大阪・関西万博への学校単位での無料招待事業が揉めています。熱中症・交通費・学習効果・下見不足等を理由に、参加を中止する学校や・自治体が相次いでいるそうです。

 4月開幕の大阪・関西万博で大阪府や近隣自治体が実施する学校単位での無料招待事業をめぐって、来場を取りやめる学校や自治体が相次いでいる。引率を担うことになる教員らからは不安の声が漏れる。何が課題になっているのか。(以下省略)

https://digital.asahi.com/articles/AST3231YCT32OXIE01CM.html

2025年日本国際博覧会協会は「修学旅行等における2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の活用に関する説明会(第2回)」を公開しています。ここに学校等に向けた様々な資料が掲載されています。

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上記記事は学校が参加を躊躇う主な理由として、「熱中症」「交通費」「学習効果」「下見不足」を指摘しています。

初夏~晩夏の大阪は酷暑

熱中症は私も強く同感します。ここ数年の大阪では5月中旬以降は異常な暑さが続きます。学校での屋外活動も常に熱中症を警戒して行っています(軽視して生徒が次々と体調不良となる学校もありますが)。

炎天下の中、児童生徒をバス乗降場から会場まで最短850メートル~平均1,000メートルもの屋外を歩かせるのは理解し難いです。ミスト付き扇風機で対処できる暑さや距離ではありません。

https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/2nd_siryou_r2.pdf

少人数の移動であれば、1,000メートル程度はおおよそ15分程度で移動できます。しかし、大勢の子供が一斉に移動すると、想定以上の時間が掛かってしまいます。列も伸びます。100人以上の児童生徒を一斉に移動させるのは大変です。

会場内の熱中症リスクも深刻です。「世界一高額な日傘」とも揶揄された大屋根リング等による日陰は無数にあるでしょうが、大阪の暑さは日陰だけでは耐えられません。少人数の移動なら日陰で一休みできますが、学校行事では勝手に休憩すると怒られます。

交通費5,000円?

交通費負担も重いです。1人5,000円の負担は重いです。

そもそも我が家がお世話になっている大阪市立小中学校の遠足等では、専ら鉄道を利用して移動しています。小学校低学年でも同じです。バス移動をした経験は修学旅行ぐらいかもしれません。

鉄道移動に慣れてしまうと、貸切バスの手間暇や費用負担になかなか思いが至りません。遠方からのバス移動では時間も掛かってしまい、万博会場で見学する時間を圧迫します。

ちなみに小中学生の団体入場料金は1,000円です。

事前学習が難しい

学習効果への疑問も当然です。学校から社会見学等へ行く前には予め「事前学習」を行う事が多いです。訪問先について下調べを行います。万博でも事前学習を行うのでしょうが、訪問先が分からなければ学習もできません。

もしも児童生徒が興味を示しにくいパビリオンを訪問するとなると、どの様に事前学習を行うのかが難しくなります。児童生徒のモチベーションも低下するでしょう。

協会側は「万博」を強調していますが、保護者サイドとしては「どのパビリオンを訪問するのか」を重視したいです。

下見不足は危険

未だに下見が出来ていないのは論外です。遠足等での訪問先は必ず教員が下見を行います。毎年同じ場所を訪問する修学旅行ですら、数ヶ月前に複数の教員が下見を行いました。先生が「修学旅行は宿泊するのに、下見は日帰りで疲れた。」と嘆いていましたが、それだけ下見は重要です。

プライベートで行く場所でも同じですが、始めて訪れる場所では想定外の出来事が付きものです。家族単位であれば柔軟に対応できますが、一度に数十人~数百人が行動する学校行事では柔軟な対応が難しいです。

拠点毎の移動時間、施設の詳細な所在地、陽当たり、雨天時の迂回路、最寄の救護所、はぐれた場合の集合場所、食事場所、トイレの場所や台数等、現地で確認すべき事項は無数にあります。ぶっつけ本番は許されません。

もしも事故等があれば、保護者からの矢面に立つのは教員です。たとえ本音が「万博に無理矢理参加させた万博協会や自治体が悪い。」であったとしても、とても公言できないでしょう。

万博協会「団体でも5施設を見学できるよ!」

万博協会が掲載している資料には、教員の不安感を増幅させるページもあります。「会場内での過ごし方(例)<団体行動編>」や「会場内でのスケジュールと移動イメージ(一例)」です。ツッコミどころが満載です。

https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/2nd_siryou_r2.pdf

「予約なしでの学びも盛りだくさん」と強調していますが、どれだけの学校が集中し、どれだけ待たされるかは全く分かりません。

修学旅行や遠足等で予約不要の施設等を訪れる事もありますが、過去の経験則で待ち時間等は予想できます。しかし、万博に過去の経験則はありません。

9時半にバスターミナルに到着するのは可能ですが、15時半に退出するのは現実から程遠いです。帰校するのが17時頃になってしまう学校が続出します。お世話になっている小中学校では、日帰り遠足等では遅くとも15時半には帰校するスケジューリングを設定しています。

万博に伴う渋滞等に巻き込まれるリスクを勘案すると、現地の滞在時間は更に短くなります。昼食後にリングやその下を歩いて退出するのが現実的な流れでしょう。

様々なリスクを極力逓減するには、「熱中症リスクが低い5月中旬までに実施する、交通費は全額補助、訪問先パビリオンは年度内に決定する、下見はテストランも含めて開幕まで行う。」といった対策が不可欠でしょう。

学校から6月以降に訪問するのは極めてリスクが高いです。多くの児童生徒が体調を崩し、現地の救護所だけでは足りなくなるでしょう。大粒の汗をかき、疲労困憊の状態で帰校するのが明白です。

学校は情報不足?→保護者にも情報伝わらず

学校行事としての万博参加に関する情報は保護者にも伝わってきません。万博関係のチラシは山の様に配布されていますが、肝心の「学校行事」に関する情報は全くありません。小学校も中学校もノーコメント状態です。

我が家は開幕直後から5月中旬までの間に子供と一緒に万博会場を訪れたいと考えています。繰り返しとなりますが、参加者目線における万博最大のネックは「暑さ」です。