2025年度保育所等一斉入所申込状況分析、第9回は福島区です。
※10月28日に発表された数字に基づきます。保育士等優先利用数は申込者数に含んでいます。
昨年と比較して、入所倍率が0.1倍以上増加した箇所はオレンジ、逆に0.1倍以上減少した区は水色、入所倍率が2倍を超えた箇所は赤、保育士等優先枠の申込は緑で表示しています。
阪神本線の「南北問題」
福島区の申込数は前年より26人減の594人、募集数は20人減の573人となりました。ほぼ横ばいの数字です。申込数も募集数も同程度に減少した結果、入所倍率はほぼ前年通りの1.04倍となりました。各年齢毎の数字も大きな変化はありません。
同区の特徴は「南北問題」です。保育所等への申込状況等が、阪神本線の北側と南側で全く異なっているのです。阪神本線に加え、隣接している国道2号や阪神高速3号線を行き来する心理的ハードルは高いです。こうした障害物を越えずに保育所等へ通いたいと願うのは当然の心理です。
(以下、阪神本線より北側の地域を「北部」、南側の地域を「南部」とします。)
全年齢を通じた入所倍率が2倍を超えた保育所等は4施設です。幼保連携型海西ひばりこども園・保育所第二和光園・海老江ひばり保育園・アポロ鷺洲保育園です。いずれの区北部です。2施設が鷺洲地域、2施設が海老江地域です。顕著に表れています。
鷺洲地域は大阪市が「事業者からの応募が無い」と嘆いています。梅田に近く、保育所等よりもマンション等の建設が優先されているのが主な理由です。
海老江地域では海老江ひばり保育園への一極集中が生じています。近隣にアイグラン保育園海老江や海老江保育所があるのですが、これらを第1希望とする児童は相対的に多くありません。3駅の目の前にあり、新設間もない海老江ひばり保育園への入所を願う保護者が多いのでしょう。
ただ、0-1歳児の入所倍率が余りに違いすぎるので、少なくない家庭が中間発表以降に希望変更すると推定しています。
鷺洲・海老江地域の1-2歳児は本当に厳しい、南部も不足気味
より細かく見ていきます。
0歳児入所倍率0.60倍はほぼ前年同値です。申込数も募集数も若干ながら減少しています。2020年・2021年は0歳児申込数が過去最多の175人となりましたが、わずか4年で3分の2程度にまで減少しています。
第1希望者が募集数を上回ったのは、保育所第二和光園・優心保育園・新福島ちどり保育園・海老江ひばり保育園のみでした。東側から阪神野田福島駅を取り囲む様に位置しています。
特に海老江ひばり保育園は募集数3人に対して21人が第1希望としており、入所倍率は7倍となっています。きょうだい加点等がある児童で充足してしまうでしょう。ただ、前年は6人の募集がありました。様々な事情によって募集数を半減せざるを得なかったのだと推測しますが、入所を希望している子育て世帯には大打撃です。
これらの保育所等へ入所できなかった児童が、第2希望以下の保育所等での調整対象となります。地域全体では0歳児申込数と募集数が同程度なので、0歳児はいずれかの保育所等へ入所できる見通しです。ただ、第1希望とした保育所等へ入所できるかは定かではありません。
反対に南部地域に0歳児入所倍率が際だって高い保育所等はありません。ほぼ第1希望通りで内定すると考えられます(新福島ちどり保育園を除く)。
途端に厳しくなるのが1歳児です。申込数も募集数も前年・前々年から大きな変化はありません。各保育所等の傾向も同様です。
入所倍率が3倍を上回ったのは、幼保連携型海西ひばりこども園・海老江ひばり保育園の2園でした。名前の通り、両園は共に社会福祉法人麦の穂が運営しています。同法人の保育理念等に共感し、入所を希望する家庭が多いのでしょう。
要注意なのはやはり北部地域、特に鷺洲周辺です。保育所第二和光・園・あいあい保育園鷺洲園・アポロ鷺洲保育園はいずれも入所倍率2倍を超えており、半分以上の第1希望者が入所できない見通しです。
