企業主導型保育への助成金を水増し請求したとして、保育施設の元経営者ら3人が逮捕されました。
保育事業助成金不正で3人逮捕
05月28日 18時59分
企業が設置する認可外の保育施設に国が助成を行う制度を悪用し、工事費を水増しして不正に助成金を受け取っていたとして、松山市などで保育事業を行っていた女ら3人が逮捕されました。
逮捕されたのは、松山市北斎院町の坂口真美容疑者(48)と、東京・目黒区の和田勝海容疑者(47)、それに東京・練馬区の牛渡満容疑者(44)の3人です。
警察によりますと、坂口容疑者ら3人は、企業が設置する認可外の保育施設に国が助成を行う制度を悪用し、平成28年8月から11月にかけて、都内の2つの保育施設の開設費用を水増しして請求し、助成金およそ8000万円を不正に受け取った疑いが持たれています。
坂口容疑者は、松山市の健康食品会社「オハナ生活倶楽部」の元経理担当で、ことし2月、会社の社長らとともに、元本保証をうたって高齢者などから現金を受け取ったとして、出資法違反の罪で罰金100万円の略式命令を受けました。
その捜査の過程で、以前、松山市や東京で保育事業などを行う会社の代表を務めていた坂口容疑者が、2人とともに国の制度をめぐって不正を行っていた疑いが強まったということです。
警察は、3人の認否を明らかにしていません。坂口容疑者が代表を務めていた会社は、およそ9億円の助成金を国から受け取っていた疑いがあるということで、警察が詳しい実態を調べています。
今回、悪用されたのは「企業主導型保育事業」と呼ばれる国の制度です。これは、仕事と子育ての両立や待機児童の問題を解消しようと、従業員などのための保育施設の設置を企業に促す制度として、平成28年度から始まりました。
認可外の保育施設になりますが、一定の基準を満たし申請が認められれば、開設費用の4分の3、運営費については認可保育所並みの助成を受けることができます。平成29年度末までに助成金などとして支出された事業費は2100億円に上っています。
しかし、保育士不足や定員割れで閉鎖する施設が相次ぎ、制度開始から2年間で新設が認められた2700余りの施設のうち1割が事業を取りやめました。事業を担う公益財団法人「児童育成協会」の審査がずさんだとして改善を求める声もあり、国が参入の厳格化などの検討を進めています。
逮捕されたのは、東京都内などで保育施設を運営していた合同会社アネラの元代表、坂口真美容疑者で、28日正午ごろ、愛媛県松山市内の自宅で逮捕されました。
また、アネラの元社員、和田勝海容疑者と施工業者の元社員、牛渡満容疑者も28日、逮捕されました。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190528-00000114-itv-l38
愛媛県警によると、3人は2016年8~11月、杉並区と目黒区の2カ所の保育所開設にかかる工事費を水増しして、補助金交付を審査する公益財団法人「児童育成協会」に申請し、16年12月と17年3月に計約8千万円を不正に受け取った疑いがある。
逮捕容疑となったのは、都内に開設された2か所の企業主導型保育施設への補助金を水増しし請求したとするものです。
児童育成協会からの助成が決定した施設は、企業主導型保育事業助成決定一覧(平成30年3月31日現在)に掲載されています。
該当するのは下記の2施設でしょう。いずれも「合同会社ANELA」を運営者として助成が決定されていました。
(1)アロハエンジェルナーサリー永福町園(杉並区)
助成決定日:2016年11月14日・2017年3月23日・2017年6月30日(2)アロハエンジェルナーサリー中目黒園(目黒区)
助成決定日:2016年11月14日・2017年10月12日
これ以外にも、合同会社ANELAを運営者とする多数の保育施設への助成が決定されていました。同種の手口による余罪がある可能性が大きいです。
坂口真美容疑者は、健康食品販売会社「オハナ生活倶楽部」を巡る出資法違反容疑でも逮捕されていました。
健康食品販売会社「オハナ生活倶楽部」(松山市、破産手続き中)が未承認の医薬品を無許可で販売したとされる事件で、愛媛、徳島、山口、沖縄各県警の合同捜査本部は30日、元本保証をうたい高齢者に無許可で社債を販売したとして、同社役員橋本哲容疑者(63)=松山市=や元役員坂口真美容疑者(48)=同=ら6人を出資法違反(預かり金の禁止)で再逮捕し、発表した。愛媛県警は認否を明らかにしていない。
県警によると、6人は2016年3月ごろから17年10月ごろにかけて、同社の社員数人と共謀し、健康教室に参加していた23人の高齢者に対し、「解約する際は元本保証する」などとうたい、計約5千万円の社債を無許可で販売した疑いがある。
同社は社債を1口あたり100万円で販売し、四国4県や広島、兵庫など8県の高齢者約500人から計約15億5千万円を集めていたという。社債購入の特典として、同社が販売していた商品の購入に使えるポイントを交付していたという。
まさしく金の亡者ですね。
上記記事では「和田勝海」という名前も掲載されています。聞き覚えがある方もいるでしょう。
東京都内等で全保育士が一斉に退職して休園した「こどもの杜保育園」を運営する法人(Brighton Nursery & After School株式会社)の代表者でした。
一斉退職した大きな理由は「給与の未払い」でした。運営費等を保育士の給与に充てず、他に流用したり私物化していたのでしょうか。
和田容疑者が以前に働いていたANELA(アロハエンジェルナーサリー)にて、保育を食い物にする手口を学んでいたのでしょう。
問題が噴出する企業主導型保育、淘汰の恐れも
児童育成協会による助成金審査や監査の緩さ、監査業務を保育施設を運営するパソナへ委託する事に対する批判、保育需要に対する見通しの甘さ、運営法人の経営体力の不安定さ等、企業主導型保育には様々な問題が指摘されています。
今後、全国各地で同様の事例が噴出する恐れが高いです。
都心部等でも機動的に設置・運営できる企業主導型メリットの保育は少なくありません。しかし、上記の様に多くの問題があり、そのしわ寄せは利用者たる園児や保護者が被ってしまいます。
また、企業主導型保育が一定数の保育士を雇用してしまい、大半の保護者が入所を希望する6年保育を行う保育所の一部が保育士不足に陥っています。
中には保育人数を減らす縮小運営を余儀なくされる施設もあります。まさしく「本末転倒」です。
少子化は更に進展します。就学前児童数に対する認可保育所等の定員率が半分を超え、一定の保育供給を担う自治体も増えています(京都市等)。
各地の開設情報等を見ていても、明らかに保育供給が過剰である感じる新規施設も少なくありません。
今後は都市部等を除き、多くの企業主導型保育は園児が思うように集まらず、経営難に陥る事が予想されます。
なお、「合同会社ANELA」及び「Brighton Nursery & After School株式会社」が運営していた企業主導型保育施設(上記2施設を含む)は、現在は学習塾を母体とする別の法人が運営しています。ご注意下さい。