ここ数年の間、大阪府立高校の学校説明会に何度も参加しています。今年も足を運びました。校舎の手入れ具合や生徒の様子を確認し、先生の話に耳を傾けています。
今年の説明会で複数の先生方が口を揃えて主張していたのは「英検と英語の学習」でした。内容も概ね同一でした。「英検に合格しても、英語の学習を止めないで欲しい。入学後に躓く。大学入試にも影響する。」といった趣旨でした。
大阪府の公立高校入試には英語民間資格を優遇する制度があります。英検2級等を取得していると、英語の当日点で80%が保障されます(8割で読み替える)。
大阪府公立高校入試では英数国で難易度別問題が採用されております。A問題が易しく、C問題が難しいです。英語C問題は全国の公立高校入試で最も難しいと言われるほどです。入試問題を解いて80%以上の得点を得るより、英検2級合格によって80%保障を得る方が容易です。
その為、入試対策という観点からは「出来るだけ早く英検2級を取得し、残り4教科の対策に全力を挙げる。」というのが効率的です。
しかしながら、英語は使わないと忘れます。特に長文を読解する速度が落ちます。
中学での英語の授業はゆっくりと進みましたが、高校での英語の授業は早く進みます。特に英検2級合格者が多い文理学科では顕著です。中学3年生の後半で英語学習に手を抜くと、高校の授業に付いていくのが難しくなります。
説明会の場で複数の学校の先生方は口を揃えて注意喚起したという事は、そうした問題認識が大阪の公立高校間で共有されているのでしょう
これらが反映されたのか、現在の中学1年生が受験する令和10年度入試から英検2級の読替率80%から70%へと引き下げられます(英検準1級は100%→90%)。
塾の先生も同じ趣旨の内容を話しています。英検2級合格によって学習ペースを落とすと入学後に苦労するのに加え、各中学校のトップクラスが受験する一部の文理学科設置校では英検2級による8割保障を超える当日点を得る合格者が少なくないそうです。
7割保障となると状況は更に変わります。第2志望制度によって英国数で共通問題が導入され、問題全体の難易度は現在より下がる可能性があります。
一般選抜は3月1日、英数国ABC共通問題で第2志望を合否判定、英検2級の価値が急落 大阪府公立高校入試(令和10年度入試より)
文理学科や国際系学科の受験生の多くは、入試本番の英語問題で7割以上の点数を得られるでしょう。そもそも7割すら取れなければ、入学後に苦労しそうです。
となれば、今後はますます「英検2級による逃げ切り」という作戦は選択しづらくなります。お守り程度の価値しかありません。
今後は中学生(ないし小学生)が英検対策に時間や費用を費やすのにも疑問が生じます。英検合格を目標に掲げると、確かに学習は進めやすいです。豊富な教材もあります。
一方で問題は記号問題ばかり、単語と熟語の穴埋め問題が多く、長文問題も内容は比較的容易です。府立高校入試・大学入試共通テスト・国公立大学2次試験とは出題方針が異なります。
英検の受験には受検料も掛かります。一度で合格すればまだしも、何度も受験すると負担となります。中には中学3年生で何とか英検2級に合格しようとするあまり、S-CBT(コンピュータで受験する方式)を毎月受験するといった話も聞きます。
これだけの労力や費用を掛けても7割保障です。であれば英検受験は力試し程度に留め、学校や塾での英語学習を積み上げる方が合理的ではないでしょうか。突き抜けるまで英語学習や英検対策を行い、9割保障となる英検準1級を取得するのも一案です。
語学の学習は難しいです。私自身も学生時代に苦労し、今は子供達が苦労しています。昔よりも様々な教材が増えて学習しやすくなったのは羨ましいですが、著しく難化した入試問題には閉口しています。
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