全国学力・学習状況調査における大阪市の中学生の結果は政令市最低水準でした。

【学力テスト2023】大阪府は全国平均を若干下回る、大阪市の中学生は政令市最低水準、上位は東京・石川・福井

調査結果資料にはより詳しい内容が掲載されています。ここから気になった点をピックアップします。

成績上位者・中位者が少なく、下位者が非常に多い数学

全国や大阪府のグラフと比較して、大阪市は左にシフトしています。成績上位者・中位者が少なく、下位者が非常に多いのが特徴的です。

数学は全ての得点帯で抜本的な対策が必要でしょう。特に37.2%もの生徒が正答率3分の1以下(5問以下)でした。「分かっていない」としか言い様がありません。

英語の高得点者は全国平均に肉薄

数学とは全く違った結果を見せているのが英語です。17問~13問の正答者割合は全国平均に肉薄しています。大阪府に至っては全国平均を上回っています。

最大の要因は「大阪府立高校に於ける英語民間資格(英検等)の加点措置」でしょう。英検2級を持っていると、大阪府立高校入試の英語の得点は「80%」が保証されます。今年3月に行われた入試では、出願者の約1割が同制度を利用しました。

約4,000人が英検等を活用 大阪府立高校入試

英検2級に合格するには、相当の学習時間を英語に割く必要があります。こうした取り組みが、学力テストにおける英語高得点者の増加をもたらしたと考えられます。

但し、英検で優遇されるのは2級までです。準2級や3級では加点措置がありません。学力上位者へのインセンティブにはなりますが、中位者・下位者へ英語学習を促す効果はありません。

その結果が高得点者の相対的な多さ(それでも全国平均より少ない)に繋がっています。

生徒質問紙

生徒質問紙にも興味深い解答が並んでいます。

「学校に行くのは楽しいと思いますか」に対して「当てはまる」と解答した割合は、全国平均を4.8%も下回っています。代わりに「どちらかといえば、当てはまらない」「当てはまらない」が大きく上回っています。

こうした解答は不登校者の多さにも繋がっているのでしょう。子供のクラスにも数人おり、先生方が対応に追われています。

家で自分で計画を立てて勉強をしている生徒は、全国平均を大幅に下回っています。全く計画を立てていない生徒は全国平均の1.5倍です。

平日に於ける家庭学習時間は明確に二極化しています。「3時間以上」「2時間以上、3時間より少ない」という生徒と「30分より少ない」「全くしない」が共に全国平均を上回っています。

勉強する生徒は平日でも相当勉強している一方、そうでない生徒は全然です。前者は恐らくは宿題が多い塾に通っているのでしょう。学校でも授業中に塾の宿題を解く生徒がチラホラといるそうです。先生は注意していません。

土日の勉強時間は「1時間以上」などが全国平均を下回る反面、「1時間より少ない」などが全国平均を上回ります。大阪市の中学生の土日学習時間は、学力上位層でも少ないです。半数以上の生徒は1時間未満(=ほぼ勉強しない)です。

通塾率(上記解答の2~5)は全国平均を大きく上回ります。特に「学校の勉強より進んだ内容や、難しい内容を教わっている」という割合は著しく高いです。

一部の大阪府立高校入試で出題される「C問題」は全国屈指の難易度です。学校の勉強より進んだ内容や難しい内容を学習しなければ、満足な点数は取れません。

読書時間も顕著に短く、図書館利用率も低いです。本が少ない家庭も多いです。全く読書をしない層が半数近くに上ります。

読書量は文章読解力に直結します。我が家の子供は国語や英語の長文問題を不得手としていますが、「文章を読むのが遅い」「内容を解釈するのが遅い」「語彙がない」のが原因です。

部活動に参加している割合は全国平均を大きく下回っています。

ただ、大阪市や大阪府は学校外のクラブチーム(代表例が野球)に参加し、学校の部活動には参加していない生徒が少なくありません。それを含んだ割合は、全国平均と大きな差はないと感じます。

