(10/4追記)
原告の代理人弁護士が記者会見を行い、判決の趣旨等が明らかになりました。

2022年10月の東京地裁判決では、ホットドッグの危険性は高くないとして、請求を退けた。しかし、東京高裁は9月26日、窒息の恐れがあるホットドッグの危険性について、保育所所長は調理担当者や保育士に十分に認識させ、提供方法について十分配慮するよう周知し、実践させる義務を怠ったと指摘、職務上の注意義務違反を認める判決を下した。(中略)

「誤嚥事故は日本中で起きていますが、それを防ぐために、厚労省などから食材の選定や提供方法など、詳細なマニュアルが出ています。これを守っていれば基本的に事故は防げるという形になっています。しかし、マニュアルの内容を知っていながら、保育所ではほぼ守られていなかったということです。そのために不幸な誤嚥事故が起きてしまった。

判決では、保育士個人の過失ではなく、組織自体において誤嚥事故を防ぐシステムがとられていなかったことが強調されています。今回の判決は画期的なものと考えています」

https://news.yahoo.co.jp/articles/c6ea36afe4b848302b4113d3270b7daaf3b6ca27

高裁判決は、保育所の運営に関する国の指針で「ソーセージは縦半分に切って提供する」とされていることや、全国で同種事故が起きていたことなどを踏まえ、「保育所の管理職員が適切な提供方法を周知すべきだったのに怠った」と指摘。市の責任を認めて1審判決を取り消し、男児らの逆転勝訴とした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ca57547a010da5d45a2153c2c10cbbb495296d22

「ソーセージは縦半分に切って提供する」と定めているのは、教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドラインです。

「誤嚥・窒息につながりやすい食べ物の調理について」という項目があり、「調理や切り方を工夫する食材」の一つとしてソーセージが挙げられています。


https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/03f45df9-97e1-4016-b0c3-8496712699a3/39b6fd36/20230607_policies_child-safety_effort_guideline_02.pdf

ガイドラインからは「年連に関係なく、ソーセージは縦半分に切って使用する」と読み取れます。被害者の年齢や発達状況は関係ありません。仮に被害者が発達の遅れがない児童であっても、このガイドラインの趣旨等は適用されるものと考えられます。

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保育園でホットドッグを喉に詰まらせた事によって寝たきりとなった事件につき、東京高裁は1審判決を取り消した上で約1億800万円の支払いを命じました。

 千葉県四街道市立の保育所で2017年、おやつのホットドッグを喉に詰まらせ、低酸素性脳症で寝たきりになったとして、当時3歳の男児と両親らが市に慰謝料など約1億2千万円を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は26日、請求を棄却した一審東京地裁判決を取り消し、計約1億800万円の支払いを命じた。

 男児は15年4月、「四街道市立中央保育所」に入所。事故が起きた17年2月当時、発達の遅れがあったため1歳児クラスだった。

 22年10月の一審判決は他の食材や献立と比べて危険性は高くないなどとして請求を退けたが、高裁の永谷典雄裁判長は「男児は知的障害もあって食べ物をよくかまないでのみ込もうとすることがあり、保育士もそれを認識していた」と指摘。「かむ力が十分でない男児にウインナーの皮を取るなどの配慮をせず、注意義務に背き違法」と判断した。

 判決によると、ホットドッグは保育士がちぎって食べさせていた。4口目を口に含んだ後、男児が苦しそうにしたため、救急車を呼んだが約22分間心肺停止となった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/18e078875ca1dee4761bc62910fffd1faad93b40

原告の請求が退けられた1審と異なり、控訴審では原告側のほぼ全面的な勝訴となりました。1審では食材や献立に注目しましたが、控訴審では被害男児の障害や特性や保育士の認識・食事の提供方法を重視した様に読み取れます。

四街道市立中央保育所は同市中心部にあります。市役所の目と鼻の先です。

四街道駅は千葉駅や東京駅へ直通する列車もある事から、同保育所はこうした地域で働いている方も利用していると考えられます。

1審判決はこちらです。

▽市立保育所に通園していた当時3歳2か月の幼児が給食のホットドッグを誤嚥して心肺停止となった事故につき、幼児にホットドッグを提供したことや誤嚥後の対応等に違法性はないとして、幼児及び家族の市に対する国家賠償請求を棄却した事例(東京地判令4・10・26)

https://hanreijiho.co.jp/wordpress/book/%E5%88%A4%E4%BE%8B%E6%99%82%E5%A0%B1-no-2592/

【行政】市立保育所に通園していた当時3歳2か月の幼児が給食のホットドッグを誤嚥して心肺停止となつた事故につき、幼児にホットドッグを提供したことや誤嚥後の対応等に違法性はないとして、幼児及び家族の市に対する国家賠償請求を棄却した事例 令和4年10月26日東京地裁判決

http://shimanami.way-nifty.com/report/2024/07/post-75ca58.html

上記判決文には「本件ホットドッグが、これまで提供されていた食材や献立に比べて、特に誤嚥の危険が高い食材や調理方法を採用しているともいえない」「料理の提供に当たっては、食感の異なる複数の食材を使用するのが通常であって、それ自体が誤嚥事故を惹起する行為であるとはいえない」「1歳児クラス向け給食の献立とは別の離乳食に近い特別な食事を提供すべきであったとはいえない。」「本件保育所において現に1口大のパンや果物等を問題なく食べられていたことなどからすると、離乳食に近い食事以外の摂食が困難であったとは認め難い」「1口ごとに牛乳を口に含ませるなど、誤嚥事故等が生じないよう極力の配慮をしていたものであり、原告X1の食事介助に当たって求められる注意を十分に払っていたというべきである」等とあります。

被害男児の事故当時の年齢は3歳2カ月でしたが、様々な障害があったので1歳児クラスに所属していました。1審での事実認定によると事故前半年間にせんべい・プルコギ・焼売を、事故当日は白飯や豆腐ハンバーグも食べていました。

果たしてウィンナー・パン・キャベツ等で構成されたホットドッグを提供するに当たり、保育園はどれだけの注意義務等を尽くす必要があったのでしょうか。

あくまで家庭での話となりますが、我が家ではホットドッグを提供した事はありません。単純に作るのが面倒なのと、子供が綺麗に食べるのが難しいからです。パンにウィンナーやキャベツが挟まっていると、どうしても零してしまいます。であれば、初めからパン・ウィンナー・野菜類を分けて提供します。

パンは1歳児の頃から食べていた記憶があります。しかし、ウィンナーはもう少し後でした。歯で噛みきれず、飲み込み易い丸みを帯びているからです。当初はハサミで細かく切って提供し、今でもある程度の大きなにカットしています。

誤嚥事故は本当に怖いです。仮に命が助かったとしても、その後に意識等が回復しない事例を数多く見聞きしています。窒息する可能性がある食材は極力排除(もしくは小さくカットする)し、安全サイドへ寄せていくのが求められているのでしょう。