの保育所等は4月入所で定員を充足してしまう為、退所者の発生等によって「空き」が出るのを待たなければなりません。

0歳児が4月から入所するには、原則として前年の9月以前に産まれている必要があります(一部施設は例外あり)。4-9月生まれが多く、10-3月生まれが少なり、人口動態にも影響を及ぼしています。

1歳児の場合は、4月入所に合わせて育児休業を3月末で切り上げる動きも生じています。もう少し長く育児休業を取得したいという声があるにも関わらず、保育所等の入所を優先せざるを得ない実情もあります。

こうした事情から、政府が「保育所の入所予約枠」の創設を検討しようとしています。

保育所入所、4月以外も 政府が「予約枠」の創設検討

子どもが通う保育所の入所枠を保護者があらかじめ確保できる仕組みを、政府が創設する検討に入った。民間や地方自治体が運営する保育所への財政支援を通じ、入所が集中する4月でなくても預けやすくなるようにする。保護者が希望する時期に職場復帰できる環境整備を促す。共働き世帯などの育児と仕事の両立を後押しする。

政府は2023年にも保育所の予約枠の新設に向けた議論に着手する。同年4月に発足するこども家庭庁を中心に、制度の詳細をつめる。

保護者が子どもの入所時期を4月以外で柔軟に選べる仕組みを念頭に置く。4月から入所する月まで予約枠を空けていることで生じる保育所の収入減を穴埋めする財政支援策を用意する。妊娠中から0歳児の入所を予約できる運用についても検討する。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA148D20U2A211C2000000

「創設する検討に入った」という表現なので、この報道に対する様々な反響を見定めた上、本格的な検討を行うかどうかを判断するのでしょう。言わば観測気球です。

入所予約や入所枠という考え方自体は否定しません。助かる子育て世帯は少なくないでしょう。一方、制度設計に落とし込むのは非常に難しいです。

十分な保育所が整備されており、5月以降でもほぼ入所できる地域ならば問題は少ないでしょう。待機児童とは無縁の地域なので、先の入所枠を設定しても不利益を被るケースは考えにくいです。

問題は保育所が未だに不足している都市部やベッドタウンです。共働きが多く、保育施設に対するニーズが強い地域です。

こうした地域で入所予約等を設定すると、それによって弾き出されてしまう児童が発生します。一斉入所に対して、妊娠中の入所予約や10月入所枠を優先する理由は見いだしにくいのが実情です。様々な問題はデメリットはありますが、現行の一斉入所システムは公平性や実用性が高い制度です。

一つの方法として考えられるのは、「新たに年度途中入所枠を設ける」という方法です。

どの保育所等にも共通して言えることですが、多くの新入園児や新職員が入所する4月は非常に慌ただしいです。園児も職員も不慣れであり、事故も起こりやすいです。特に配置基準ギリギリで運営している保育所等になると、本当に人出が足りません。

これに対し、一部の保育所等では4月に入所する園児を若干減らし、園が落ち着いた時期(8月から10月頃)に追加募集を行っています。新入園児や職員が慣れた時期に新たな園児が加わるので、園も落ち着いて受け入れられるそうです。

助かる保護者もいます。例えば12月生まれの児童の場合、原則として入所できるのは翌年7月からです。一斉入所で定員を充足していたら、年度途中に別の保育所や認可外保育施設に入所するか、翌々年4月の1歳児一斉募集まで待つ必要があります。

しかし年度途中の入所枠が予め設けられていたら、そこを念頭に復職する計画を練られます。特に上の子が保育所に在籍している家庭であれば、非常に助かります。

ただ、ネックになるのは人件費です。自治体からの交付金等は在籍園児数に応じて金額が変わる項目もある事から、一定の減収が生じてしまいます。また、4月入所枠が減ってしまうことにより、入所できなくなる児童が生じない様な配慮も必要です。

復職する月を選びたいというニーズもあるでしょう。ただ、各自がバラバラの入所月を選んでしまうと、自治体や保育所の負担が増します。また、勤務先から「入所月を選べるので、○月に復帰して下さい。」という圧力が掛かる恐れはあります。

入所月を自由に選べる入所枠よりも、年度途中の追加入所枠を予め定めてしまう方が保護者は計画を立てやすいです。大学等の秋入学と同じ考えですね。