大阪市立中学校における部活動の活動時間は長いです。中にはガイドラインに反している可能性がある部活動もあります。

激しい部活動が行われると、帰宅後に勉強するのは難しいです。勉強を優先するか、それとも部活動を優先するかで、先生や家庭の意見も割れています。

テスト直前でも名目を見つけて練習する部活動もあれば、「テスト○○点以下は補習参加、提出物未提出者は提出後に部活動へ」と公言する部活動もあります。

授業や学習に於けるICT機器の利用率・利用時間は著しく短いです。先生方が忙しすぎて授業準備が難しく、通常の授業を丁寧に進めるので精一杯なのでしょう。

発表時の工夫、課題解決に対する主体的な取り組み、自分の考えをまとめる活動もイマイチです。大阪市の中学校教育では貧弱な部分です。学力の低さがこうした諸活動の弱さに繋がっているのでしょう。通常授業を進めるので精一杯で、こうした時間を確保しにくいという話も聞きます。

問題が噴出しているのが「総合的な学習の時間」や「話し合い活動」です。積極的に取り組んでいる生徒は全国平均の半数強に留まっています。全国平均の倍もの生徒が全く取り組んでいません。子供に話を聞いたら「しらけた空気」が漂っているそうです。

お世話になっている中学校では社会見学とその事前準備・事後発表等を行っています。この負担が重いのです。通常授業の時間を一部転用して準備を行ったり、夏休み中の課題とされてもいます。絵・図表やデータ収集も必要となるので、子供1人で行うのは難しい作業です。親が手伝わざるを得ません。

親世代が子供の頃には無かった「総合的な学習の時間」ですが、果たして子供の為になっているかは疑問に感じています。

話し合い活動への取り組みも貧弱です。真面目に取り組もうとする雰囲気はないそうです。

国語の授業にて、必要な情報を資料から引用するのが苦手な生徒が多いという結果です。驚くほどに文章が読めない生徒が多い様子です。ネットでの短文(各種テロップやLINE)やメディアの動画情報に慣れてしまい、文章や長文をじっくり読んで理解する機会が乏しくなっています。

学校でも長文をじっくり読む時間がなかなか確保できないそうです。

英語によるスピーチ・プレゼンテーション・ライティングは積極的に行われていません。こうした活動には、生徒も教員も準備が必要です。が、そうした時間を捻出するのは難しいです。

また、大阪市の中学生の多くは英語力に課題があります。スピーチ・プレゼン・ライティング以前の問題です。リーディングが出来ていません。

全国平均を上回ったのは「平日の長時間学習」「部活動の活動時間」

全国平均と比べ、こうした傾向が浮き彫りになりました。
・学校に行くのは楽しくない
・発表時の工夫や主体的な取り組みは乏しい
・総合的な学習の時間は消極的に取り組む
・国語の引用が苦手
・英語によるスピーチ・プレゼンテーション・ライティングが苦手
・学習等でICT機器は余り利用しない
・計画を立てて勉強していない
・平日は長時間学習者(恐らくは通塾組)が多く、同時に無勉強も多い
・土日は半数強がほぼ無勉強
・通塾率は高く、特にC問題向けの高難易度教材で学習している
・読書しない、図書館も利用しない、家に本も少ない
・部活動は参加しない(但し学外のクラブチーム参加者がいる)
・部活動の活動時間は長い

どこをどうすれば良いのでしょうか。糸口が見えてきません。良い所がありません。中学受験を考える家庭の考えが分かってきました。

全国平均を上回った数少ない項目の一つは「平日の長時間学習」及び「部活動の活動時間」です。

前者は負担が重い大阪府立高校入試C問題に向けた対策です。一定割合は馬渕教室への通塾者でしょう。夏期講習は1日4コマあると聞き、戦いています。

部活動の参加率は全国平均を下回っていますが、参加者の活動時間は長いです。しかも平日は約8%が3時間以上、土日は2割弱が4時間以上も活動しています。

が、これは桜宮高校自殺事件を教訓に作成された大阪市部活動指針に反しています。

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000441/441250/osakashi-bukatsudou-shishin0212.pdf

熱中症対策も心配です。熱中症警戒アラートが発表されても、中学校の部活動は通常通りに行われています。「心配」という声は頻繁に聞きます。

一部の生徒が長時間学習や長時間部活動に取り組む一方、多くの生徒は様々な諸活動に消極的です。昔からこうした傾向なのでしょうか、最近は昔より良くなったのでしょうか。