在宅介護の末の悲劇です。母親が医療的ケアが必要な子供を放置して外出し、窒息死させた疑いが持たれています。
2023年1月、脳障害でたんの吸引が必要な次女(当時8歳)を自宅に置き去りにし、窒息死させたとして兵庫県警捜査1課と網干署は23日、母親で同県姫路市勝原区下太田の会社員、嶋田未左希(みさき)容疑者(32)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。認否などについて「言いたくありません」と話しているという。
逮捕容疑は23年1月27日正午~午後5時ごろ、当時住んでいた姫路市の集合住宅で、次女愛美優(あみゆ)さんを置き去りにしてたんの吸引を怠り、窒息死させたとしている。外出から戻った翌28日午前10時40分ごろ、嶋田容疑者が「子どもが息をしていない」と119番した。
網干署によると、愛美優さんは生後数カ月で脳障害が見つかり、寝たきりの状態で嶋田容疑者が介護していたとみられる。父親は同居しておらず、嶋田容疑者は3人の子どもと暮らしていたという。
警察によると嶋田容疑者の娘・愛美優ちゃん(当時8歳)は寝たきりで呼吸障害があり、気道を確保するため定期的なたんの吸引が必要でしたが、嶋田容疑者はこれを行わず放置し、窒息死させた疑いが持たれています。
嶋田容疑者は去年1月27日午後から翌朝にかけて一時外出し、愛美優ちゃんは自宅で1人となり、たんがのどに詰まるなどして窒息死したとみられています。
この家庭はいわゆる”ひとり親家庭”で、普段は嶋田容疑者が1人で介護をしていました。
愛美優ちゃんにきょうだいはいますが、事件の当日は親族に預けられており、自宅には母子2人きりだったということです。
母親を責めるどころか、長年の苦労に同情さえ感じます。本当に死に至らしめたのであれば、その行為は批難されるべきです。しかし、そこに至ってしまった経緯は十二分に斟酌されるべきです。
このニュースを聞いた直後、愛知県豊田市で三つ子の1人に暴行を加えて死に至らしめた事件を思い出しました。母親が社会的に孤立し、疲弊したが末の事件でした。
嶋田容疑者は3人の子供(長女・亡くなった次女・三女もしくは長男)と暮らしていました。父親は同居しておらず(別居か離婚かは不明)、ひとり親家庭でした。きょうだいを預けられる程度の地域に親族(母親?)が住んでいます。
事件当日はきょうだい2人を親族宅に預け、嶋田容疑者は愛美優ちゃんと2人で過ごしていました。
呼吸障害がある愛美優ちゃんは24時間の医療的ケアが必要でした。定期的に痰を吸引しなければなりません。朝も昼も夜も深夜もです。何らかの形で誰かが痰の吸引を担う時間がない限り、嶋田容疑者は常に医療的ケアに忙殺されていたでしょう。
当然ながら心身は極度に疲弊します。夜に寝ても寝た気になれません。幾度となく真夜中に医療機器の警報音に起こされたでしょう。自分の事はほぼできないと想像します。
両親がいる家庭ならば、父親と分担する事も可能でしょう(負担が母親に偏りやすいのが実情ですが)。しかし、嶋田容疑者の家庭はひとり親でした。全てを嶋田容疑者が担うしか、いや担わされていたと考えられます。
影響は母親のみに留まりません。きょうだいも不自由な生活を余儀なくされます。週末もお出掛けは難しいです。時にはほったらかしにされます。親族宅に預け、どこかへ連れて行ってもらう日も少なくなかったのかもしれません。
こうした生活に限界が来るのは容易に想定出来ます。中には一線を越えてしまう家庭があるのも無理はない・・・・と感じます。
自宅にて小さな乳児や寝たきりの高齢者の世話をしている家庭は数多くあります。しかし、乳児は日に日に生活し、満1歳が過ぎる頃には両足で立って移動する様になります。満3歳ともなればおしゃべりも自由です。
高齢者の介護も大変です。が、いつか終わりを迎えます。また、施設介護という選択肢もあります。
しかし、医療的ケア児は違います。介護に終わりが見えません。更にケア児より両親が亡くなるケースもあります。死後のケアはきょうだいが担うのでしょうか。
非常に残念な話では、現代社会では一定の割合で生後直後や間もない間に寝たきりとなる乳幼児が発生してしまいます。されど、児童に対する在宅での医療的ケアに必要な労力等を社会全体で分かち合う仕組みは不十分です。
事件が起きたのは兵庫県姫路市でした。偶然にも兵庫県知事選挙に関する様々な疑惑が取りざたされています。姫路市を管轄しているのは、兵庫県姫路こども家庭センターです。こうした家庭の存在を児相や姫路市は認識し、手を差し伸べようとしていたのでしょうか。
まだ事件の詳細は報じられていません。この家庭に何が起きていたのか、非常に気になります。