大阪・関西万博が閉幕しました。我が家は通期パスこそ購入しなかったものの、会場へ何度も足繁く通いました。我が家の考え方や事情については別記事でまとめる予定です。
万博が開幕した頃に論争が起こったのは、大阪府が実施した「学校単位の無料招待事業」でした。大きな教育的効果があるものの、万博会場の下見不足・混雑・熱中症リスク・訪問先パビリオンの調整等を懸念する声が続出しました。
・【大阪・関西万博】無料招待事業に混乱広がる学校 パビリオンも下見も全てが未定
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最終的に大阪府では対象となった児童生徒約85万人の内、約40万人が学校単位での無料招待事業で万博会場を訪れました。
また、学校単位で訪問しなかった児童生徒約45万人に入場券を配布し、約12.5万人が訪問しました。
府教育庁によると、無料招待事業の対象者は、府内の小中高校と支援学校計1879校の児童生徒約85万人。うち校外学習で閉幕日までに訪れるのは約40万人の見通し。子供たちの体調管理の難しさや日程の不都合などを理由に不参加を表明した学校が多数あった。
不参加の学校に配布した、個別に来場できるチケットIDを使った児童生徒は約12万5千人。約40万人と合わせれば、対象者全体の約6割に達する。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e68cf9b49e16a314d538d0f8806a5717f34e4495
それぞれの訪問率等を計算しました。
| 実施事業 | 訪問数 | 対象数 | 訪問率 |
| 学校単位での無料招待 | 40万人 | 85万人 | 47% |
| 個別入場 | 12.5万人 | (内45万人) | 28% |
| 計 | 52.5万人 | 85万人 | 62% |
学校単位での訪問事業には当初は「殆どの学校が参加する」といった報道もありましたが、春先に学校の先生が「それは課題だと思う。隣接する○○や○○学校は参加しないと聞いている。」と話していました。
学校からの訪問は移動時間と情報不足がネックに
大阪市内からは相当程度の学校が訪問したと考えられますが、万博会場から離れるに従って参加率は低下したものと考えられます。どうしても往復の移動時間がネックとなってしまいます。
万博会場から比較的近くにある大阪市立中学校ですら、往復の移動時間が3時間も掛かってしまいました。現地に滞在できたのはわずか3時間でした。
現地での滞在時間を極力延ばした学校もあります。近隣のとある学校は朝8時に学校発→4~5パビリオンや大屋根リングを回る→16時過ぎに帰校、という強行スケジュールで行動したそうです。落ち着いていると評判の学校なので、こうした行動も可能だったのでしょう。
たとえ短い時間であったとしても、クラスメイトと万博会場を訪れたのは良い思い出となります。世界規模のお祭りに学校から参加できるのは最初で最後となる児童生徒が大半でしょう。
学校単位での訪問事業は、大きく夏休み前の前半戦と夏休み後の後半戦に二分されます。
前半はとにかく情報不足だったと感じました。休憩場所・熱中症への対応・混雑具合・電車の混み具合・事前学習・パビリオンの内容や予約等が全て手探りでした。
中でもクラス担任の先生が個別のパビリオンと入場できないかと個別交渉している報道には驚きました。学校・学年単位でパビリオン予約を取り付けたのが専らでしょうが、それ以外にも様々な方法でのアプローチがありました。一般客に混じって待ち、入場した学校もあったそうです。
後半は混雑との戦いでした。多くのパビリオンは1時間~の待ち時間でした。コモンズですら長蛇の列が出来ていました。学校から入場予約したパビリオン(ヘルスケアやアメリカ館で目撃多数)以外に入るのは難しく、大屋根リングや休憩所も混雑していました。
ただ、熱中症対策や会場内での振る舞い方等には関するノウハウは蓄積されていました。事業を担った東武トップツアーズは「万博会場に来場済みの学校からの知見」を公開して周知しました。一般家庭でも役立つ内容でした。
個別配布したチケットの使用率は3割弱
学校単位で訪問しなかった学校の児童生徒には、個別に入場できるチケットIDが配布されました。しかしながら、使用率は3割を下回りました。
家庭では学校から配布されたチケットは最優先で使う筈です。が、多くのチケットは使われませんでした。最終的に大阪府の小中高校生の内、4割弱が万博を訪問しなかったと考えられます。
家庭からの訪問者が奮わなかったのには幾つかの理由が考えられます。
まずはチケット価格です。土日に家族(夫婦・チケットを配布された小中学生2人と仮定)で訪問するには、大人1日券2枚(計15000円)が必要でした。加えた交通費・現地での食事代やお土産代・訪問日を空けるスケジューリングが求められます。簡単に準備できる家庭もあれば、難しい家庭もあります。
入場予約等も簡単ではありませんでした。たった一度(かもしれない)の訪問の為に万博iIDを作成し、複数人の入場予約をし。パビリオンへの入場予約をし、現地での行動予定を組み立てるのは大変です。保護者に負担が掛かります。
とにかく情報不足
チケットの使用率が低かった事実を踏まえると、より多くの学校が訪問するのが理想的でした。しかし、訪問すると決断するだけの情報が足りていませんでした。
開幕直後から夏休みに掛けて一般来場客が伸び悩んだのと同じく、学校としても「情報不足」が顕著でした。パビリオンの建設遅滞等によって、個別具体的な情報提供が遅れました。
インフルエンサーやアンバサダーによる機運醸成ではなく、愚直でも万博の意義やパビリオンやイベントの魅力を伝えるのに注力して欲しかったです。
会場内の建物や設備に関する情報も足りませんでした。公式マップでなく、いわゆる「つじさんのマップ」が重宝されたのが証左です。
(学校を含む)来場者が必要とする情報と、万博協会が発信する情報が食い違い続けました。来場者が伸び出したのは、来場者が求めていた情報が口コミやSNS等を通じて広まりだした、お盆以降でした。
