豊中市が鳴り物入りで始めた朝7時からの見守り事業は、実は典型的な「お役所仕事」でした。

 大阪府の豊中市立小全39校で4月から開門時間を繰り上げ、授業開始前の朝に児童を受け入れる事業で、1校あたりの利用人数が1日平均2人程度に低迷していることが、市への取材でわかった。安全のため「親が登校に付き添う」運用だが、通勤と通学の方向が異なる不便などで保護者が利用を見送っているとみられる。市は今夏にも保護者にアンケート調査し、運用方法の見直しを検討する。(中略)

 市によると、事業が始まった4月8日から今月15日の利用人数は延べ1606人。約690家庭が利用登録をしているが、1校あたりの1日平均利用人数は2人程度で、利用ゼロも2校あった。昨年11月から同種事業を行っている東京都三鷹市の1校あたり1日10人弱と比べても少ない。

 豊中市には「学校と通勤で利用する駅の方向が反対。登校時の付き添いが負担で利用しづらい」との声が寄せられている。共働き世帯が少なくてニーズが乏しい地域もあるとみられる。市の担当者は「利用が見込めない学校では事業中止も含めて検討したい。アンケートでニーズを把握し、より良い制度にしたい」と話している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8cc495ae63a5cec8c09ff7132d343a3a34fbceaf

今年3月にご紹介しました。

【ニュース】小学校で朝7時からの見守り事業実施へ 大阪府豊中市

事業を実施したのは、朝7時前に多い時で100人もの小学生が校門前で待機している実態があったからです。しかし、事業実施後にこの行列は雲散霧消してしまいました。

豊中市には39小学校(義務教育学校を含む)があります。しかしながら、1校あたりの登録家庭数は約18家庭しかありません。1日平均利用人数は1校あたり僅か2人のみでした。

役所絡みではこうした話は少なくありません。役所が実施する事業と市民ニーズが食い違い、蓋を開けてみると利用者が殆どいなかったという内容です。

豊中市のとある保護者が「登校時の付き添いが負担」とコメントしているのがその証左です。ただ、保育園児は親が付き添って登園しています。本当にどれだけの負担になっているかは慎重に見極める必要があります。

こうした事業を実施するのであればまずは保護者アンケートを行い、その上で一部の学校(100人の行列が出来ていた学校等)で試験的に実施するのが合理的です。

事業実施前に豊中市は保護者アンケート等で利用ニーズや希望等を調査しなかったのでしょうか。今から「ニーズを把握」するというのは遅すぎます。大阪市と同じ、豊中市でも共働きが多い地域と少ない地域があります。主たる勤務地の一つたる大阪市への通勤時間も地域によって異なります。

4月は入学した直後という時期もポイントとなります。新1年生は学校に慣れるだけで精一杯です。授業も殆ど進みません。決まった時間に登校し、机に座って先生の話を聞き、給食をしっかり食べるだけでも十分です。1年生1学期は未だ年長児の延長です。

そこに朝7時からの登校を付け加えるのは、明らかに過重な負担となります。これを避ける為に、子供が8時前後まで自宅で過ごしたという家庭もあるでしょう。

また、こうした極一部の世帯を対象とした事業にあたっては、低額であっても何らかの利用料・登録料を徴収するのが望ましいです。こうする事により、「無料だから取りあえず申し込む・登録する」といった弱いニーズを排除できます。

以前にも指摘した通り、そもそも論として「朝7時から小学生を登校させる事の是非」も吟味されるべきです。早朝からの預かりを必要とする家庭は、退勤時間も遅いでしょう。

朝7時から夜7時前後まで学校等で滞在する子供には、非常に大きな負荷が掛かります。夜に帰宅してから食事・入浴・宿題等をしていたら、あっという間に夜10時になってしまいます。十分な睡眠時間も取れません。

保育園児であれば、夜に帰宅した後はリラックスタイムとなります。しかし、小学生は宿題や翌日の準備等が待っています。それが大きな違いです。

親世代が子供だった当時と比べ、明らかに今の子供の方が負担が重いです。その背景には共働きや核家族の増加、塾通いの激化もあります。

社会の様々な変化が、最終的には子供にしわ寄せされていると感じています。最たる物は子供の減少です。