第48回衆議院議員総選挙の投票日は平成29年10月22日です。期日前投票も実施中です。
多くの政党が主張しているのは「無償化による子育て支援」です。数年前には全く聞こえてこなかった内容です。
いち早く今春から教育・保育無償化を導入したのが大阪府守口市です。現場では何が起きているのでしょうか。下記記事も併せてお読み下さい。
かつて大手電機メーカー「三洋電機」の企業城下町として栄えた大阪府守口市。同社が2009年にパナソニックに買収・子会社化され、製造業の空洞化、少子高齢化が著しい。
そこで守口市は今年4月、住民の子育て支援策として全国の市で初めて0~5歳児の幼児教育と保育を全面的に無償化した。所得制限はなく、子ども2人以上なら保育料が年100万円以上浮く世帯もある。
安倍晋三首相は2月の衆院予算委員会で「先進的な取り組みには敬意を表したい」と評価した。教育無償化を憲法改正の項目に掲げる日本維新の会は、衆院選公約で守口市の取り組みを紹介している。
減少を続けていた人口は今年4月の約14万3800人で底を打ち、微増に転じた。西端勝樹(にしばたかつき)市長が「子育て世代に定住してもらいたい」と狙いを語る通り、0~5歳人口は4月1日現在の6091人から半年間で124人増加。20代人口も1万4755人から191人増えた。
だが、現地を訪れると、予期せぬ悲鳴が子育て世代から聞こえてきた。保育所に隣接する公園で1歳の長女を遊ばせていた20歳のシングルマザーは、市に保育所の利用を申し込んだが、返事はまだないという。派遣会社に登録し、仕事が入ったときは同居する両親に長女を預かってもらう。「子どもにお金がかかる。早く預けて、本格的に働きに出たいのに」
同市では、無償化によって保育所の利用申し込みが前年より4割も増え、4月現在で48人(前年同期は17人)の待機児童が発生した。無償化の財源6億7500万円を賄うため、15ある公立の幼稚園と保育所などを来年3月に三つの公立認定こども園に統廃合し、民間への移管も進める。私立も含めた未就学児の受け皿が市全体で7%(364人)減り、待機児童がさらに増える可能性がある。
同市は財源確保策としてさらに、市独自で行っていた保育士給与の加算8000円(月額)を今年度、6000円減らした。国が6000円の加算を決めたので給与は変わらないが、他の自治体に対する優位性が失われる。保育士を確保できず、受け入れを減らす認定こども園も出ている。
市内の私立認定こども園7園は9月、加算復活の要望書を提出した。「三郷幼稚園」の津嶋恭太園長は「待機児童対策で期待される一方で、首を絞められているようなもの」と話す。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171013/ddm/001/010/118000c
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171013/ddm/003/010/100000c
守口市の狙いは的中しました。この半年間で就学前児童数は2%も増加し、少子化に一定の歯止めが掛かりました。が、副作用は強烈です。
保育所等への申込みが4割も増加、待機児童も急増しました。入所できた世帯は無償化によるメリットを受けました。中には年間100万円以上も浮いた世帯もあるそうです。
一方、入所できなかった世帯、認可外保育施設を利用したり家庭で保育している世帯には何らメリットはありません。入所世帯と被入所世帯に著しい差が生じています。不公平感は強いです。
また、必要となる年間7億円弱の財源を確保する為、同市は公立幼稚園・保育所の統廃合や民営化、そして保育士給与の加算を減額したそうです。今後、保育所等の新設や保育士の採用が順調に進まない恐れがあります。
子育て世帯にとって、無償化による経済的負担の減少はありがたい話です。「だったらもう1人産みたい」という方もいるでしょう。
しかし、子育て世帯(これから子育てする世帯や若年層も含む)が本当に求めているのは「就学前教育・保育の無償化」でしょうか。居住地域・世帯所得・働き方等によって、何を求めているかに大きな違いがあるでしょう。
残念ながら、各党や政府機関等が子育て世帯の声を幅広く聞いた記憶はありません。無償化も良いですが、まずはニーズを的確に把握して欲しいです。
ちなみに私が願っているのは、小中学校の充実と高等教育の私費負担軽減です。
塾等を利用しなくても小中学校で十分な学力が身に付き、高等教育費を就学前から計画的に積み立てせずとも払える水準に抑制できないものでしょうか。