続報です。

【産経新聞より】児童手当の特例給付の廃止、世帯合算収入基準を検討 待機児童解消の財源に

中日新聞により詳しい記事が掲載されています。

政府が、共働きで高所得の世帯に対する児童手当を減額する方向で検討に入ったことが十三日分かった。複数の政府関係者が明らかにした。高所得の場合は通常より少ない月額五千円の特例給付を受け取るが、年収を判定する基準を「世帯主」から「夫婦の合計」に変更し、所得制限の対象世帯を広げる方針。高所得と判定されて手当が減る共働き世帯が増加する見通しだ。子ども六十万人分の支給に影響が出る。

より高所得の世帯に対しては、特例給付の縮小や廃止を検討する。一方、少子化対策として第三子以降の手当増額を視野に入れる。一連の見直しで約五百億円の財源を捻出。待機児童解消に向け、二〇二一年度から四年間で十四万人分の保育施設を整備する新計画の費用に充てる。政府は来年の通常国会で関連法案の提出を目指す。

ただ与党内から「子育て世代を苦しめる見直しだ」などと異論も出ている。保育の新計画の財源について、政府は児童手当見直しに加え、企業に新たに約千百億円の拠出金を求める方針。与党や経済界との調整は曲折が予想される。

児童手当は中学生までが対象で三歳未満や第三子以降は一万五千円、ほかは一万円。会社員の夫と専業主婦、子ども二人の家庭では、夫の年収が九百六十万円以上だと所得制限の対象となり、特例給付として子ども一人五千円に減額される。

共働き世帯が増加する中、政府は、所得制限の判定対象を夫婦の合計収入とし、家計の実態を反映させることを検討している。

https://www.chunichi.co.jp/article/153987

政府が検討している児童手当見直しが実施された際に、共働き家庭の家計に与える影響を試算した。待機児童解消の財源を生むための制度変更が、夫婦と子ども二人の家庭では、年間受取額が十二万〜三十六万円引き下げとなる可能性がある。

現行の児童手当の所得制限額は、扶養家族が多いほど高くなる。専業主婦を含む四人家族では、夫の扶養家族は三人で、所得制限は年収九百六十万円以上。共働きの四人家族だと扶養家族は子ども二人で、所得制限は年収約九百二十万円以上となる。

例えば、いずれも年収五百万円の共働き夫婦と小学生の子ども二人のケースでは、現在は世帯主の年収が所得制限額九百二十万円を下回るため、子ども一人当たり月一万円、二人分で年二十四万円が支給されている。
制度見直しにより、夫婦合計の収入で判定されると、年収は一千万円となり所得制限の対象だ。特例給付は一人月五千円で二人分は年十二万円となるため、見直し前から十二万円減り半額になる。

二人の子どもが三歳未満なら、見直し前は一人当たり月一万五千円。見直し後は、二人分で年二十四万円減ることになる。

さらに夫婦合計の年収が千五百万円以上など一定額を上回った場合、特例給付を縮小か廃止する案も検討中だ。夫婦合計の年収が一定額を上回り、特例給付が廃止されれば、受け取りはゼロ。共働きで三歳未満の子ども二人の家庭では、年三十六万円マイナスもあり得る。

このほか、第三子以降については手当増額も検討されており、所得制限にかからない多子世帯で手当が上積みされる可能性がある。

https://www.chunichi.co.jp/article/153974

この記事から読み取れるのは、(1)児童手当特例給付の所得基準を夫婦の合計収入とする(現在はどちらか収入が高い方)、(2)合計収入が1500万円以上等の場合は特例給付の縮小or廃止、を検討しているとするものです。

