大阪市における待機児童(2024年4月1日時点)が過去最少の「2人」と発表されました。しかし、保留児童数は昨年より110人多い2,541人となっています。

 大阪市では、待機児童を含む利用保留児童の解消を最重要施策として位置づけ、待機児童解消特別チームを立ち上げ、この間、従来の手法にとらわれず、あらゆる手法を駆使してその解消に取り組んできました。

これらの結果、保育所等在籍児童数は55,389人となり、令和6年4月1日現在における保育所等利用待機児童数は、ゼロとはならなかったものの、昨年度の同時期の4人から2人減の2人となりました。(以下省略)

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000626859.html

詳しい資料も掲載されています。

Download (PDF, 922KB)

待機児童等の内訳です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000626859.html

保育所等への入所のしやすさを反映しているのは、「待機児童」ではなくて「利用保留児童数」です。

昨年と比べて新規利用申込数が75人増加しましたが、利用決定児童数は27人減少しました。利用保留児童数は昨年より110人多い、2,451人に達しました。入所決定率は80.1%で下。

「利用保留児童」から一定の基準に基づいて除外された後に人数が「待機児童」とされます。昨年で最も多かった理由は「特定保育所希望等」でした。特定の保育所等を希望し、他に利用可能な保育所等に入所しなかった児童です。

今年で最も多い理由は「育休中」でした。育休制度が年々充実かつ使いやすくなった為でしょう。「希望する保育所等へ入所できなかったので、育休を延長した」という話もしばしば聞きます。

区毎の利用決定率を見ていきます。緑色セルが決定率80%以下、オレンジ色セルが90%以上です。

大阪市の保育所等利用待機児童の状況について(詳細版)(XLSX形式)より作成

最も決定率が低かったのは、旭区(72.2%)でした。中間発表時においても申込倍率トップは旭区でした。最終結果もその通りでした。

【2024保育所等一斉入所申込分析】(1)大阪市全体/まさかの申込増、倍率トップは旭区

決定率75%を下回ったのは西淀川区と東淀川区でした。両区は市内中心部への交通利便性が比較的良好、かつ市内中心部より地価は安い地域です。共働きしながら子育てする家庭のニーズに合致した地域であり、ファミリー層向けのマンションも数多く建設されています。

しかしながら保育所等の新設は遅滞しています。数年前は毎年新設されていましたが、最近はめっきり動きがありません。大阪市が市内中心部での新設に注力する反面、これらの区は軽視されています。

0歳児入所決定率が80%以下だったのは、福島区・此花区・港区・旭区でした。他の年齢の決定率も非常に低い状態です。しかも福島区以外の3区は保育所等の新設が全然行われていません。最も入所しやすい0歳児ですら入所できないとなると、その後も入所できない状態が継続しかねません。

より厳しかったのは1-2歳児です。

1歳児入所決定率が70%以下だったのは、此花区・港区・東淀川区・旭区でした。既に紹介した区ばかりです。1歳児の3人に1人が入所できませんでした。著しく保育所等が不足している地域となります。

2歳児はやや傾向が異なります。入所決定率が65%以下だったのは、西区・淀川区・東淀川区・鶴見区でした。これまでに紹介した区と比べて交通利便性がより高く、ファミリー層はより早い段階から流入・居住する傾向がありました。

西区は保育行政に問題があります。実は同区の1歳児決定率は100%でした。1歳児決定率が90%を超えたのも西区だけでした。

同区は10年ほど前は待機児童問題が著しく厳しく、加点があっても入所できない1歳児が相次ぎました。強い苦情等があったのでしょうか、中には1年で5箇所もの保育所等を狭いエリアに新設する等をし、1歳児を中心に保育定員が急激に増加しました。

待機児童問題が急激に下火となり、今では市内中心部では群を抜いて保育所等へ入所しやすい地域となりました(代わりに小中学校の狭隘化が極めて深刻)。

その当時の定員配分の名残は今も残っています。0-1歳児に十分な定員を設定する反面、2歳児定員が相対的に少なくなっています。1歳児の定員を2歳児へ移行する等、区として何らかの対策が必要でしょう。

淀川区・東淀川区・鶴見区は「2歳児から保育所等を利用したい」「1歳児で入所できなかったので、2歳児では入所した」というニーズに応え切れていません。やはり保育所等が不足しています。

意外だったのは3歳児です。全年齢中、最も入所決定率が高かったのは3歳児でした。地域型保育事業の卒園児問題がクローズアップされていましたが、この数字を見る限りでは卒園児はほぼ入所できていると判断できます。

本投稿の冒頭で紹介したPDFファイルには、各保育所等毎の点数別新規利用状況も掲載されています。各保育所等に入所するにはどの程度の点数が必要かが推測できます。

(都島区を例示)

最も注目すべき項目は、点数帯毎の入所者数です。201~210点が最も多ければ、入所するには何らかの加点が必要となる場合が多いと判断できます。反対に191~200点が最も多ければ、加点無しのフルタイム共働きでも概ね大丈夫だと推測できます。

また、保育士等の入所者数も重要な要素です。保育のプロが選択した保育所等が分かります。保育所等選びは非常に難しいのですが、保育の現場に精通した保育士が見学・比較し、第1希望とした保育所等は説得力があります。

この資料には様々な数字が掲載されています。保育所等に入所しやすい・しにくい地域、保育所等への入所に必要な点数、未就学児の増減等がほぼ判明します。非常に重要な資料なので、ぜひご覧下さい。

また、「見方が分からない」「○○についてはどう思うか」といった質問等がありましたら、お問い合わせやコメント欄からお寄せ下さい。