先日、お世話になっている中学校から「進路の手引」が配布されました。「これ1冊を読むと、大阪府の高校入試が概要が理解できる」という内容です。進路関係の年間行事予定・進路選択・入試の仕組み・高校紹介・中学校の進路状況等が記載されています。
ただ、進学塾が配布・公開している様な、府立高校入試ABC問題の難易度や出題傾向・各高校毎の合格難易度(偏差値)・各教科毎の学習方針等はありません。
文理学科への進学希望者から就職希望者という、幅広い層を対象とした資料となっています。
保護者として最も気になるのは、子供が通学している中学校からどういった高校へ進学しているかという、具体的な進学先と人数です。
多くの大阪市立中学校は区役所のウェブサイトにて過去3年分の進学先と人数を公表しています。
「進路の手引」にはより詳細な数字が掲載されています。
ここ数年の大阪府の高校入試では、私立高校授業料無償化・通信制の人気増大といった大きな変化がありました。そこで、とある大阪市立中学校の過去4年間分の数字より、中学生の志望動向の現状や変化等を占っていきます。
まずは数字です。実数を掲載するのは支障があるので、公立高校・私立高校(全日制)・私立高校(通信制)・各種学校や就職等を大まかな割合毎に表形式へ表しました。
進学先等/入試年度 | R3 | R4 | R5 | R6 |
公立高校 | 49% | 55% | 53% | 55% |
私立高校(全日制) | 40% | 38% | 37% | 34% |
私立高校(通信制) | 9% | 5% | 7% | 9% |
各種学校・就職等 | 2% | 3% | 3% | 2% |
合計 | 100% | 100% | 100% | 100% |
大阪府内の中学生の進学先の目安となる「公私比率」、長らく7:3とされてきました。しかし最近は授業料が無償かつ設備等が充実している私立高校の人気が高まり、直近の公私比率は概ね6:4となってます。
ただ、大阪市内の中学校数校の数字を見る限り、公立高校と私立高校への進学者数には大きな差は無いのが実情だと感じました。
上記の表では公立高校への進学者が概ね半数強、私立高校等が半数弱となっています。
大阪市内は私立高校が非常に多い地域です。各校毎に様々なコースが準備されています。大学への推薦枠も豊富です。授業料の全面無償化による最も大きな経済的恩恵を受けるのは、私立高校の選択肢が豊富かつ一定以上の世帯所得がある大阪市民です。
大阪市は第2子保育料無償化や塾代助成の所得制限撤廃等、子育て世帯向けの経済支援を強化しています。ここ数年の充実ぶりは信じられないほどです。学校関係に全くお金を掛けないのは不思議ですが。
令和6年度入試では授業料全面無償化によって「私立高校への進学希望者が増えるのではないか」と言われていました。しかし、上記表を見る限り、そうした傾向は窺えません。
確かに直近の入試では私立高校のみを受験する「専願」が過去最高の31.64%となりました。
しかし、多くの府立高校が定員割れした為、公立高校を第1希望・私立高校を第2希望とする「併願」によって私立高校へ進学した中学生(いわゆる「戻り」)は減少したと推測できます。
親世代が最も注意深く情報を集めて欲しい「通信制」です。有名所では「N高」や「S高」です。先に紹介したとある大阪市立中学校では、毎年1割弱の生徒が通信制高校へ進学しています。
各高に関する様々なパンフレットが中学校を経由して配布されています。最も多いのは通信制高校に関する資料です(次いで専修学校や私立高校、公立高校は説明会一覧表のみほぼ皆無)。
全日制高校や定時制高校が殆どだった親世代にとって、通信制高校は未知の領域です。ウェブサイトを見てもどの様な生活を過ごし、どの様に学習を進めるかがよく分かりません。その為に資料を繰り返し配付し、説明会等への参加を促しているのでしょう。
最も多くを占めているのは公立高校への進学者です。大半は旧学区の学区内にある普通科や総合学科です。中学校の先生にとっても内情が分かっているので、進学先として話をしやすいのでしょう。
一方で旧学区外にある専門学科へ進学する中学生も一定数います。中には「こんな遠くまでどうやって?」と思う様な高校もありました。
特別支援学校への進学者もいました。ただ、中学校で特別支援学級に所属している生徒数と比べ、支援学校へ進学した生徒は極一部です。その差がどこへ進学したかは不明です。
保育園や小中学校で長きに渡って一緒に過ごした友人であっても、進学先として検討している高校は全くバラバラです。反対に学習塾で数年ぶりに再会したケースもありました。
授業料全面無償化や府立高校入試見直し等により、これから数年間の大阪府の高校入試はカオスとなります。学校(担任や進路指導主事)や学習塾の先生に訊ねる等をして、最新の情報を入手する様に務めて下さい。
「中学3年生になってからでも大丈夫」では手遅れです。特に英検や内申点は中1や中2の頑張りで決着します。中3で挽回できません。
- 投稿タグ
- 高校入試