岸田内閣が少子化対策の一環として導入を目指している「こども誰でも通園制度」ですが、前途多難と言えそうです。

親が就労していなくても子どもを保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」。政府は少子化対策として、来年度以降の本格実施を目指すとしています。この制度をめぐっては、保護者を中心に賛成する声がある一方、保育現場からは、「負担が増える」「保育士の待遇改善が先だ」といった声が相次いでいます。

そこで、すでにモデル事業を展開している自治体を取材してみると、見えてきたのは地域によって大きく異なる受け入れ体制と、必要なニーズの把握の重要性でした。(以下省略)

https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20230731a.html

NHK記事にある通り、モデル事業では地域による違いが鮮明に現れました。

少子化が急激に進んでいる地域(NHK記事では石川県小松市を紹介)ではモデル事業が概ね円滑に回っています。保育所等の定員割れが激しく、保育施設や保育士に余裕がある為です。保育認定が受けられない子供であっても、子育て世帯の負担軽減の為に通園制度を利用できています。

とは言っても、受け入れる保育所では課題もあります。毎日通う園児と週1-2回だけ通う園児では、全く異なる対応が必要です。保育士のスキルも必要です。全ては「保育所に余裕があるから出来る」と言えます。

反対に都市部では前途多難です。東京都文京区では申込みが殺到し、急遽利用を制限しました。潜在的なニーズの多さを見誤りました。

より多くの児童を受け入れたくても、保育所や保育士不足が立ちふさがります。当然ながら待機児童や入所保留児童の入所が優先されます。

意図的にニーズを抑制した自治体もあります。何らかの支援が必要だと自治体が判断し、斡旋した家庭に限って利用できるとしました。保育所等への入所調整制度と同じく、「一時利用の必要性」を判断した格好です。

その反面、「誰でも利用出来る」制度ではなくなっています。

「こども誰でも通園制度」は、あくまで保育所等の空き定員や保育士の余力が前提とされる制度でしょう。毎日登園する園児の保育を行った後でも余裕があるのが必要です。

多くの保育所等が定員割れしている地方と、未だ待機児童や入所保留児童が多数発生している都市部では、運用形態が全く異なるのは当然です。

都市部でも一部の保育所等は余力があります。が、そこに対するニーズは膨大です。全てを先着順で受け入れるか、それとも一定の必要性に応じて受け入れるかは判断が割れています。

「こども誰でも通園制度」という同じ名前であっても、自治体や保育所等によって運用が大きく異なるのは避けられません。このままだと「誰でも通園できる筈なのに、全く利用出来ない!」という不満が噴出してしまうでしょう。