12月23日に令和4年度全国体力・運動能力調査の結果が公表されました。
令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922_00004.html
コロナ禍による運動不足により、子供の体力は大きく低下しています。体力合計点は過去最低を記録しました。
スポーツ庁は23日、小中学生を対象とする2022年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)の結果を公表した。50メートル走や立ち幅跳びなどの8種目を点数化した体力合計点は、小中学校の男女ともに08年度の調査開始以来、最低を記録。同庁はデジタル機器に触れる機会が増えたり、新型コロナウイルス感染拡大による活動制限が続いたりして、運動の機会が減ったことが背景にあるとみている。
中でも大阪府の小中学生の体力の低さは際立っています。殆どの種目で全国平均を下回り、合計点は42位~45位でした。学力も体力も全国有数の低さなのが大阪の実情です。
8種目の種目別では、小学生は男子の50メートル走が9・53秒で全国平均と並び、他は全国平均を下回った。中学生は男子の上体起こしが全国平均を上回り、女子は全種目で下回った。小中いずれも男女ともに長座体前屈の記録が昨年度より向上した。
合計点の47都道府県の順位は小学生男子が45位、女子が44位。中学生男子が42位、女子が42位だった。
特に懸念されるのはスポーツ嫌いの多さです。運動やスポーツが嫌いと答えた割合は、全国で最も高い値でした。
運動やスポーツが「嫌い」と答えた割合は、小学生男子が3・1%(全国平均2・4%)、女子が5・8%(同4・3%)、中学生男子が4・4%(同3・7%)、女子が9・8%(同7・5%)。いずれも全国で最も高かった。
コロナ禍の影響で調査のなかった2020年度を除く直近5回の調査では、17、18、今年度で小中いずれも男女ともに全国で最も高かった。
なぜ大阪の子は運動が「嫌い」なのか。府教委の担当者は「数値から理由の分析はできません」と話す。ここ数年は楽しい体育の授業を作るための教員研修を続けており、「『嫌い』を減らすよりも、『好き』を増やす努力を続けたい」という。
うちの子は運動がどちらかと言えば好きな方です。運動系の習い事はさせていませんが、体力や運動能力は真ん中より上です。
ただ、大阪では運動をする場所や機会が非常に乏しいと感じています。最たるのは公園の少なさや狭さです。
例えば近所の児童公園は遊具が殆ど無く、広場も広くありません。以前から子供達は工夫して遊んでいたのですが、数年前には「ボール遊び禁止」という看板が掲げられてしまいました。万事休すです。
一部には広い公園もありますが、大半は「野球場」です。
公園の大部分を占める野球場で少人数の大人やスポーツクラブが野球を楽しみ、遊具がある猫の額の様なスペースに子供達が集っている光景は何度も目にしました。
学校の運動場も決して広くはありません。特に児童数が増加している市中心部の学校では児童1人あたりの面積が狭く、校舎増築によって更に狭くなっていると聞きます。
こうした実情が「運動嫌い」にも影響しているのでしょう。
大阪の子供の体力問題の責任は、大人にあります。十分な資源を配分できていない現状に対して大いに反省すると共に、解決策を講じるのが急務です。
教育費トップは大阪
反対に大阪が全国トップという数字もあります。教育費です。
都道府県別の物価差を示した総務省の2021年消費者物価地域差指数で物価を構成する10大費目のうち、授業料や教科書・学習参考教材、補習教育・予備校などにかかる教育費が最も高いのは大阪府だった。2位も京都府と、教育熱の高い関西圏の自治体が上位を占める。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC073UI0X00C22A9000000/(上位部分を引用)
日経新聞では「教育熱が高い」と褒められていますが、肌感覚は違います。公立中学校への不信感の裏返しです。
最近は地元や近隣地域の中学校事情を集中的にリサーチしています。調べれば調べるほどに大阪市立中学校の実情が見えてきます。学力格差・多忙すぎる教員・老朽化した施設・教職員の少なさ・古い考え方等、私立中への進学を検討する家庭が多いのは当然です。
大阪府や京都府は中高でも受験人気の高い私大付属校が多い。授業料が高いのに加え、受験準備で低学年から学習塾や家庭教師に教わる子どもも多くなる。学習塾や家庭教師に学ぶ子どもの割合が高いほど、教育の需要は大きく物価も高い。また大学進学時などに県外に流出する子どもが少ないほど、需要を囲い込めて物価は高まりやすい。
大阪府は全国平均を100とした教育の指数で121.2だった。全国平均より2割以上高い。府によると、府内私立中学61校のうち、大学を経営する学校法人の付属校は47校と8割近くを占める。多くが高所得世帯を狙った難関校であり、授業料も高い。
受験準備などで学習塾などに通う子どもも大阪府内は多い。21年度全国学力・学習状況調査によると、府内の学校に通っていて学習塾や家庭教師に教わっていない小学生は46.9%、中学生は28.0%といずれも全国平均(52.6%、36.4%)より少ない。大学進学時などに府外に出る子どもも少ない。21年住民基本台帳人口移動報告をみると15~19歳は2810人の転入超過となっており、教育需要を囲い込んでいる。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC073UI0X00C22A9000000/
小学校段階では私立中学校への進学を希望する家庭が、中学校段階では授業の水準の低さや子供の学力に不満を有する家庭が中心となり、学外教育費を押し上げているのではないかと見ています。
子供の年齢が高くなるにつれ、中学受験や学習塾に関する話も頻繁に耳にするようになりました。我が家も様々な選択肢を検討しています。
大阪の子供の体力問題と教育費は、実はコインの表裏の関係にあるのかもしれません。共通点は「子供の教育に対する施策の失敗」です。
ここ数年の間、大阪府は私立高の実質無償化・公立高の学区撤廃、大阪市は給食無償化・学力テストの結果公表・学校選択制の導入・補助指導員の増員等、様々な方策を打ち出しています。
しかしながら、これらは思う様な結果に結びついているのでしょうか。私立校無償化は公立高離れを加速させ、学区撤廃は人気校と非人気校の二極化を招いています。
9学区時代に学区トップ高(大阪市外)を卒業した知人は、母校の進学実績の低さを嘆いていました。少子化も相まって、府立高校の閉校も計画されています。
大阪府立高3校を閉校へ 平野・かわち野・美原、6年度募集停止
https://www.sankei.com/article/20220829-W2KQCT2RFRLX3HUFIMU6XHPLZQ/
大阪市は学力向上に力を入れ続けていますが、依然として低迷しています。地元の中学校関係者からは「とにかく人が足らない」と聞きます。
いろいろと考えさせられます。