出生数・婚姻数の減少が加速しています。

厚生労働省が26日発表した人口動態統計(外国人含む速報値)によると、2023年1〜3月の出生数は18万2477人だった。1899年の統計開始以降初めて80万人を割った2022年の同期の19万2211人を5.1%下回った。婚姻数も減っており、出生数を押し下げる要因となる。(中略)

コロナ禍からの経済社会活動の正常化を受け、婚姻数は22年に3年ぶりに増えていた。ただ、23年1〜3月は13万4852件と前年同期比で14.2%減った。コロナ前の19年同期の14万1431件に届かず、ふたたび減少傾向に陥る可能性がある。婚姻数が減れば、出生数の減少につながる。(以下省略)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA253I80V20C23A5000000/

これは5月26日に発表された人口動態統計速報(令和5年3月分)によるものです。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2023/dl/202303.pdf

出生数の減少は当然として、より懸念されるのは婚姻数の減少です。婚姻数は出生数の先行指標となっています。婚姻数の減少は、数年後の出生数の減少に繋がります。コロナ禍で出会いの機会が減少した影響が生じています。

ここ数ヶ月の間、政府は躍起になって「少子化対策」を打ち出しています。だが、いずれも「子育て支援」ばかりです。児童手当の拡充、誰でも通園制度、育休給付金の引き上げ等、結婚・出産している世帯向けの支援制度ばかりです。

しかし、政府が目を向けるべきなのは「婚姻数」です。少子化が急速に進行している現在であっても、結婚した夫婦から産まれる子供の数は概ね2人で推移しています(若干の減少傾向が生じていますが)。

少子化の主たる原因は「婚姻数の減少」、すなわち「未婚者の増加」です。既婚世帯への子育て支援を強化しても、果たして出生数の増加に結びつくでしょうか。

ここ最近は所得制限の撤廃や第3子加算の増額と言った児童手当の拡充が議論されています。しかし、こうした子育て世帯の多くは相対的に経済的余裕があります。児童手当を増額しても、出生数の増加には結びつかないでしょう。教育費に積み増しされ、子育て世帯間の格差を助長するばかりです。(但し、高世帯所得でも子供の有無によって可処分所得が大きく異なるので、所得制限は撤廃すべきです)。

婚姻数が大幅に減少している要因は、若年層の雇用環境の不安定さ(但しここ数年は改善傾向)、奨学金の返済、20代女性の都市部転出(田舎は男余り、都会は女余り)等に求められます。これらへの対策も不十分(どころか皆無)です。

「子育て支援を強化すれば出生数は上向くだろう」というのは余りに安直な考えです。原因を丁寧に分析に、それに見合った対策が必要です。