令和7年3月大阪府教育委員会会議にて、学校特色枠の導入や英語検定読替率引下げ等を示した大阪府立高等学校入学者選抜改善方針が承認されました。

学校特色枠は学力検査と併願可・3月1日受験・出願後に第2出願・英検2級は8割→7割読替 大阪府公立高校入試改革

現在の中学1年生が受験する令和10年度公立高校入試から導入される予定です(この約1か月後に石破総理や吉村知事からデジタル併願制の検討を求める発言があり、承認された方針通りに実施されるかは要注意)。

中学生や小学校高学年を育てている子育て世帯にとって影響が大きいのは、英検に代表される民間英語資格での読替率の引き下げでしょう。たとえば英検2級を取得していたら当日点80%として読み替えられていたのが、令和10年度入試から70%となります。

上記会議では、とある読替率の引下げに対する意見を求められた大阪府教委担当者が見解を示しました。

中学校あるいは高校の現場の先生方から、中学校での英語資格を取得した一部の生徒の英語学習力量、全体量が低下しているという意見も聞いています。やはり、英語の学習は継続して行うことが重要であって、英語資格を取得しても、更なる高みを目指して英語学習を続けてほしいという思いから、読替え率をこのように変更をいたしました。

よく理解できる意見です。

我が家がお世話になっていたとある学習塾は少なくとも英語と数学は全員が受講する事になっていたのですが、英検2級以上を取得した中学生は英語受講を免除する措置が可能でした(とはいえ大半の受講者が受講していた)。

受験直前ともなると露骨な動きも出てきます。私立高校の入試が終わった後は英語の勉強を放棄し、ひたすら理科と社会の学習に注力した受験生がいたと聞きました。チャレンジ受験した文理学科に合格しましたが、授業や試験についていくのがとても苦しいそうです。

大阪府教委は英語資格による読替制度を廃止するのではなく、読替率を引き下げる形で継続すると判断しました。少なくとも読替率の引き下げは妥当です。

たとえば発展的問題を出題する英語C問題が非常に難しかった令和6年度入試では、英語資格を有した受験生の85%が読替による最低保障で救済されました。公立高校入試の英語科目が殆ど意味を為さない物になってしまいました。

4,261人が英検等を活用→3,622人(85%)が最低保障で救済、令和6年度大阪府立高校入試

読替率70%は絶妙な数字です。入試に向けて英語の学習を積み重ねれば70%以上の点数が期待でき、かつ大失敗しても合否圏内に留まれそうな数字です。

今後の英検学習等について学習塾の先生に訊ねたところ、「英検2級が取れなかった生徒でも、文理学科等は受けやすくなると思います。でも、2級を取らせるという方針は変わりません。」と話していました。

英検2級の取得には時間と費用が掛かります。短期間で取得しようとして何度もS-CBT(毎月実施されるコンピューターでの試験)を受験し、多額のコストを掛けたという話は頻繁に聞きます。

読替制度が継続される事により、「家庭の経済力をバックに、受かるまで何度も英検2級を受験する」という力業が今後も通用します。S-CBTを除く、入試本番から過去1年以内の合格のみを対象とする等、何らかの歯止めがないと過剰競争は止まりません。

例え読替率が70%に引き下げられても、英検2級の取得が有利に働くのは間違いありません。これまでと同様、今後も「文理学科等の受験の可否を判断する一つの基準」として機能するでしょう。