本日開催された令和7年1月大阪府教育委員会会議に於いて、大阪府立高等学校入学者選抜改善方針が打ち出されました。

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3月1日試験、6日後以降に合否発表

新たな学力検査日は3月1日、合格発表日は6日後(週休日を除く)としています。

https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/99670/r070120kaigishiryo.pdf(以下同じ)

今年の試験日は3月12日、合否発表日は3月21日となっています。それぞれ2週間ほど前倒しとなり、中学校で卒業式が行われるまでに進路が確定する見通しです。

重大な懸念もあります。3月1日は多くの高校で卒業式が行われます。入試日程の為に卒業式の予定を変更させるのでしょうか。2月25-26日に行われる国公立大学前期入試と高校入試・卒業式が連なります。高校の負担が激増しかねません。

複数校志願制は定員割れのみ対象

期待されていた複数校志願制度ですが、第2志望校が定員割れした場合のみに補充的に合格者が決定されるとしています。

出願段階ではどの高校が定員割れするかは全く分かりません。また、たとえば第1志望校がC問題、第2志望校がB問題を採用している場合、どの様に合否判定を行うのでしょうか。

一部で指摘されている「(たとえば)第1希望 北野 第2希望 天王寺」といった志願は可能ですが、事実上無意味です。第2希望には定員割れする可能性があり、かつ進学を許容できる高校のみを記入する事になるでしょう。

学力検査問題の見直し?

英国数は3段階の難易度別問題、理社は共通問題を採用しています。英国数で最も難しい「発展的問題」は全国屈指の難易度となっています。今後も複数の問題を準備しますが、出題内容は検討を行うそうです。

これまでの教育委員会会議等では全く触れられていなかった論点です。唐突感は否めません。ただ、異様に難しいC問題は中学校や家庭で対策するのは困難でした。塾通いが事実上必須となり、学校外教育費の高騰を招くという深刻なデメリットが生じていました。

【1/9更新】学習塾毎の大阪府立高校文理学科への合格実績一覧(2024年春)

英語資格(英検等)の読替率の下方修正

文理学科や国際関係科への志望者に大きな影響を及ぼします。非常に評判が悪かった民間英語資格による読替率を下方修正する案が提示されています。

文理学科に代表される進学校の受験では、英検2級等の英語資格が「事実上必須」となっています。英語C問題は非常に難易度が高いです。

1年前に行われた令和6年度入試では、合格者平均点は57.0点(100点満点)でした(←当初の記述内容に誤りがあったので訂正しました)。90点満点だと51.3点となります。


https://www.osaka-c.ed.jp/category/forteacher/investigate/publication/r06/R6_gakuryoku_jittai_tyousa.pdf

ここ数年では最も難しかったと言われています。英検2級等の有無が合否に直結しました。

その為、得点率80%に読み替えられる英検2級等を取得した上で、入試本番に臨むのが鉄則です。仮に当日の英語が非常に難しくても、80%の得点率が保障されます。

令和6年度は大半の英検2級利用者が最低保障に不到達か 令和7年度は第3回英検の結果が間に合わない 大阪府立高校入試

お世話になっている中学校では、「文理学科受験者は英検2級が必須、無ければ受験を止める。」という進路指導方針があります。塾も概ね同様であり、「文理学科を受験したいなら、英検2級を絶対に取りなさい。」との号令が掛かっています。

弊害も大きいです。英検2級取得によって、英語の受験勉強に手を抜いてしまう生徒が一定数いるそうです。一部の学習塾では「2級取得者は英語授業の受講免除可」としています。

高校の先生も苦言を呈しています。大阪府立大手前高校の校長先生が「英語資格の有無にかかわらず、最後まで英語の学習に地道に取り組んで入学してほしい」と語っています。

https://otemae-hs.ed.jp/otemae_wp/wp-content/uploads/2020/10/R2eigoshikakukatsuyou.pdf

英検の受験料の高さも問題です。2級は本会場受験で9,100円、何度も受けられるS-CBTは9,700円も掛かります。


(英検公式Web等より作成)
https://yodokikaku.net/?p=56191

子供の友人でも受かるまで何度も何度も受験している生徒がいるそうです。話を聞く限り、受験料だけで10万円以上は掛かっているでしょう。家庭の経済力によって英検等の受験回数が左右され、本試験の結果に影響を及ぼすのは大問題です。

読替率が7割となれば、異様に過熱した競争は幾分かは和らぐでしょう。難しいと言っても、適切な対策(と妥当な問題難易度)を行えば6-7割程度の得点は可能です。英検対策を本試験対策に振り返れば尚更です。仮に本番でその水準の得点が獲得できなければ、文理学科等へ入学した後の授業についていくのも難しいです。

心配なのは読替率9割となる英検準1級です。既に北野高校の入学者では英検準1級保持者が徐々に増加しています。9割読替を狙い、学習塾等が準1級の受験を推奨する動きが生じるのでしょうか。

学力検査問題の見直しと同様、英検の見直しは過去の教育委員会会議等で触れられた記憶はありません。唯一あったのは、経済力によって英検受験回数に差が生じる事を懸念した大阪私立中学校高等学校連合会の草島葉子氏の発言(第54回大阪府学校教育審議会)だけでした。本原案に至った議論過程が見えません。

令和10年度入試で導入予定

こうした変更案は令和10年度入試で導入される予定です。現在の中学3年生が受験するのは「令和7年度入試」なので、小学6年生が受験するのが【令和10年度入試」となります。

小学生を育てている家庭の方は、議論の行方を注視して下さい。中学校入学前後からC問題対策や英検取得を急いでも、水泡に帰す可能性があります。

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