児童手当を受給している家庭の内、特例給付の対象となっている割合はどれぐらいなのでしょうか。

詳しい内訳は児童手当事業年報に掲載されています。

児童手当事業年報
https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/nenpou.html

これによると受給者約1004万人(平成30年度末)の内、特例給付の対象となっているのは約97万人とされています。約9.7%ですね。


https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/pdf/30_nenpou/s1.pdf

端的にまとめると、「夫婦どちらかの所得が上位10%の家庭が特例給付の対象」と言えそうです。

所得の判定基準を夫婦どちらかから夫婦合算へ変更するのは、実態に即した合理性があると考えています。

共働き家庭が増えている現在、どちらか高い方だけで考えるのは専業主婦世帯が不利に扱われてしまいます。

そうした観点を徹底すると、今後は税制も夫婦(世帯)合算という流れになるかもしれませんね(フランスの税制が夫婦を基準にしていると聞いた事があります)。

「基準を夫婦合算とし、世帯所得が高い家庭から低い家庭へ再配分を行い、児童手当の総支給額は変えない」ならば話は理解できます。

問題は判定基準額です。恐ろしい事に、政府は「現在の所得制限基準の据え置き」も検討しているそうです(観測気球?)。

政府は現在の所得制限基準を据え置いたまま特例給付を廃止した場合、900億円程度の歳出削減効果を見込んでいる。さらに、これまでは夫婦共働きの場合、どちらか多い方の年収が所得制限内に収まれば原則支給対象にしていたが、世帯内で合算した額を基準とするよう改める方向だ。

https://www.sankei.com/politics/news/201106/plt2011060001-n1.html

共働きの4人家族で扶養家族は子供2人の場合、所得制限は年収約920万円とされています。

夫婦どちらかの収入ならば基準額以下であっても、合算されると基準を超えてしまう家庭は続出します。

特に夫婦2人が正社員で働いている家庭を直撃します。中日新聞の記事にある通り、夫婦の収入が各500万円(合算で1000万円)でも基準を超えてしまいかねません。

これは「共働き家庭いじめ」としか言い様がありません。

また、夫婦の合計収入が1500万円以上等の場合は特例給付の縮小or廃止を検討しているともされています。

こうした世帯収入が非常に高い層は、特例給付が廃止されても家計に大きな影響は受けないでしょう。

その反面、子育て世帯を対象とした様々な手当や特例が所得制限によって外されている事への不満は非常に大きいと聞きます。

私の友人(高度専門職)も「何も貰えない、ふるさと納税ぐらいしかない」と嘆いていました。

また、高所得層の手当が縮小or廃止されると、次に対象となる可能性があるのは中間所得層(アッパーミドル)です。徐々に基準を切り下げ、手当を縮小する事への警戒感が生じます。

消費増税したばかり

この話を聞いて真っ先に感じたのは「何の為の消費増税と幼児教育保育の無償化だったのか」でした。

昨年10月の消費増税は「子ども・子育て支援の充実」が大きな目標の一つでした。

子ども・子育て支援の充実に関しては、平成30年度においても、引き続き、子ども・子育て会議資料において「0.7兆円の範囲で実施する事項」と整理された「質の向上」及び「量的拡充」を実施するため、平成30年度の「社会保障の充実」に充てられる消費税増収分1.35兆円等のうちの0.7兆円程度を充てることとしている。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000199266.pdf

これによって3~5歳児の保育料が無償化され、保育施設等の整備も充実されるはずでした。

しかし、それから満1年しか立っていない時期に「財源が足りない」と言い出すとは、計画性と見通しの無さが露呈したとしか言い様がありません。

子育てには時間とお金が掛かります。大学卒業までの学費を念頭に置き、教育費を計画的に積み立てています。

もしも児童手当が大幅にカットされてしまうと、資金計画に大幅な狂いが生じてしまいます。特に教育費に決して余裕が無い、中間所得層に非常に大きな影響を与えます。

また、報じられいる内容は「子育て支援予算間の付け替え」です。財布の中身を右から左へ動かすだけです。少子化を抑制する効果は極めて限られるでしょう。

少子化対策に必要なのは「子育て支援や若年層の経済支援予算の純増」です。