いよいよ来週、2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」が実施されます。

しかし、実施前から様々な課題や混乱が指摘されています。

迫る幼保無償化 問い合わせ1日300件、辞退する園も

 幼児教育・保育の無償化が10月から始まる。すべての3~5歳児と、低所得世帯の0~2歳児が対象だ

。安倍晋三首相が2年前の衆院選で打ち出した少子化対策だが、制度の検討や周知は十分ではなく、現場では混乱も起きている。子どもの安全や保育の質の確保といった課題も残されたままだ。

 関西のある自治体にこの夏、問い合わせの電話が入った。「近所の幼稚園の預かり保育が、無償化の対象にならないと聞いたが、どういうことか」

 自治体職員が確認すると、幼稚園は無償化に必要な申請をしておらず、こう説明した。「預かり保育は希望者が多く、利用できない人もいる。利用者だけ無料では不公平になる」

 保護者の一人は「仕事を続けるには、預かり保育を利用するしかないので、幼稚園に文句は言いづらい」と思い悩む。

 幼稚園が夕方まで行う「預かり保育」は無償化の対象だが、園側の申請が必要で、無償化するかどうかは各園の判断次第だ。

内閣府や文部科学省によると、「無償化に必要な申請手続きが手間」「無償化で利用者が増えれば職員増が必要になり、人件費がかさむ」などの理由で、こうした「無償化辞退」が各地で起きているという。(以下省略)

https://digital.asahi.com/articles/ASM9K5TS3M9KUTFL00N.html

幼稚園の預かり保育を無償で利用する為に、幼稚園が申請手続を行う必要があるとは全く知りませんでした。

同じ幼稚園であるにも関わらず、預かり保育が無償と有償とに分かれるのは強う不公平感を招きます。やむを得ない事情で無償化申請できなければ仕方ないかもしれません。

が、「手続が手間」「人件費がかさむ」と言う理由で納得する保護者は皆無でしょう。自治体は「無償化申請を行う様に」と指導すべきでしょう。

上記朝日新聞の記事(有料部分)では、他に様々な混乱が指摘されています。要旨をご紹介します。

・「保育の必要性の認定」申込みが殺到し、さいたま市では2万件以上の申請があった。
・金融機関への手続が遅れ、無償化実施後も保育料が引き落とされる幼稚園もある。
・待機児童の増加を懸念する自治体もある。
・内閣府が唐突におかず代負担を削減すると通告した(後に撤回)。
・安全基準を満たさない認可外保育施設も無償化対象(5年間)とする。
・無償化より保育所整備や保育士の処遇改善を行うべきとの声も大きい。

https://digital.asahi.com/articles/ASM9K5TS3M9KUTFL00N.htmlより作成

幼児教育・保育の無償化により、幼稚園や保育園を取り巻く制度や動向が大きく変わります。それに伴う変動等を過小評価し、制度設計や準備等に反映させなかったのが課題や混乱等に繋がっていると感じています。

増加幅は不透明な部分があったものの、無償化によって申込者が増加するのは一目瞭然でした。自治体のマンパワーを超える申込みがあれば、残業や外注によって対応せざるを得ません。

また、来春の一斉入所において、0-3歳児の申込数が増加する恐れがあります。低所得世帯の0-2歳児は保育料が無償化され、「利用しなければ損だ」という意識が強く働くからです。

なお、殆どの4-5歳児は既に幼稚園や保育所等を利用している為、申込数に大きな変動はないと見ています。

金融機関への手続遅れは大失態ですね。本来は利息を附して返還すべき事案です。

これとは逆に、無償化に伴うおかず代の徴収手続も大変だと聞きます。毎月数千円のおかず代を現金で徴収すると、保育士や事務職員の負担が大きくなってしまいます。

それにしても、小学校の給食費(月額4000円~5000円程度)と比べ、幼稚園や保育所等での主食代・おかず代はやや高く感じます。何か理由があるのでしょうか。

金融機関からの引き落とし手続を行うには、金融機関との打ち合わせや保護者への手続依頼も必要です。金融機関へ支払う手数料も発生します。

安全基準を満たさない認可外保育施設の取り扱いには、強い批判の声も聞こえてきます。これとは反対に、基準を満たさない「幼稚園類似施設」への無償化適用を求める声もあります。

来週からは非常に大きな混乱が発生すると考えられます。ただ、殆どは現場が必死になって対応し、少しずつ落ち着くと見ています。

お世話になっている保育園の先生は「どうなるんでしょうね・・・・」と呟いていました。