乳児の育児はストレスフルです。全く目が離せず、常時の緊張感を強いられます。しかし、暴行を加えて死に至らしめる行為は許されません。

生後11か月の長男を床に投げつける等をして死なせた疑いで、26歳の母親が逮捕されました。育児に不安がある等の事情から、児童相談所が積極的に指導等を行っている最中の悲劇でした。


 生後11カ月の長男に暴行を加えて死亡させたとして、千葉県警は10日、傷害致死などの疑いで、母親の無職野中千宙容疑者(26)=同県船橋市藤原=を逮捕した。

「ストレスで頭にきて、平手で殴って床に投げてしまった」と容疑を認めている。県警は日常的に虐待が行われていた可能性もあるとみて調べる。

逮捕容疑は昨年3~7月、船橋市の自宅アパートで長男の千巴弥ちゃんに暴行を加え、死亡させた疑い。司法解剖の結果、千巴弥ちゃんには頭蓋骨骨折や脳内出血がみられた。

県警によると、同年7月26日、野中容疑者が「息子が布団の中で冷たくなっている」と自ら110番して事件が発覚。当時は夫と長女との4人暮らしだった。

県などによると、2022年8月、千巴弥ちゃんが生まれた病院から通報を受けた県内の児童相談所が問題を把握。家庭訪問を繰り返したが、長女も含めて外傷などは認められず、虐待は把握できなかったという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/24cbe1548b2d6e12514f12ce196c935ee7819345

一連の経緯を時系列に落とし込みました。

2022年野中容疑者が妊娠したが、一度も妊婦健診を受けていなかった。
野中容疑者がからネグレクトの疑いがあるとして対応していたということです。
2022年8月25日病院にて千巴弥ちゃんを出産した。妊婦健診を受けずに出産したことなどから、病院が千葉市内の児童相談所へ通報した。
8月30日ネグレクトの疑いがあるとして、児相が千巴弥ちゃんを一時保護した。
2023年4月12日一時保護を解除した。野中容疑者は「手元で育てたい。一緒に暮らしたい」と話していた。夫婦・長女(第1子)・千巴弥ちゃんの4人暮らしが始まった。
5月30日~7月10日この間に児相が家庭訪問を4回行った。長女や千巴弥ちゃんに外傷等は認められず、虐待は把握できなかった。野中容疑者は「養育で困ってはいない」と話していた。
3~7月野中容疑者が千巴弥ちゃんに何度も暴行を加えた。
赤ちゃんが泣き続けている声を近隣住民が何度も聞いていた。
7月20日児相が5回目の家庭訪問を予定していたが、野中容疑者と夫の発熱によって延期された
7月26日野中容疑者が「息子が布団の中で冷たくなっている」と自ら110番した。
千巴弥ちゃんは搬送先の病院で死亡が確認された。死因は脳損傷。頭蓋骨骨折と脳内出血が認められた。
7月27日児相が家庭訪問を予定していた。
2024年7月10日野中容疑者が千葉県警に逮捕された。「ストレスで頭にきて平手で殴って床に投げてしまった」と話しているという。

千葉県の児童相談所と言えば、野田市で栗原心愛(みあ)ちゃんが父親に虐待死された事件で適切な対応を行わずに強い批判を浴びた事が記憶に新しいです。それ以後、施設や人員の拡充等を図り続けてきました。

千巴弥ちゃんは出生僅か5日後に保護されました。母親たる野中千宙容疑者が一度も妊婦健診を受けていなかった為です(いわゆる野良妊婦)。

噂半分には聞いていましたが、未受診で出産すると本当に病院が児相へ通報するのですね。これに加え、退院するタイミングを待ち構えたかのように児相が出産5日後い一時保護を行いました。対応が非常に早いと感じました。

保護を解除したのは8か月後でした。この間、児相は野中千宙容疑者と何度も面談し、千巴弥ちゃんの保護を解除できるか検討を続けていた筈です。

野中容疑者一家の生活や「手元で育てたい。一緒に暮らしたい」との要望を受けて、一時保護を解除しました。その後も概ね月1回のペースで面談を行い、生育環境や虐待の有無等について調査を行っていました。

面談において児相は虐待が行われていたとは確認できませんでした。しかし、野中容疑者は千巴弥ちゃんへ何度も暴行を加えたとされています。児相と容疑者の認識が食い違っています。

悲劇は7月26日に起きました。野中容疑者が千巴弥ちゃんを平手で殴り、床に投げつけました。ただ、これだけで頭蓋骨骨折や脳内出血が起こるとは考えにくいです。より強度な暴行が何らかの機会に行われていたと推測されます。

現時点で報じられている限りとなりますが、児相の対応に問題等はなかったと感じています。未来永劫に渡って一時保護を継続するのは困難であり、何らかのタイミングで解除をしつつも定期的・継続的に見守るのが求められる姿でしょう。

但し、野中容疑者が暴行を加えていた期間に何度も児相は面会を行っていました。また、近隣住民は子供の泣き声が絶えなかったとも話しています。

虐待が行われているという兆候を捉える事はできなかったのでしょうか。非常に難しい問題です。