更に心配なのは、海老江ひばり保育園を第1希望としている園児の存在です。募集数6人に対し、なんと35人が第1希望としています。残念ながら入所できなかった児童の中には、一定程度の加点がある児童も含まれていると考えられます。
こうした児童が第2希望として鷺洲地域の保育所等を記入していたら、一定程度の加点がない入所希望者は入所調整に於いて劣後してしまいます。
福島区北部地域には1歳児入所希望に見合うだけの保育所等は整備されていません。家庭保育を延長するか、企業主導型保育や認可外保育施設を利用するか、他の地域(福島区南部、おしくは北区西部?)の保育所等を検討するかの選択となるでしょう。
相対的に南部地域は落ち着いています。とは言ってもふじのもり保育園・新家保育園・中之島ひばり保育園・あい保育園玉川・吉野ちとせ保育園で入所倍率2倍を超えています。何らかの加点がなければ入所できない可能性があり、決して楽観はできません。
2歳児はより際だった傾向が現れます。北部地域は深刻な入所難となっています。保育所第二和光園・保育所和光園・アポロ鷺洲保育園の入所倍率が4倍を超えました。希望者にはきょうだい加点や認可外保育加点等がある児童が多く含まれていると考えられます。
この地域の深刻な保育所等不足を象徴しているのが、ここはぐ鷺洲保育園(地域型保育事業)への申込者です。一般的には地域型保育事業を第1希望とする2歳児は決して多くないのですが、同施設では2歳児募集1人に対して3人が第1希望としています。1歳児の希望者も非常に多いです。
原因は明白です。一定期間に続々と大規模マンションが建設されたのですが、それに見合う保育所等が整備されませんでした。数年後の現在は急激な保育所等不足が生じています。
今後数年掛けて保育所等を整備しても、その頃には局地的な急激な少子化が生じているでしょう。住民が特定の年齢層に偏るのはニュータウンと同じです。
3歳児は貴江田幼稚園に注目
3歳児も難しいです。地域型保育事業の卒園児や、新たに保育所等を利用したい児童があふれ出しています。
募集数55人の内、大阪市立貴江田幼稚園(認定こども園)が20人を占めています。保育所がなかなか新設されない鷺洲地区のど真ん中(鷺洲小学校に隣接)にあります。区東部地域の3歳児入所希望者を一手に引き受けます。募集予定が無い保育所第二和光園や海老江ひばり保育園を第1希望としている園児も、一定数が貴江田幼稚園に第1希望を変更するでしょう。
同幼稚園は大阪市が試験的に始めた公立こども園です。他の公立幼稚園と比べて非常に多くの入所希望者がある事から、今後は他の幼稚園もこども園へ移行する可能性が高いと考えています。幼稚園の短い保育時間や弁当持参は、忙しい共働き世帯のニーズと著しく乖離しています。
また、3歳児は一定数が幼稚園に進学する為、最終的な募集数は中間発表時点での数字を上回るのが通例です。このタイミングで区外や市外へ転出する家庭もあります。
過去の事例を聞く限り、既に何らかの保育施設を利用している児童については入所先が見つからない事態は避けられるものだと考えられます。反対に全くの新規で保育所等を利用したい児童については、幼稚園や企業主導型保育といった選択肢も検討が必要です。
今後の予定&運営支援のお願い
今年も各区毎の申込状況等を分析し、様々な情報等を掲載する予定です。次回は東淀川区を予定しています。リクエストを頂きました。
「○○区の情報を早く知りたい」「××保育所は昨年より入りやすいの?」等のリクエストがありましたら、記事へのコメントや問い合わせからお寄せ下さい。現在も体調不良が続いています。お時間を頂く場合がありますが、ご了承下さい。
同時に、皆様に運営支援へのご協力をお願いしています。
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