文部科学省が10月中(昨年は10月27日)に公表を予定している、「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」の内容が明らかになりました。

不登校・いじめ・重大事態はいずれも過去最高を更新しました。

不登校29万人、いじめ68万件、ともに最多 文科省調査の全容判明

 学校現場の様々な課題を把握するため、文部科学省が実施する「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果が判明した。不登校の小中学生は過去最多の約29万9千人。前年度比22・1%の大幅増となった。

うち学校内外の専門機関に相談していない児童生徒も過去最多の約11万4千人。いじめは小中高などで約68万2千件が認知され、被害が深刻な「重大事態」は923件。いずれも過去最多だった。(中略)

 文科省が今月中にも公表する「問題行動・不登校調査」の結果によると、22年度の不登校の小学生は10万5113人、中学生は19万3936人で計29万9049人(前年度24万4940人)。在籍する児童生徒の3・2%が不登校だった。

 不登校の児童生徒のうち約4割にあたる11万4217人は、養護教諭や教育支援センターなど学校内外の専門機関に相談していなかった。

 一方、22年度のいじめ認知件数は、前年度から1割増の68万1948件。コロナ禍で縮小していた部活動や学校行事などが再開され、子どもどうしの接触機会が増えたことや、いじめの積極的な認知への理解が広がったことなどが影響したとみられる。(以下省略)

https://digital.asahi.com/articles/ASRB35V6XRB2UTIL03S.html

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」には、10月4日時点では令和3年度分までの調査結果が掲載されています。

大阪市の場合、各小中学校での不登校やいじめ等の発生状況は「運営に関する計画・自己評価」や「学校協議会実施報告書」から窺い知る事はできます。各校によって記載の仕方に違いはありますが、大凡の数字や対応状況が掴めます。

我が家がお世話になっている学校や子供からは、「いじめがある」という話は聞いていません。但し、上記計画や報告書には「いじめがあった」旨の記載がありました。

子供の話から深刻に感じたのは「中学生の不登校」です。

上記朝日新聞によると、2022年度における不登校だった中学生は19万3936人でした(2021年度は16万3442人)。全国の中学生は約321万人です。つまり、中学生の約6.2%が不登校です。ほぼ16人に1人の割合です。40人学級ならば2.5人が不登校です。

不登校だった小学生は10万5113人だったのと比べると、中学生の不登校が際立ちます。中学生は小学生の約半数しかいませんが、不登校の人数は倍です。発生率は約4倍もの開きがあります。

中学校に通っている子供からは「学校に来ていない子がいる。全く学校に来ない子もいれば、保健室に登校している子もいるみたい。毎日登校している生徒に対して、机の数が多すぎる。」との話を聞いています。

先生の負担も重いです。担任の先生は「クラス担任・教科担任・部活動顧問を担いながら、不登校生徒の対応を行うのは無理がある。」「登校してきた不登校児童に対応する為、授業中に抜け出すのは心苦しい。」「学校に対する保護者の感情が良いとは言い難く、家庭とのコミュニケーションが取りにくい。」と愚痴を零していました。

学校での授業計画や教科書、行事予定や生活指導等を聞くと、不登校生徒が増えるのも無理はないと感じています。親世代が中学生だった大昔と比べると、今の中学校や中学生は余りに忙しいのです。

分かりやすいのは学習面です。2021年度から新しい学習指導要領が導入され、学習負担がより重くなりました。

中学の学習指導要領どう変わった?英語・数学の変更点まとめ
https://www.seisekiup.net/column/study/1008/

今は小学校から外国語(英語)の授業や活動を行うので、中学校では早い段階から本格的な英語の授業が行われます。中学校を卒業するまでに覚える単語や文法も飛躍的に増加しています。

中学校の英語が難しい、親世代より語彙数倍増

程度の違いはありますが、他の教科も概ね同傾向です。カラーページ・写真・図表が増えた教科書は理解しやすくなっていますが、中身も重さも重量級です。昔は習わなかった分野や用語も増えています。

子供は大変です。小学校での授業は何とかなっても、中学校の授業についていけない生徒が増えるのは当然です。

しかも中学校は小学校ほどに丁寧に教えてくれません。どんどん進んでしまいます。どこまで躓いてしまうと、取り戻すのが非常に難しいでしょう。理解できない授業に出席するのは苦痛です。学校へ登校するのを嫌がる気持ちは理解できます。

コロナ禍による影響も極めて大きいでしょう。ただ、この影響は学校外からは見えにくいのが実情です。

家庭に掛かる負担も極めて大きいです。考えてみて下さい。中学生16人に1人が不登校です。それだけの中学生が日中に中学校へ登校せず、自宅待機・フリースクール・その他の場所で過ごしているわけです。保護者がフルタイムで仕事をするのも難しく、様々な支出も嵩みます。

そして子供自身の負担です。今は負担が掛かる学校を不登校という形で回避しています。が、学校は社会生活で必要な知識や経験等を体系立てて得られる場です。同じ知識等を学校以外の場で身につけるのは容易ではありません。

学生の内は保護者・学校・社会等が物心両面から様々な手を差し伸べています(十分ではありませんが)。が、成人後はこうしたサポートが急激に弱くなるでしょう。保護者も年をとり、学校も卒業生のサポートは難しいです。

結果として社会の中で「居場所」をなかなか見つけられず、ずるずると月日が過ぎ去ってしまうケースのが多いのだと推測しています(実際はどうなのか、全体像はなかなか見えませんが)。

やはり肝は「早期発見・早期対処」でしょう。上記朝日新聞では大阪公立大学の山野先生が「早期に支援機関につなぐ体制作りが急務」「気になる子を早期に校内で共有するシステムを作るべき」と指摘しています。

家庭でも学校の情報を子供から積極的に吸い上げ様としています。小学校からは様々な媒体等を通じて学校の雰囲気や様子が伝わってきます。

しかし中学校は全然です。学校の様子が全く伝わってきません。先生が忙しすぎる為か、中学校と家庭とのコミュニケーションに大きな問題がある様に感じています。学校での子供の様子に気掛かりな事があったとしても、学校から連絡がありません。

中学校での不登校に適切に対応するには、どうしてもマンパワーの強化は不可欠です。が、教員人気が地に落ちており、適切な人材を採用するのも困難です。不登校問題の裏には「中学校の人手不足」も無視できません。