大阪府教育庁は新たな選抜制度を令和8年度入試から導入する予定でしたが、2年先延ばしにする意向を明らかにしました。中学校等が強く反発したと見られています。
大阪府教育庁が検討を進める府立高校入試の2月への日程前倒しなどを含めた新たな入学者選抜制度について、同庁が令和10年度入試からの導入を目指していることを25日、明らかにした。現在の小学6年生が高校入試する年度から変更される。
府立高入試を巡っては、授業料無償化で私立高を選ぶ生徒の増加や、全国的な通信制高人気の高まりなど進路が多様化。今春入試では約半数の学校が定員割れするなどし、府立高志願者の確保に向け、現行制度では生徒の需要に応えきれないと判断した。
新制度では、これまで3月に実施していた一般選抜と2月中旬の実技を伴う特別選抜を2月下旬に一本化。入試時期を早めることで、高校側が生徒の受け入れ態勢を整えやすくする。生徒側にとっては、早く進路が決まるメリットがあるという。このほか、各校が求める人材を選抜する「アドミッションポリシー選抜枠」(仮称)なども創設する。
当初は8年度入試からの変更を目指していたが、「入試日程の前倒しに合わせ授業進度を早める必要が生じる」など中学校側が反発。水野達朗教育長は同日の府議会本会議で「市町村教委や中学校関係者などの意見も聞きながら制度設計を進める必要がある」と述べ、当初案から2年遅れの実施を表明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/aded389ad32cfa90cecaebb5973249451a8afd68
2024年9月25日に開催された大阪府議会本会議にて、紀田馨委員(維新)の「大阪府学校教育審議会からの答申を踏まえた新たな選抜制度の導入時期を伺う」との質疑に対する発言でした。映像等は大阪府議会議会中継→令和6年9月本会議→紀田馨(維新)から確認できます。
紀田委員は「府立高校の今後のビジョン」として、(1)学校長への予算供与・権限強化、(2)3年連続定員割れした府立高校における募集停止の検討状況及び選定基準、(3)新たな選抜制度の導入時期、の3点を取り上げました。
この質疑で紀田委員は公立高校の競争倍率と最寄駅からの距離・後者の築年数・偏差値(みんこう基準?)を記した散布図を示しました。これらによると最寄駅からの距離や築年数と競争倍率との相関関係はない一方、偏差値とは強い相関関係があると示しました。
一方で同様に私立高校における競争倍率と偏差値を散布図に落とし込んだ所、相関関係を見いだす事は出来ませんでした。
実は約半数の私立高校が定員割れしています。その原因は偏差値以外の何かだと考えられる反面、公立高校は偏差値が大きな影響を及ぼしています。各公立高校の特色等ではなく、偏差値が強く意識されていると指摘しました。ここから学校長の権限強化を導き、教育長への質疑に繋げました。教育長は長文のペーパーを読み上げて答弁しました。定員割れした府立高校の取扱いも同じ様に答弁しました。
しかしながら、新たな選抜制度の導入時期に対する答弁はやや異質でした。紀田委員が「一部報道では新たな選抜制度を令和8年度選抜から導入するとありましたが、これは事実でしょうか。いつから導入されるのでしょうか。」と質疑しました。
これに対して水野教育長は「新たな選抜制度については、市町村教育委員会や中学校等との関係者の意見もお聞きしながら、具体的な制度設計を進めていく必要があると認識しています。その為、来年度に新たに中学生となる子供達が高校受験をする令和10年での導入を目途に検討していきます。」と答弁しました。短い言葉で端的に述べるに留まりました。
学校長権限や募集停止等に比べ、選抜制度に関する教育長の答弁は熱量が冷たく感じました。あくまで答弁を見た限りですが、「令和10年への延期は本意では無いのではないか」と感じました。
延期に追い込まれた理由の一つは「中学校からの反発」とされています。大阪府学校教育審議会の会議映像や資料等には何度か目を通しましたが、「中学校の実情を踏まえていない、空理空論が多い」という感想を抱きました。同じ様な観点から府が冷や水を浴びせられた格好です。審議会等の場で市町村教委や中学校関係者等の意見も聞くべきでした。
であれば、同審議会等が答申した「入試制度の一本化」や「複数受験制」等への反発も無いとは限りません。新たな選抜制度が原案通り導入されるのか、それとも新制度や現行維持部分に対する更なる不満が噴き出すのか、少し慎重に見ていく必要がありそうです。
特に同審議会にゲストスピーカーとして呼ばれた大阪中高連の草島会長が指摘した英検優遇制度や教育単価の低さに対し、同審議会が完全に無視をしたのは幻滅しました。
英検受験に対する経済的負担が重く、子育て世帯間の経済格差によって合否が大きく左右されるのが現状です。いくら子育て世帯への経済的支援を充実させても、それ以上の金額が英検受験や塾代といった学校外教育費で消えてしまいます。私費負担が重すぎます。
特にC問題対策は塾が必須です。中学校から「対応できない」と言われました。
公立高校の情報発信に課題も
中学生の子育てをしていると、私立高校への希望者が年々増える理由がよく分かります。設備やカリキュラム等の充実に加え、生徒勧誘に向けた情報発信が極めて盛んなのです。子供は毎日の様に学校から「私立高校説明会」「オープンスクール!」「合同説明会」などのチラシを持ち帰ってきます。カラー印刷され、写真やイラスト等がふんだんに用いられています。中には10ページ以上に渡るパンフレットを配布している私立高校もあります。
反対に公立高校に関係するチラシ等は殆どありません。各校毎の説明会に関するチラシは皆無、配布されたのは「大阪府公立高校進学フェア2025」の案内チラシと高等学校説明会等実施一覧を印刷したペーパーのみでした。
この時点で勝負が付いてしまいます。子供が「○○私立高校に行きたい!」と言い出した、親が考えを翻させるのは至難の業です。説得し、更には公立高校受験へ向けた勉強も促さなければなりません(大阪府の私立高校の合否の大半は、中学校での実力テストで決定する)。
同審議会では公立高校の広報活動を強化する必要性にも言及されています。が、これまでの習慣等はなかなか変わりません。一部の公立高校に受験生が集中し、それ以外は徐々に競争倍率が低下していくのでしょう。